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ポケットモンスター ホープロード

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第二話 心優しき保護団員、ドライ

「帰るか…。」

「もう帰るの?また仕事?」

「そうだよ。」

「偉いなー、中学生なのに仕事してるなんて。」

「そうかな。」

「そうだよぉ、私なんて部活すら辛いって思ってるのに。」

ツヴァイは中学二年生、普通の少女だ。
しかし、学校が終わればそれは変わる。
ポケモン保護団員としての活動が始まる。

「じゃ、明日ね。」

「さよなら。」

そう言って友達と別れ、保護団体の集合場である、ポケモンプロテクターナショナルに向かった。ここはカントー、ジョウト、ホウエン、シンオウに設置されたポケモン保護団体の本部である。
カントー地方のヤマブキシティに設置されている。

そもそも、日本というものは外国と比べて平和とされているが、最近ではポケモンにおける密猟、虐待、誘拐が多発し平和とは言いにくくなっていた。
そんな状況を打破するために保護団体が作り上げられたのだ。
こんな状況になってしまったのはロケット団やマグマ団・アクア団、ギンガ団の数々の犯罪行為で被害を受けた町や人が犯罪に手を染めやすくなったと言える。

保護団体はポケモン、そして人を守るために活動する職業である。



ポケモンレンジャーが活動するフィオレ地方やアルミア地方、オブリビア地方はそういったことは少ない。というよりポケモンレンジャー自体がそういう活動をしているのだが。



「ツヴァイ。」

「あっ、兄さん!」

ドライも授業を終えて校門の外に立っていた。
妹を待っているようだった。

「じゃ、今日も行こうか。」

「うん!じゃあ僕のサーナイトに行く?」

「うーん、じゃあお願いしようかな。」

「やった、出て来て、サーナイト。」

サーナイトをボールから出した。
話を聞いていたようでニッコリとしていた。
もともとサーナイトはラルトス、キルリアの進化系でラルトス、キルリアは気持ちポケモンと呼ばれており、トレーナーの感情を感じ取る性質を持っているためサーナイトは感じ取ったのだろう。


「サーナイト、ヤマブキティのプロテクターナショナルまでテレポートしてくれ。」

「サナ、サナ…サーナー。」


テレポートでヤマブキについた。
隣町とはいえ、歩くと一時間はかかる。


ツヴァイ達兄弟の出身地はクチバシティであるが、二年前、ツヴァイより一つ下の弟が行方不明になっていた。
そんな事件が連続し警察、そして国際警察も動いたが事件解決には至らなかった。



町で一番高いであろう建物に入って行く。ここがプロテクターナショナルだ。
保護団員の年齢は一番多いのはやはり二十代だろうか。

「相変わらず、ドライちゃんってかわいい。」

「ほんっとう。かわいい。」


年上の女性に絶大な人気を誇るドライ。
中性的な容姿と優しい性格が人気の秘密らしい。

ドライはそれに答えるように微笑んだ。
すると周りの女性が「きゃー」と騒いでいるのだった。

「兄さん、早くライフさんのところに行こう。」

「そうだね。」

昨日、報告書を渡した際に直々に「明日二人に任務を言い渡す。」と言われたのだ。


「ライフさん、入ります。」

恐れ入りながらドライが声をかけてライフの部屋に入った。
まだ二十代前半であろう若い男性だ。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。」

優しく笑いかけて二人を安心させた。
これでもこの団体のリーダーでこの団体を立ち上げた人物であるのだが。
ポケモンバトルの腕がすさまじく彼に挑む人間をあっという間に倒してしまうらしい。

だが、この保護団体に流れる黒い噂を聞くとどうも安心できないのである。
何より、この黒い噂を手かがりに…この団体に入ったのだから。

「ライフさん、今回の任務はなんなのでしょう?」

「ああ、君達二人にはホウエン地方に向かってもらうよ。最近、ホウエン地方でよく起きているポケモン誘拐事件の調査をしてほしいんだ。」

「誘拐事件の…調査…ですか。」

何故、自分達二人に…と聞くような表情をするツヴァイを見てライフは答えた。

「警察もてこづってるみたいでね…。つまり警察を巻くことをできる頭脳があるだろう。だから一人だと危険だと判断して二人に任せようと思って。君達は兄妹で連携も良いだろうし、期待しているよ。これかせ手がかりの警察の捜査表だから。」

