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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
  第36話 開戦直前




 ついにこの日がやってきた。現在は夜の10時。ゲーム開始が深夜0時だから後2時間でゲーム開始だ。今俺は学生服に身を包んで自室のベッドに座り込んでる。30分前には部室に来るようにということだから後1時間もすれば家を出なくちゃならない。

 この10日間、いや、火織がフェニックス家から帰ってきた次の日と昨日は休みだったから実質8日間は地獄だった。でもその甲斐あって確かな手応えを感じられるようになった。火織たちには相変わらず敵わないけど、俺の持つ赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)と火織から借りた氷輪丸を併用すれば木場とも何とか打ち合えるくらいにはなった。

 木場と模擬戦した時に最大に倍加した魔力弾をぶっぱなした時は驚いたわ。一撃で山を消し飛ばしちまったからな。部長でもあそこまでの威力は出せないらしい。俺も連発は出来ないけど仲間と連携すれば溜めて数発は撃てるはずだし、その魔力を氷輪丸に費やせばあの焼き鳥にだって対抗できるはず。俺も部長の役に立てる!

 修行始めた直後こそ俺と皆の実力の開きに絶望しちまったけど、俺でも戦える。たった8日間だけでもこんなに強くなれたんだ。何年も修行してる火織たちに追いつくにはそりゃ時間がかかるだろうけど、でも決して手が届かないわけじゃないんだ。



コンコン



 俺が決意を新たにしている時に急にドアが叩かれた。

「どうぞ」

「失礼します」

 そう言って入ってきたのはシスター服を着たアーシアと黒いボンテージみたいな服を着たレイナーレだった。アーシアのシスター服は初めて会った時のやつだよな? 一方レイナーレのは初めて見るやつだ。契約で砂戸さんにボンテージ着てムチを振るのは何度か見たけどそれとは別のやつだった。

 ……まあ2人共俺が机の上においてあるのと同じ氷輪丸を背中に斜めに背負ってるからちょっと台無しになってるんだが。いや、レイナーレのはこれはこれでマッチしてるのか?

「2人共、その格好は?」

「部長さんが一番いいと思う格好で来るようにとのことでしたので……私は悪魔になっちゃいましたけど神への信仰を忘れたわけでもありません。ですからこの服で行こうかと……あの、変ですか?」

「いや、似合ってるよ。なんというか一番アーシアらしいと思う」

「えへへ、ありがとうございます」

「で、レイナーレの格好は何なんだ?」

「あんたに見せるのは初めてだっけ? 私が神の子を見張る者(グリゴリ)の一構成員として任務に当たってた時に着てたものよ。要するに私の戦闘服ってこと」

「へ~、なんというか……随分大胆な戦闘服なんだな」

「うるさい、あんまりこっちを見るな。女の堕天使は敵を色香で篭絡しなくっちゃならない時もあるから皆それぞれに合った刺激的な服が支給されるのよ」

「あ~、そういやお前と一緒にいた残りの2人の女堕天使も素肌にスーツとゴスロリだったって部長が言ってたっけ? 実は総督の趣味なんじゃねぇか?」

「アザゼル様は長年神や悪魔と最前線で戦って生き残ってきた偉大な方よ。そんなはず無いじゃない」

「ま、それもそうか。で、2人共どうしたんだ? 出発まではまだ1時間くらいあるぞ?」

 そう言うとアーシアは視線を下げてもじもじしだした。そしてレイナーレは何故か不安そうな顔をしてそっぽを向いた。なんだ一体?

「あ、あの……」

 そんな状態でアーシアは上目遣いでこちらを見てくると言った。

「そばに……行ってもいいですか?」

「あ、ああ……構わないけど」

 そう言うとアーシアだけでなくレイナーレもこっちに近付いてくると氷輪丸を俺のと同様机の上に置いた後、俺の両脇に座り両腕を掴んできた。

「ふ、2人共どうしたんだよ急に?」

「これから戦いが始まるんですよね。イッセーさんやレイナーレさん、皆さんがまたあんなに怪我をすると思うと怖くて……それに震えも止まらないんです。でもイッセーさんのそばならやっぱり怖くなくなります」

 そう言いながらアーシアは俺の肩に頬を擦り寄せてきた。

「あの、家を出るまでこうしていていいですか?」

「ああ、いいぞ」

「えへへ、ありがとうございます」

「で、レイナーレはどうしたんだ? お前はこういうのは慣れてるだろうし今更怖いなんて無いだろう?」

「……怖いわよ。私は役立たずだと思われることが何より怖い」

「え?」

「……話したでしょ? 私は天界にいる時も、堕天使になってからも何をやってもうまくいかない役立たずだったって。あんたのお陰でもう一度頑張る気にはなったけど……それでも怖いのよ。またなんの役にも立てなかったらって。それであんた達にまで見捨てられたらと思うと……」

