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雲は遠くて

作者:いっぺい
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43章 短くても美しく燃えること

43章 短くても 美しく 燃えること

 6月22日の日曜日。朝の10時。
雨がぱらつく曇り空で、気温も23度と(すず)しい。

 下北沢駅南口から歩いて3分の、ライブ・レストラン・ビートでは、
『クラッシュ・ビートとグレイス・ガールズの親睦(しんぼく)パーティ』が、
モリカワ・ミュージックの主催で始まっている。

 雑誌やテレビなどのメディアの関係者や、早瀬田(わせだ)大学の
学生たちの音楽サークル、ミュージック・ファン・クラブ (MFC)の部員も
全員が招待されていて、会場は(はな)やいだ熱気に包まれていた。

 高さ8メートルの吹き抜けのホールの1階と2階の280席は満席だ。
1階フロアの後方の、バー・カウンターにも空席はなかった。

 店長の佐野幸夫が、間口が約14メートルのステージの左に立って、
マイクを片手に挨拶を始める。

「みなさま!本日は、お忙しい中を、お()しいただきまして、
ありがとうございます。ライブ・レストラン・ビートの店長の佐野でございます。
日ごろからのみなさまの(あたた)かい応援のおかげで、
クラッシュ・ビート(Crash・Beat)とグレイス・ガールズ(Grace・Girls)は、
デヴューして、半年ほどですが、ヒットチャートをにぎわす、活躍を
続けて()れました!これからも、初心を忘れずに、謙虚な姿勢で、
慢心することもなく、果敢に新しい目標にチャレンジしていくと、いっています!
まあ、わたしなんかですと、ちょっと成功すれば、すぐ自慢したり、いい気になって、
遊びほけるんですけどね。クラッシュ・ビートとグレイス・ガールズのみなさんは、
美女とイケメン(ぞろ)いで、空気も読めて、わたしとは大違いです。あっははは」

 そういって、わらいながら頭をかいて、一礼をする佐野に、
会場からは、わらいと拍手と()き起きる。

「それでは、みなさま、クラッシュ・ビートとグレイス・ガールズのライブや、
そのほかのミュージシャンの方々のライブなどの、たくさんのプログラムを
ごゆっくりと、お楽しみください!」

 そういって、まるい目でわらいながら、一礼すると、身長179センチの
佐野はステージの(すそ)へ消えた。

「モリカワミュージックも、すごいじゃん!きょうの、この会場にいるお客さまは、
すべて、無料の招待なんだからね!それだけ、重要な大物のお客ばかりだけど」

 そういって、席を立ちあがると、岡昇(おかのぼる)が、グレイス・ガールズの
メンバー全員と、「乾杯!」と、オレンジジュースの入ったグラスを、
胸の高さまで持ち上げて、回った。

 切れ長で細い目だけど、優しい輝きある瞳の、岡は、1994年12月5日生まれで、
まだ19歳だから、飲酒ができなかった。

 グレイス・ガールズのメンバーでは、べーシストの平沢奈美が、1994年10月2日
生まれで、まだ19歳である。

 岡昇は、グレイス・ガールズのパーカッション(打楽器)の担当をしっかりと確保していて、
メンバーと同じギャラ(報酬)をもらっているのだから、超ラッキー!と岡自身も感じている。

「詩織ちゃんは、やっと、ビールも解禁ね!」といって、清原美樹は、大沢詩織と
ビールのグラスを乾杯する。

 大沢詩織は、1994年6月3日生まれで、20歳になったばかりである。

「美樹さんみたいな、お酒が上手に飲める女性を目標にして、お酒を楽しみます!」

「まあ、詩織ちゃんにそういわれるって、とても光栄だわ」

 その詩織と美樹の会話に、みんなもわらった。

「それにしても、おれには不思議でしょうがないことがあるんですよ」と岡昇はいう。

「岡ちゃん、何なの?その不思議なことって」とグレイス・ガールズのドラム担当の、
菊山香織が、聞き返す。菊島は1993年7月26日生まれ。

「たとえば、香織ちゃんは、森川純さんという、いい人がいるじゃないですか!
美樹ちゃんには、松下陽斗(まつしたはると)さんがいるし、
詩織ちゃんには、川口信也(かわぐちしんや)さんがいて、
麻衣ちゃんには、矢野拓海(やのたくみ)さんがいるし、
奈美(なみ)ちゃんんは、上田優斗(うえだゆうと)さんがいるでしょう」

「岡くんにだって、南野美菜(みなみのみな)さんていう、ステキなヒトが
いるじゃないの。でも、それで、何が不思議なの?」

 グレイス・ガールズのギターリストの、水島麻衣はそういった。
麻衣は1993年3月7日生まれ。

「グレイス・ガールズのみなさんが、日に日に、キラキラと輝くような、
オーラ(雰囲気)を発しているというか、フェロモンを発散している女性に
なっていくので、それが不思議なんですよ!」

「まあ、岡くんって、正直なんだから!わたしたちが、美しくなっているって
ことが、不思議なのね!うふふ、ありがとう!」

 と美樹は、色っぽく、いたずらっぽく、岡に微笑(ほほえ)む。

「そういわれてみれば、わたしたち、ちょっとの間に、やけに、
女っぽくなって、お色気も出てきたのかもね!これも恋したり、
愛しあっているからかしら?」

 菊山香織がそういうと、みんな、声を出してわらった。

「さあ、そろそろ、わたしたちのライブの時間よ。
初めは、新曲の 『短くても美しく燃えること』やりましょうね!」

 美樹がみんなにそういった。

 グレイス・ガールズのメンバーと岡昇は、拍手につつまれる中、
ゆっくりとステージに上がった。

 『短くても美しく燃えること』は、美しいメロディの8ビートの
心地よいバラードであった。


 短くても美しく燃えること   作詞作曲 清原美樹 

人と人は 信じ合えるとき
本当の愛を 育てることができるんだって
あなたと出会えて 初めて知った気がするわ

生きてゆくことは むずかしいのね
信じ合うことも メチャクチャに難しいのね
愛が育つなんて 奇跡に近い この世界なのよ

でもね この広い 世界の中で
あなたと 出会えたことの 幸せは
いつも あなたと 感じあっていたい わたしなの

でもね この世界の 美しさの中で
本当の愛を 感じられている 幸せを
いつも あなたと 感じあっていたい わたしなの

Ah Important for me now.
(あぁ、今、私に大切なこと)
Ah I burns beautifully even if short.
( あぁ、短くても 美しく 燃えること )

世界に 戦争は 絶えることはなく
世界に 差別は 絶えることはなく
バカなことばかりの 憂鬱(ゆううつ)な この世界

社会は 人をだまして 平気な人 多く
社会は 人を傷つけて 平気な人 多く
古今東西(ここんとうざい) バカげたことの 繰り返し

でもね この広い 世界の中で
あなたと 出会えたことの 幸せは
いつも あなたと 感じあっていたい わたしなの

でもね この世界の 美しさの中で
本当の愛を 感じられている 幸せを
いつも あなたと 感じあっていたい わたしなの

Ah Important for me now.
(あぁ、今、私に大切なこと)
Ah I burns beautifully even if short.
( あぁ、短くても 美しく 燃えること )

≪つづく≫ --- 43章 おわり --- 
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