二人の警察の捜査表をもらい、出て行った。




その捜査表にはその誘拐事件が多発してる場所がミナモシティに集中していた。
ミナモシティにコンテスト会場がありとてもレベルが高いので観光客も多く、コンテストに出れるというのだから珍しく実力のあるポケモンが多い。
よくフィーアがコンテストのために向かっていたため知っている。
しかしツヴァイ自身は行ったことなど無いのだが。

他に捜査表には複数人の行為であると記されている。
若い男二人と若い女一人という構成だ。どこかの組織の幹部のように。

わかることはそれだけであまりにも情報不足だ。
だからこそこちら側に頼んでるというのでもあるのだろうが。



「安心してツヴァイ。ホウエンの土地勘ならだいたいついてきたから。」

「本当?さすが兄さん。」

「ネンドール、ミナモシティにテレポートだ。」

「ドォォォル。」

ネンドールはミナモシティにテレポートした。




綺麗な海、そして綺麗な街並み。
さすがは観光地とも言えるだろうか。

「ここがミナモシティ…。」

「あっ、コンテストが開催されるみたいだね…。しかも一番人気の美しさ部門だ。」

「ほんとだ。」

ミナモシティは数あるコンテストの中でもっともレベルが高いマスターランクのコンテストが開催される。
マスターランクに出場するにはシダケタウンのノーマルランク、ハツシゲタウンのスーパーランク、カイナシティのハイパーランクで優勝した者しか出場できない。
さらにそれぞれ部門があり、一つはかっこよさ部門、かわいさ部門、賢さ部門、たくましさ部門、そして一番人気の美しさ部門。
コンテストはバトルとはまた違った魅力があり、小学生でも出場することもあるため大人気である。
だからこそ、それに紛れて誘拐が発生するのだろう。


「美しさ部門…か。」

グレイシアでシダケタウンの美しさコンテストで出たのだがビリになった苦い思い出があった。
とにかく美しさを極めたいツヴァイにとって、ミナモシティの美しさコンテストは憧れだ。

「せっかくだから見に行く?」

「でも、そんな余裕なんて…。」

「警備も兼ねて…さ。」

なんだか申し訳ない気もしたが兄も別に悪い顔をしていないので少しくらいは…とうなづいた。




コンテスト会場に行くと人にまみれていた。
若い子達からおばさま達、仕事をはやびきしたであろう社会人までたくさんいる。
その中でも警備員が多く、誘拐事件もあってか警戒しているようだ。

「ジュンサーさんに言って特別に通してもらおうか。」

「その方が見渡せるし…そうしよう、兄さん。」

なんとか人ごみをかき分けてジュンサーのもとにかつけて保護団員の証であるバッジを見せた。

「これは…まだ若いのに保護団員なのね。」

「ええ、任務を言い渡されて警備をしようと思いまして。」

「わかったわ、気をつけてね。」

まだ始まる前の会場に入ることができたのだった。




「ここが…ミナモシティのコンテスト会場…。」

ノーマルランクの会場の数倍も広く、コンテスト会場自体も豪華だ。
兄はこのコンテスト会場で全部門をジュペッタ一匹で優勝していたのだ。

「フフ、コンテスト…出てみたい?」

「うん、当然だよ。僕はあの時の悔しさを忘れない。」

ビリになってしまったあの悔しさ…。バトルではそれなりの実力があったため勝てると思っていたのがあのザマであった。
けづやには気にしていて一次審査の評価は高かったのだが二次審査では妨害されまくっていたのだった。
緊張して演技ができなくなったり、びっくりさせられて騒いでしまったりと演技にしょっちゅう支障をきたしてしまうのだった。

