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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百八十四話 第6次イゼルローン要塞攻防戦 前哨戦2 

 
前書き
お待たせしました。

百七十八話のテレーゼとヤンの話を修正致しました。
百八十三話にラインハルト艦隊を入れ忘れたため修正致しました。 

 
宇宙暦795年 帝国暦486年1月27日

■イゼルローン回廊 同盟軍第7艦隊旗艦ケツァルコアトル

総司令官ロボス元帥は5個艦隊70000隻もの艦艇を有しているにも関わらず、未だに帝国軍によるダラダラとした時間稼ぎの如き攻撃の為に、イゼルローン回廊同盟側出口付近から一歩も回廊内へ入る事が出来ずにいる事に苛立ちを覚えていた。

幾度となく攻勢をかけるように命令を出したのにも係わらず、有る特定の艦隊達により悉く制宙権の獲得に失敗した事が判ると、それらの艦隊の撃滅を指示したが、総参謀長たるグリーンヒル大将は自らはイゼルローン要塞攻略に関する詰めを行わねば成らず、その他参謀達もイゼルローン要塞攻略自体、当初は予測されていなかったと言うアリバイ作りのために細評が発表されたのが僅か一ヶ月前で有った関係でグリーンヒルと共に動いていたが為に、尤も被害の少ない第7艦隊に作戦を丸投げする事と成った。

第7艦隊では種々の資料を考査した結果、50数度の戦闘の中で20数度の戦闘を続け第3、第4、第9、第11艦隊に無視できない損害を与えている艦隊が居ることを突き止めた。

「この艦隊、仮にA艦隊としますが、Aにより既に喪失艦3000隻弱、損傷艦に至っては6000隻ほどの損害が生じています」
参謀長の説明にホーウッド中将をはじめ参加者が唸る。
「参謀長、その損害はA艦隊のみだと言うのだね」

ホーウッドの質問に参謀長は肯定する。
「はい、他の敵艦隊は1500隻程度の艦隊ですので、この損害を与えている艦隊はA艦隊だと断言できるでしょう」

そんな中、会議前にヤン准将と話し合っていたワーツ少将が発言する。
「申し訳ないのですが」
「どうしたのかね?」
「些か、気になることがあるのですが」

「どの様な事かね?」
「はい敵艦隊の行動パターンはどの様な感じなのでしょうか?」
ワーツに言われた参謀長はスクリーンに情報を映し出した。

「こ、これは、全ての戦闘で全く別の戦法で攻撃を仕掛けて来ています」
参謀長のこの発言に会議室は喧噪に包まれる。
「それでは、我が軍は全て違う戦法で敗れたという訳か?」

喧噪の中ワーツが再度話す。
「申し訳ないのですが、その事で、うちの参謀長から進言が有るのですが宜しいでしょうか?」
「ワーツ少将、許可する」

ホーウッドも参謀長もワーツの言葉にワーツ分艦隊参謀長ヤン准将を見る。ヤンも流石に死にたくないのかそれとも変な色眼鏡をかけず正当に評価してくれるワーツやホーウッドなどに敬意を表しているのか判らないが、彼にしてみれば真面目な態度で挨拶する。

「ヤン・ウェンリー准将です。帝国軍の場合旗艦には個人マークが付けられることが多い訳ですが、今回の敵艦隊ですが、A艦隊旗艦の画像解析の結果、白色の斜め二本線が全てに確認出来た為、同一艦艇であることが判明しました。その他構成艦艇の特徴分析でも同一艦艇が見られるために全てが同一艦隊による被害だと判りました」

その辺は判っているだろうと言う顔で、多くの参謀がヤンを見る。
「ヤン准将、その辺は判っているが、それ以外に何かあるのかね?」
「はい、これからが本題ですが、先月時点でイゼルローンに駐留していた艦隊の中で、この塗色をしていた艦隊は一艦隊しか無い事が先ほど照査した結果判りました。その結果、この艦隊の指揮官も推測可能に成ったのです」

ヤンの言葉にホーウッド達が興味を抱く。
「それは何故かね?」
「はい、提督は小官がテレーゼ皇女に話しかけられた事はご存じでしょうが、その際にその指揮官について話が有りまして」

そう言われてみれば、ヤンからの報告書に書いてあったことをホーウッドも参謀長も思い出したが、忙しさにかまけてすっかり忘れていたのである。
「なるほど、その際に話にあった指揮官と言う訳か」

