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雲は遠くて

作者:いっぺい
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17章 世田谷区たまがわ花火大会 (1)

17章 世田谷区たまがわ花火大会 (1)

2013年、8月の17日の土曜日。
天気もよい、猛暑(もうしょ)の、真夏(まなつ)

森川純(もりかわじゅん)は、(すず)しげな、
紺色(こんいろ)の、浴衣(ゆかた)に、
スポンジ(ぞこ)の、
雪駄(せった)、という姿(すがた)だった。

約束(やくそく)の、4時まで、まだ20分あった。

小田急電鉄(おだきゅうでんてつ)
成城学園前駅(せいじょうがくえんまええき)の、
中央改札口の付近、南口側(みなみぐちがわ)で、
純は、みんなを、待っている。

みんなとは、ほとんどが
ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の部員たちだ。

株式会社・モリカワの関係者や社員とかは、
緑地運動場(りょくちうんどうじょう)の、
4人がけのテーブルや、
10人用の大型シートに、集まることになっている。

今年も、(はな)やかな、
大きなイベント(祭典)、
世田谷区の、たまがわ花火大会が、
始まろうとしている。

今年で35回目を迎える、世田谷の夏の風物詩、
たまがわ花火大会は、 区民の(いこ)いの()
多摩川(たまがわ)のほとり、水辺(みずべ)で、
花火という、音と光の芸術を、楽しもうという、
区民、みんなで、盛り上げる、(もよお)しであった。

森川純は、花火の打ち上げ地点から、200mほどの、
テーブル席や、大型シート席を、
あわせて、140席、確保(かくほ)した。 

その有料・協賛席(きょうさんせき)・チケットは、
一般販売の6日ほど前に、
世田谷区(せたがやく)在住(ざいじゅう)の人に、
優先販売(ゆうせんはんばい)される。

株式会社・モリカワでは、
森川誠(まこと)社長の意向(いこう)で、
会社の関係者、社員や従業員たち、みんなで、
たまがわ花火大会を楽しみながら、
親睦(しんぼく)(はか)ることになった。
森川誠(まこと)は、この8月で、59歳になった。

5時30分から、都立の深沢高校(ふかさわこうこう)
和太鼓部(わだいこぶ)による演奏(えんそう)などの、
ステージ・イベント・オープニング・セレモニー(式典)は、
開始される。

次々に、打ち上げられ、そして、
夜空(よぞら)に、色あざやかに、開花する、
カラフルな、花火や、10号玉(だま)の、
グランド・オープン・・・、
花火大会の始まりは、7時からである。

森川純は、母校の早瀬田(わせだ)大学の、
恩師(おんし)の教授や、
ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の部員たちを、
招待(しょうたい)していた。
そのための席も、じゅうぶんにあった。

森川純が、みんなと、待ち合わせをしている、
成城学園前駅は、下北沢(しもきたざわ)駅から、
7つ目の駅だった。
新宿(しんじゅく)の方向とは、(ぎゃく)である。

西口、南口などの、駅入口から、改札口までは、
段差(だんさ)がない。
改札の(かいさつのかい)と、ホームの(かい)は、
段差があるため、
これを連絡(れんらく)する、
上下(じょうげ)のエスカレーターと、
エレベーターが、
各ホームに、1()ずつ、設置(せっち)されている。
(かく)ホームに、階段(かいだん)は2か(しょ)ある。

北口を出れば、並木道(なみきみち)や、高級住宅街や、
成城(せいじょう)学園、成城大学などの、
(しず)かな、()ちつきの、
風景(ふうけい)がひろがる。

3時50分。
森川純は、南口の通路を、
行き(ゆきき)する人々を、
ぼんやり、(なが)めていた。

中央改札口(ちゅうおうかいさつぐち)から、
出てくる、乗客(じょうきゃく)たちの中に、
元気よく、手を()る男たちが、2人いた。

≪つづく≫  
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