「そっか…。」

しばらく見回りしていると一般人がまるでスーパーのセールのように押し寄せ、一番席の取り合いだ。
ひどいとポケモンを使ってまで席を奪い取ろうとする。

「いけない、このままだと余計混乱を生む。止めよう、ツヴァイ。」

「うん。」

「シャワーズ、頼んだよ。」

「フローゼル、出番だ!」

シャワーズとフローゼルを出して一般人を止める入る。


「こんなところでポケモンを使わないでください、迷惑になりますよ。」

「ガキのくせにうるさい!あいつが私の席をとったからいけないのよ!」

「何よ、アンタがとったんじゃないの!」

収拾がつかない程の喧嘩状態だ。

「オクタン、オクタン砲!」

「マックグマ、突進!」

二匹のバトルが狭い客席で勃発した。

「くっ、ポケモンに罪はないのに…。」

「ここはもう、力づくで止めるしかないよね。」

「いや、その必要はない。シャワーズ、メロメロだ。」

「シャワァァァァッ!」

メロメロを発動し、マッスグマとオクタンはメロメロになってしまった。
シャワーズはメス。どうやら二匹はオスだったらしい。

「なるほど、これで傷つけずに済むね。」

「「ああーっ!」」

叫ぶ観客だったがすぐにジュンサーがやってきた。

「これ以上騒ぐと出て行ってもらいますよ?」

さすがに警察登場で頭が冷えたのか素直にしたがった。


「フフ、ありがとう。助かったわ。」

「これくらいお安い御用です。」

そう会話してると会場が暗転した。
そして舞台だけが明転した。

「さあ、始まりましたポケモンコンテストマスターランク!」


会場は大盛り上がりだ。

「すごい…。」

舞台にいるコーディネーター達からはオーラを感じる。
ここまで来た実力者の風格ともいうべきか。
長男のフュンに近いオーラだ。

「フフ、大盛り上がりだね。こうやって浮かれている間に誘拐事件が発生するんだ。」


一次審査が終了し、二次審査が始まった。


「綺麗…これがトップコーディネーターの実力…。」

技のコンボや見せ方をわかっている。
それに妨害対策もしている。
バトルではないのに手に汗握る熾烈な戦いだった。

そんな中、妙な超音波を感じた。

「何、耳がキンキンする。」

「ルカリオ、波導で位置を特定するんだ。」

ルカリオを出して探らせようとする…すると

キイイイィィィンという音という不快な音が会場全体に伝わる。

次の瞬間は悲鳴が飛び交った。

「なんだ!?」

「ポケモン達が!」

舞台にいるポケモン達が暴れだした。
どうやらこの技は「超音波」でポケモン達が混乱したらしい。
舞台にいるコーディネーター達はボールを控室に置いているためポケモン達の暴走を止めることができない。