「はい、この指揮官はラインハルト・フォン・シェーンバルト少将と言いまして、皇帝フリードリヒ4世の寵姫グリューネワルト伯爵夫人の実弟であります」
ヤンの話に会議室は再度喧噪に包まれた。

「ではなにかね、我が軍は寵姫の弟に連敗した訳か?」
「ノイエ・サンスーシとやらのサロンで酒と女にうつつをぬかしているような貴族のボンボンに負けたのか」
「しかし、彼処で背面から攻撃を受けてあと少し救援が遅れていれば全軍が瓦解する所だったのは事実だし」

ホーウッドが喧噪を止める。
「ヤン准将、続けたまえ」
「はい、皇女の話によりますと、シェーンバルト少将は姉のお強請りで少将まで昇進していますが、フェザーン経由の些か古い情報なのですが、この様な調査結果が来ています。ラインハルト・フォン・シェーンバルト、旧姓ミューゼルは軍幼年学校首席卒業をしています。その後憲兵隊などを皮切りに彼の家臣とも下僕とも言われているジークフリード・フォン・キルヒアイス大佐の功績で出世しています」

ジークフリード・フォン・キルヒアイス大佐の名前が出て、ホーウッドがヤンに質問する。
「ヤン准将、キルヒアイス大佐というと、あのサイオキシン麻薬密売事件を解決した人物ではないかね?」
「はい、同一人物です」

ホーウッドの言葉に参謀達が驚く顔をする。
何故なら、キルヒアイス大佐と言えば、フェザーン経由で帝国期待の若き戦術戦略家として情報が流れてきていたからである。尤もこの噂もテレーゼが流させた物で有るが。

「成るほど、シェーンバルト少将は姉が寵姫であるが故の出世だが、キルヒアイス大佐の場合は実力で大佐にまで成っている訳か」
参謀の一人が疑問を投げかける。

「ヤン准将殿、キルヒアイス大佐は男爵だと聞きますが、門閥貴族だからこその出世なのではないのですか?」
当たり前の疑問にヤンが答える。
「其処なんですが、キルヒアイス大佐は平民の出身です」

「平民」
「平民が何故、男爵位を?」
「其処ですが、元々キルヒアイス家がミューゼル家の家臣的な存在だったらしく、シェーンバルト少将が小学校時代から有名な暴れ者で同級生の頭を石で殴るなどしており幼年学校時も姉の威光を振りかざして他の生徒を殴る池に突き落とすなどの暴力を働き放校寸前まで行くのを何とか押さえていた様です。陸戦に関してもオフレッサー装甲擲弾兵総監からお墨付きを受けるほどの猛者であり、人格も公明正大で誰からも好かれる好人物だと報告書にあります。

その様な人物ですから、幼年学校次席卒業でもあり優秀さを軍内部に知られ、皇帝も優秀さに近衞としてスカウトしたようですが、グリューネワルト伯爵夫人の横やりでシェーンバルトの副官に付いたようです。その後サイオキシン麻薬密売事件の功績を称えられ、男爵位を叙爵されたようです」

ヤンの答えに、多くの者がシェーンバルトと言うよりはキルヒアイス大佐の方が難物ではないかと感じていた。
「つまりは、シェーンバルト艦隊は実質キルヒアイス大佐が動かしている訳かな?」
「編成表を見る限り、参謀長としてキルヒアイス大佐の名前がありますのでそうだと思われます」

「しかし、帝国とはどうしようも無いですな。寵姫の姉の威光で何をしても許されるとは」
「幼年学校首席卒業も下駄を履かせたのではないかな?」
「なるほど、真の主席はキルヒアイス大佐という訳か」
「あり得ますな」

ヤンを含めた全員がテレーゼとケスラー達がフェザーンに流したラインハルトとキルヒアイスの幼年期からの話を信じてしまった。

「其処でなのですが、今回の敵艦隊の戦法が教科書の焼き直しなのが疑問でしたが、指揮官が誰か判った時点でシェーンバルト少将の教育の過程ではないかと思った次第です。つまりは艦隊運動と陣形展開理論を実戦で試しているのでは無いかと言う訳です」


次々に映し出されるシェーンバルト艦隊の戦法に参謀達ががなる。
「これは、まるで士官学校の教科書じゃないか」
「俺達は実験台か!」

「其処でヤン准将には案があるのかね?」
ホーウッドの質問にヤンが答える。
「はい、敵艦隊の意図が、教育であるなら次回の策が大凡判ってきます」

「それは?」
「恐らく敵は、自艦隊より多数の敵に当たる作戦だと想定されます」
「そうなると、我が軍は両翼を伸ばして包囲殲滅を狙う訳だが」

「はい、恐らく敵は密集隊形により中央突破、背面展開を計るかと」
「益々教科書通りじゃないか、馬鹿にするにも程があるな」
「ならば此方も密集隊形で戦えばいいのでは?」