 そう言うとレイナーレは顔をうつむかせ肩を震わせ始めた。俺は見ていられなくなりそんなレイナーレの肩を思いっきり抱き寄せた。

「大丈夫だ。お前は俺の使い魔なんだ、絶対に見捨てたりしない。それに役立たずなんてこともない。修行中に俺とした模擬戦を思い出してみろ。3戦やったけど俺の全敗だったじゃねぇか。だから役立たずなんてことは絶対ない。……俺なんかに勝ったくらいじゃあまり自信はつかないと思うけど、それでも俺は、それに皆だってお前を見捨てたりなんかしないさ」

「そうです。それにレイナーレさんは私の大切なお友達です。見捨てたりなんかしません」

 それを聞いたレイナーレは息を吐きだすと同時に、どうやら肩の力が抜けたようだった。そのまま彼女は俺の肩に額を当て

「……ありがとう」

 と、小さい声でそう言った。

「イッセーさん」

「ん?」

「ずっと……これからずっとこうしてそばに居ていいですか?」

「……ああ、ずっと一緒だ」

「ねえ、私も一緒にいていい?」

「何言ってんだよ、お前は帰りたい場所があんだろ? 愛する人のとこにさ。……でも約束するよ。俺も、そして皆もずっとお前の味方で友達だ」

「……ええ、そうね」

 そう言ったレイナーレの声は……若干震えてるような気がした。でも肩に額を載せてるのでその表情は読み取れなかった。

「……バカ」







「来たわね。あら? 火織たちは一緒ではないの?」

 俺とアーシア、レイナーレが部室に着くと既に部長と朱乃さん、木場が制服姿でそこにいた。部長と朱乃さんは優雅にお茶を飲んでる。ゲーム前だってのにリラックスしてるな。そして木場は氷輪丸の手入れをしていた。そんな中俺たちが部室に入ると部長は俺に向かって尋ねてきた。

「はい、家出るときに呼びに行ったんですけどなんか準備に手こずってるから先に行ってくれって。時間までには来るそうです」

「30分前には来ておきなさいと言ったのだけれど……まあゲームに間に合うのであればいいわ」

 そう言って部長はまたお茶に口を付けた。俺たちは3人揃ってソファーに座り、開始時間まで待機することにした。







 ゲーム開始10分前になった頃部室に魔法陣が光り出し、その中からグレイフィアさんが現れた。

「皆様、間もなくゲーム開始時刻です。準備はよろしい……あら? 火織様たちはどうなさいました?」

 その問いに俺たちは沈黙で返した。あいつらまだ来てないんだよ! 遅すぎだろ! 一体何やってるんだ!? 準備にそんなに時間かかるもんなのか!?

「お嬢様、もし彼女たちが時間になっても現れない場合、彼女たち抜きでゲームが開始されることになります」

「……分かってるわ」

 げっ!? マジで!? あいつらうちの主戦力だぞ!? ああもう何やってるんだよあいつら!? さっきから携帯にかけても出ねぇし! 一度呼びに家まで戻るか!?

 と、その時、廊下からドカドカドカッとものすごい音がして、部室の扉の前で止まったかと思うとバンッという音とともにその扉が開かれた。

「ごめん皆! 遅れちゃった!」

「遅いわよ! 一体何を……やっ……て…………」

 火織を先頭になだれ込んできた俺の幼馴染に対して部長は怒ろうとしたんだけど……その言葉は尻すぼみになっちまった。でも仕方ないと思う、火織たちの格好を目にすれば。俺も、そして皆も目が点になっていると思う。

「あなた達、何その格好?」

「え? 部長が好きな格好で来ていいって言ったから……変ですか?」

 変か変でないかと言われれば……絶対に変だ。

 まず黒歌姉と白音ちゃんは2人共着物を着ていた。色はそれぞれの名前と同じ黒と白。でもその着こなし方は端的に言ってめっちゃエロい。黒歌姉はえり元をめっちゃ開けてる。そのせいで肩はおろか、おっぱいも上半分は完全に見えちまってるよ。黒歌姉はおっぱい大きいしそんな着方をしたらめっちゃ胸が強調されてとにかくエロい。っていうかあんな格好で戦って大丈夫か? 激しく動いたらポロリといっちまいそうなんだが……。

 で、一方白音ちゃんは上半身は普通に着こなしてるんだけど……下はめっちゃミニだった。っていうかミニの着物なんてあるのか? もしかして自分で切ったりしたのかな? それにしたって短すぎだろ。あれじゃあ簡単にパンツ見えちまうじゃねぇか。白音ちゃんは近距離戦主体だし、蹴りなんかしたら絶対見えるよな。っていうか尻尾が裾の下から出てるけど若干そのせいでめくれてないか? 今後ろに回ったら見えたりするんじゃないだろうか?