暴れだしたポケモン達が次々とコンテスト会場を破壊していく。
会場内は瞬く間に阿鼻叫喚だ。

「グルルル…ウオオオオッ!」

なんとルカリオまで暴れだしてしまった。

「ルカリオ!止めるんだッ!」

主人の言葉も届かず波導弾で辺りを破壊しつくす。

「兄さん…。」

このままだと…と心配そうに兄を見た。


「戻れ、ルカリオ…。」

ボールにルカリオを戻すドライ。

「くっ…。」

「耳が痛い。」

あまりの深い音に二人は思わず耳を抑えた。

「これはポケモンが出せる音じゃない。けど、間違いなく超音波…一体どうなっているんだ…。」

二人は音に苦しみながらも辺りを見渡すが逃げ惑う人々で全く情報がつかめない。

「サーナイトの神秘の守りを使えばいいけど、出した瞬間、混乱したら…。」

「僕のネンドールも神秘の守りが…。」

出した瞬間、混乱でもすれば同じことだ。

「……どうすれば…。」

そう悩んでいるとカタカタとボールが揺れた。
サーナイトだ。

「サー…ナイト…。」

私を信じて…と言うように。

「…わかった、僕は君を信じる。いけ、サーナイト。」

サーナイトをボールから出した。

「ッ、ツヴァイ…。」

「…神秘の守りだ、サーナイト。」

指示を聞いてくれるだろうか…緊張しながら指示を出した。


───




パァッとサーナイトの周りは光に包まれた。

「神秘の守り、成功だ。」

それを見たドライはフッと笑った。
我が妹ながらやるな…と。


「よし、ネンドール!お前も神秘の守りだ!」

神秘の守りに包まれながらネンドールが現れた。

神秘の守りの範囲が広がった。

「まずはポケモン達の暴走を止めないとね。」

「うん。」

「もう一度出番だ、ルカリオ。」

神秘の守りに守られてルカリオが登場した。

「波導で音波の原因を探るんだ。」

その指示に黙ってうなづいて猛スピードで会場を駆け回って行った。

ジュンサー、及び警察は観客の避難誘導と暴れるポケモン達への防戦で対処はしきれてないようだった。

「僕達がなんとかするしかないね、ツヴァイ。」

「うん。」

二人は舞台に上がった。




ポケモンの持ち主であるコーディネーター達がポケモンの攻撃を受けて倒れていた。

「ポケモン保護団員です。大丈夫ですか?」

ドライが倒れているコーディネーターに駆け寄った。

「私はいいの…私の…ポケモンが…。」

「任せてください。僕達が止めます。」

「あっ、ツヴァイ!」

ツヴァイは飛び出していった。


「苦しいだろうね…ちょっと痛いだろうけど…すぐに助けるから。フローゼル、渦潮でポケモン達の動きを封じるんだ!」

「フ、…フーロォォォォオオ!」

渦潮で次々にポケモン達を動きを封じていく。


「今のうちにボールを取りに行ってください。」

出場者のトレーナー達が次々にボールを取って行こうとする中、一人の少年は取って行こうとしなかった。
自分達と同世代のようだ。

「どうしたの、早くボールを…。」

「俺の…リザードンは危険だよ…。とりわけバトルが強くて…バトルをするとすぐに言うことを聞かなくなる…。だから…ボールに収まるかどうか…。」

その弱気で無責任な発言にドライは苛立ちを覚えた。

「君はリザードンのトレーナーなんだよ!リザードンは苦しんでいる…トレーナーの君が、諦めてどうするんだッ!」




「兄さん…。」

普段は温厚なドライだが、こういう発言をする者に対しては怒りを見せる。


リザードンにはフローゼルが対抗している。

「…フローゼル!ハイドロポンプ!」

「フロオオオオッ!」

「グオオオ!」

混乱したリザードンは避けることなくハイドロポンプが直撃した。

「よし、もう一度渦潮!」

すると…

「グオオオオオオオオン!!」

光を吸収していたのか、ソーラービームを撃ってきた。

「なっ…避けるんだ、フローゼル!」

素早いフローゼルはかわすことができたがソーラービームの衝撃で吹っ飛んでしまった。

「くっ…。」

『へへっ、すっげえ攻撃じゃねぇか…。』

直撃は受けなかったため、フローゼルはすぐに体制を立て直した。

「アクアジェット!」

「フロォオオオ!」

『俺の攻撃、受けてみやがれ!』

アクアジェットの一撃をリザードンが浴びた。

しかし、ぎろりとリザードンはフローゼルを見ると炎を浴びせた。

「ハイドロポンプとアクアジェットをまともに受けてまだ耐えられるか…。」



「君がリザードンを救うしか方法は無いんだよ!?そんなんだったらトレーナーになんかなるなッ!!」

「──ッ…。」

ドライの厳しい叱咤にようやく立ち上がった。

「……リザードン…。」

そして控室に向かった。




「遅れました。」

次々と控室に行ったコーディネーター達が戻ってくる。

フローゼルはポケモン達を捕えている渦を弱めた。

「戻れ、メガニウム。」

「戻ってユキメノコ。」

「マリルリも戻るんだ。」

ボールに自分のポケモン達を戻した。




「あとは…リザードンだけ…。」

超音波の効果は今でも続いていて苦しそうだった。
神秘の守りで守られているとはいえ、今でも超音波が続いている。

「リザードン…。」

そんなリザードンを辛そうに見つめるツヴァイ。
ゆっくり…ゆっくりとリザードンに近づいた。

「大丈夫だよ…大丈夫だから…。」