「いいえ、それですと、敵が新たな戦法を行う可能性が有りますので、それならば敵の策に乗ってやるのが良いかと思います」
「しかし、それでは見す見す攻撃を受けることになりますが」

其処でヤンがプロジェクターに資料を映し説明をはじめる。
「敵艦隊は3000隻ですので当方は2個分艦隊5000隻で態と両翼を伸ばして包囲殲滅作戦を行う様に見せかけます」
「如かしそれでは」

「はい、中央突破を許すことになりますが、その際に艦隊を敵艦隊の左右に分断し高速で前進し背面展開後に後方から追撃戦を行います」
「如かしそれだけでは逃げられるではないかな?」

「はい、其処で他の艦隊により包囲を行います」
ヤンの示した作戦パターンを見て、納得したホーウッド以下の面々が作戦発動を決め、決行されることになった。



宇宙暦795年 帝国暦486年1月30日

■銀河帝国イゼルローン要塞 第51会議室

ロイエンタール、ルッツ、ワーレン、ケンプ、ファーレンハイト、アイゼナッハ、ミュラーの少将7人はケスラー大将の元へ呼び出された。

「卿ら忙しい所済まない」
「いえ、現在我々はケスラー閣下の旗下ですのでお気になさらないで下さい」
ケスラーの話にロイエンタールが応じる。

「所で今回呼んだのは、卿らの艦隊でシェーンバルト艦隊の後を追って貰いたい」
いきなりの事に皆が首をかしげる。
「シェーンバルト提督と言えば、色々噂に事欠かない方ですが、何故追跡を?」

「確かに色々噂のある人物だが、実は皇帝陛下がグリューネワルト伯爵夫人に弟が心配なので見守って欲しいと頼まれたとの事で、殿下に直々に連絡が有ったそうだ」
ケスラーの話に全員が治世に関しては名君であるが故に、寵姫の言う事を叶えてやる皇帝に呆れる。

其処へテレーゼが現れた。
「父上もあの女には弱くてな。下らぬ事に卿らを巻き込んで済まぬ。父上の我が儘で卿らを危険に晒すやも知れぬ事、慚愧に思うぞ」
テレーゼの謝罪に全員が驚き膝を突いて頭を垂れる。

「殿下、その様な事ございません、どうぞお顔をお上げ下さい」
「左様でございます。小官等は軍人です。ご命令とあればどの様な事でも致します」
皆が口々にテレーゼに答える。

テレーゼ臨席の中、ケスラーが細評を伝える。
「どうやら、小馬鹿にするように戦闘するシェーンバルト艦隊に叛乱軍側が罠をはる可能性が有るとフェザーン経由で情報が入った」

「それを聞いたアンネローゼが父上に泣きついたそうでな、其処で妾の護衛である卿らを使えと言ってきた訳じゃ」
本当に済まぬと言う顔でテレーゼが溜息をつく。その姿を見て皆が皆悪い気がしない。士官学校時代から散々な目に遭わされたロイエンタールでさえも、家庭を持って落ち着いたせいもあるが、最近のテレーゼの落ち着き振りと下級貴族や平民に対する行動でテレーゼに関しては悪い感情が少なくなってきた故に真面目な謝罪に関心していた。

こうして、テレーゼの猫かぶりにまんまと丸め込まれた7人は狩りに出かけるが様に出立したシェーンバルト艦隊の後を判らぬ様な距離を取って追跡した。



宇宙暦795年 帝国暦486年1月30日

■イゼルローン回廊 シェーンバルト艦隊旗艦タンホイザー

「敵艦隊発見、艦数凡そ5000隻」
「敵艦隊は両翼を伸ばして当艦隊を包囲しようとしています」
オペレーターの報告にラインハルトはニヤリとしてキルヒアイスに話しかける。

「キルヒアイス、敵は此方を包囲殲滅するらしいな」
「はい、ラインハルト様」
「全艦に密集隊形を取るように命じろ」

ラインハルトの命令により艦隊は密集隊形を取った。
「全艦攻撃開始、ファイエル!」 
 

 
後書き
アスターテが此処で起こるかです。 
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