 次に龍巳。龍巳の服は……これはもう変態だろ。基本的には黒いゴスロリ服なんだけど肩からへその下まで前面の布地が全くないフルオープン状態。おかげで形の良い大きな胸がボロンと丸出しだ。頂上に申し訳程度にバッテン印のシールが張ってあるから本当に大切な部分は見えてないけど……

「龍巳、その格好は……」

「むぅ……イッセー、覚えてない?」

「え? 覚えてって……あ、あ~~っ!! それってもしかして初めて会った時の!?」

 そうだよ! 初めてあの公園で会った時、たしかにこんな格好をしてた! でもあれは子供の頃のことであって、今その格好は完全にアウトだろ!

「我の一張羅、今日のために新しく用意した」

 何故にそげなドヤ顔!? こいつのことだからコスプレくらいはしてくるかもとは思ってたけど……さすがにこれは予想外だ。

 で、最後に火織。火織はこの中では比較的まともな格好だけど……俺的には逆に一番エロいと思う。服の構成は下からブーツ、ジーパン、無地の白いTシャツ。腰にはガンマンのようなベルトを巻いていて、そこにお馴染みの七天七刀を吊るしていた。まあこれだけ聞けば動きやすそうなまともな格好なんだけど、ジーパンとTシャツが異常だった。ジーパンは左足の付け根からすっぱり切り取られていて、もう左足が完全に丸見えだった。で、Tシャツの方は胸の下で裾を絞っているためお腹が丸見え。もしかしたらこの中で一番露出が多いんじゃないか?

 っていうか皆何でそんな格好で来たんだ?

「私達が龍巳に稽古つけてもらう時っていつもこの格好でしてもらってるのよ。だから慣れてるこの格好で行こうかなって」

「そ、そうか……」

 こ、この格好で修行してたのか。理由はわかったけど……皆最初は何を思ってこの格好で修業始めたんだ?

「はぁ、格好はとやかく言うつもりはないけれど、もう少し時間には余裕を持って来なさい。心配したのよ?」

「あはは、すみません。準備に手間取りまして。…………まさかアレの完成がこんなにギリギリになっちゃうとは(ボソッ」

「? 何?」

「いえ何も」

 何か火織がぼそっと言った気がしたんだけど……何だったんだ? 何故か背筋がゾゾッとしたんだが……。気のせいだよな?

「それでは皆さん揃いましたところで改めまして、準備はよろしいですね?」

 グレイフィアさんの言葉に皆で頷く。

「開始とともにこちらの魔法陣から皆様は戦闘用に用意されたフィールドへ転送されます。使い魔の皆様は主からの呼び出しがかかるまでここで待機をお願いします。転送先は異空間に作られた世界ですのでどれだけ壊されても構いません。思う存分、ご自由にどうぞ」

 ゲームのためにわざわざ異空間にフィールドまで作んのか。相変わらず悪魔の技術力はすごいな。昨日部長のプレゼンで過去のゲーム映像も少し見たけどフィールドは現実としか思えなかったぞ。ところで……異空間ってなんだ? フィールドから放り出されたら帰ってこれないとかそんなこと無いよな?

「なおこの試合はご両家のみならず四大魔王の方々も中継にてご覧になられておられます」

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 よ、四大魔王が見てる!? どういうことだ!? 部長のお兄さんが魔王らしいからその人くらいは見に来るかもとは思ってたけど、まさか魔王の方々全員が見に来るとは!

「お、お兄様だけではないの?」

「はい、ルシファー様のみならず、四大魔王全員がこのゲームに強い関心を示しています。また魔王眷属の方々も揃ってご覧になられています」

 ま、魔王の眷属まで見られてるって……部長一体どんだけ注目されてんだ。……いや、もしかして注目されてんのは焼き鳥の方か?

「それでは皆様、そろそろ時間でございます。眷属の方々は魔法陣の上に移動をお願いします」

 グレイフィアさんの指示に従って俺たちは魔法陣の上に移動した。相変わらず俺は自分の力でジャンプは出来ないんだけど、さすがに今回は大丈夫だよな? 俺だけここに置いてきぼりとか洒落にならん。

「龍巳、向こうに着いたらすぐに呼ぶからちょっと待っててね」

「レイナーレも呼ぶからな。準備しておいてくれ」

「ん、分かった。待ってる」

「ええ、使い魔召喚、失敗するんじゃないわよ」

「するか!」

 ったく、さっきまで震えてたくせに、皆の前ではいつも通り振る舞いやがって。……無理するんじゃねぇよ、ったく。

「それではこれより転移します。なお、一度フィールドに転移しましたらゲーム終了まで魔法陣による転移は出来なくなりますのでご注意ください。……それではお嬢様、ご武運を」

 その言葉とともに俺達の視界は光りに包まれた。


 
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