優しく話しかけるが、リザードンはツヴァイに向けて火炎放射を撃ってくる。

「ツヴァイ!」

危ない…とドライは叫んだ。

「フロオオオオ!」

ハイドロポンプで火炎放射を相殺した。

「何やってるんだ、危ないだろ!自分の身を守れない奴にポケモンが守れるか!」

「ごめんなさい…兄さん。」

ドライはこういう時には厳しい。
温厚な性格をしているが何かを傷つける行為や自分の危険を顧みない行為は絶対に許さない。


フローゼルがアクアジェットでリザードンにもう一撃を浴びせて交戦した。

「…。」

さっきのリザードンのコーディネーターを待つばかりだ。

「フローゼル…。」

炎と水の応酬だ。



「…リザードン!」





「ハッ…これは…。」

カタカタとドライのシャワーズとプテラのボール震えていた。
ルカリオとリオルは波導で仲間に危機を知らせたりする習性がある。

「サナ、サーナ。」

心配そうにサーナイトがツヴァイに寄ってきた。

「サーナイト…?」

サーナイトも感情をキャッチする能力を持っている。

「…ルカリオに何かあったのかもしれない。僕は行ってくるから気をつけるんだよ。」

「うん。」

ドライはルカリオが向かって行った方向に急いだ。





「リザードン!」

それと入れ替わるようにリザードンの持ち主が現れた。

「戻るんだ、リザードン。」

ボールを戻そうとしたが炎を阻まれてしまう。

「リザードン……やっぱり…無理なんだ…。」

「無理…?なんだそんなこと言うんだよ!お前は努力してこのコンテストに出場したんじゃないのか!?」

「……ほんとはコンテストが嫌いなんだ。」

「!?」

コンテストが嫌い…最初何を言っているのかわからなかった。
だったら何故、コンテストに。

「本当はバトルが好きなんだ…俺も…リザードンも…。だけど親はコンテスト極めろって言うんだ…。ほんとは…ほんとはバトルがしたいんだ…。」

「………。そんなこと、言い訳にならない。」

冷徹に少年に言い放った。

「バトルもコンテストも関係ない。自分のポケモンに責任を持たない奴は…兄さんの言った通りトレーナーなんかになるな…。けど、リザードンの主人はお前しかいない…お前しか、助けられないんだよ。」

フローゼルとリザードンは永遠と戦い続けていた。

「……。」

「…よく考えろ。」

体を震わせ少年は立ち上がった。

「リザードン…ごめんな!本当はお前だってバトルしたいのに…俺は…お前のことが見えてなかった…だから…帰ろう、リザードン。」

「……。」

その言葉を聞いてリザードンの動きが止まった。

「戻ってくれ、リザードン。」

素直にリザードンはボールに戻るのだった。

「フウ…。」

「…ごめんなさい、そしてありがとう。…君の名前は?」

「人に名前を聞くんだったらそっちが名乗るのは先。」

兄がいない前ではクールなツヴァイ。
その雰囲気に気圧されつつ、自己紹介した。

「あっ、俺はジトリン…カナズミシティ出身の中学二年生…。」

「君も中学二年生…!?」

「じゃあ君も中学二年生…?」

「…ああ、僕はポケモン保護団員のツヴァイ、中学二年生だ。」

「すごいなぁ…中学生で保護団員なんて…。」

「フン、君だって中学生でコンテストのマスターランク。羨ましいもんだ。」

「……。」

「僕は兄さんを手助けに行ってくるから。フローゼル、よく頑張ったありがとう。」

フローゼルをボールに戻し、兄を追いかけて行った。

リザードンの少年はその姿をずっと見ていた。


「そういえば超音波がしない…兄さんがなんとかしてくれたんだ…。」










しばらく進んでみると暗い倉庫のような場所だった。


「兄さん!」

兄のもとにかけつけるとルカリオとシャワーズとネンドールが若い男二人と若い女一人と交戦していた。

「お仲間が来たようだな。」

「兄さん!」

「こいつらがポケモンの誘拐犯なんだ。スリーパーの催眠をコンテスト会場全体にかけてクロバットの超音波の威力を増大させてエレキブルでこの会場に超音波を電流で流していたんだ。」

「こいつらが…。」


「全くガキが俺達の邪魔をするなんて。」

「でも私のスリーパーちゃんの催眠にかかっちゃえばポケモンの誘拐なんて簡単なことだけどね。」



「誘拐…どう関係しているの!?」

「あの超音波と催眠でポケモンを操って誘拐していたんだ。だけどまだ時間的に効力がないからポケモン達が混乱したんだ。」

「なんてひどいことを!」

怒りの感情をぶつけるツヴァイを三人は笑った。

「ガキがヒーロー気取りで。エレキブル、十万ボルト!」

「痛い目みるわよ?スリーパー、サイケ光線!」

「クロバット、どくどくの牙!」

三人が再びポケモンに指示を出した。

「僕も火加勢する!」

「いや、ここは僕のバトルだ、ツヴァイは下がってて。」

「でも…。」

「そうだそうだ、ガキが三匹同時に指示なんかできるのか!?」


「シャワーズ、ハイドロポンプ。ネンドールはサイコキネシス。ルカリオは波導弾!」


『許さないわよ!』

『全く、近頃の若いもんは…ワシの力を思い知らせなきゃいかん!』

『ポケモン達を苦しめた罪は重いですよッ!!』

三匹は同時に動きだした。
シャワーズはサイケ光線を相殺しネンドールはサイコキネシスで向かってくるクロバットを縛り上げ、ルカリオを十万ボルトを弾いて波導弾をエレキブルに当てた。

「なっ…ならば…逃がしはしない…。エレキブル、放電だ!」


「はっ…ネンドール、ツヴァイをテレポートだ!」

「えっ…。そんな………そんなこと……させな─」


ツヴァイをテレポートさせてその次の瞬間放電がクロバットとスリーパーを巻き込みながらルカリオ、ネンドール、シャワーズ…そしてドライにまでも浴びせた。


「ぐわあああああっ!」

こうなることを見越してツヴァイをテレポートさせたのだった。

ガクッとドライは倒れ込んだ。

シャワーズには効果抜群であるため苦しそうにしていた。
あまり効果がないルカリオであったが麻痺してしまったようだ。
一方、地面タイプのネンドールはドライに近寄った。

『なんて卑怯な真似を…。シャワーズ、若造、大丈夫か!』

『体に痺れはありますが…大丈夫です。』

『私は体力に自信がありますから大丈夫です。』

しかし、倒れているドライは反応が無い。

『…くっ…ドライを傷つけた罪、重いぞ。』





「はははははっ!トレーナーの指示がなきゃ大したことはない。どんどん攻撃するぞ。」

「ちょっと、私達のポケモンまで巻き込んでるんじゃないわよ!」

「クロバットが瀕死寸前じゃねぇか!」

「知るか、かちゃあいいんだよ!エレキブル、もう一度放電だ!」


『おおーーっとそれには及ばないぜ。』


「ドンカラス、不意打ち!」

ドンカラスがエレキブルに不意打ちするのだった。
特性の強運で急所に当たったらしく一撃で沈むのだった。
そもそもルカリオの超強力な波導弾が当たった後だというのもあるが。
華麗にエレキブルを倒してドヤ顔をしつつ

『…大丈夫かい、シャワーズちゃん。』

『え、…ええ、大丈夫よ。』

『いやあ、かわいいシャワーズちゃんを傷つける奴なんかボッコボコですよ。』

『けしからーん!これだからいまどきの若いもんは!』

『ああううーーー!』

ネンドールがドンカラスを払いのけた。

『しかしドンカラス、ネンドールのテレポートでツヴァイもろとも飛ばしたはずでは…?』

ルカリオはそう尋ねると再びドヤ顔で答えた。

『ツヴァイはテレポートされる瞬間、サーナイトでネンドールの感情を読み取ってテレポートで飛ばされる先を読んでテレポート先を変えて戻ってきたんだよ。』



「う…。」

ドライは目を覚ました。

「兄さん!兄さん…良かった…。」

ドライにツヴァイは抱き着いた。
もしかして死んだのではないかと思っていたのもあって。

「心配しすぎだよ、これくらい…大したことないから。」

「でも、兄さん…。」

「フフ、まさか戻ってくるなんてね…。」

「兄さん、僕を守るために…。」

「妹を守るのは兄の務めだ。…ルカリオ、ネンドール、〆るよ!インファイト、大地の力!」

麻痺で素早さを失ってるとは思えない速さでインファイトをクロバットに叩き込み、スリーパーを大地の力で撃破した。
ルカリオはエースの風格を見せるのだった。


「「あああっ!?」」


「グレイシア!」

ツヴァイはグレイシアを出した。
そしてグレイシアの冷気で手足を凍らせた。

「なんなのよ、動けないじゃない!」

「トレーナーを狙うような卑怯な真似をする奴はこうだ。すぐに警察に突き出す!」

「ツヴァイ…。」

凛々しいツヴァイに微笑むドライ。

「兄さんこそ自分の身くらい守ってよ。」

「フフ、ごめんね。心配させて。」

泣きそうになっているツヴァイの頭をなでなでするドライ。
強がりな妹にまた微笑んだ。















その後、本部に戻ると周りの人間がざわついていた。
ピンピンしてはいるがボロボロのドライに周りの人間が心配しているらしい。


「ただいま戻りました。誘拐犯は逮捕しました。」

ライフの部屋に入るとライフは立ち上がって驚いた。

「ご苦労…って…大丈夫か、その姿…。」

ボロボロになっているドライ。
服は特にボロボロになっている。
顔にこそ傷は少ないが手にはかなり傷があった。

「ええ、多少怪我してしまいましたが、大丈夫です。」

「そうか…ならいいんだが、無茶はするなよ。」

「はい。」

ライフの部屋を出たあと、ドライは不安そうにするツヴァイの頭をなでながら言った。

「このことは兄様や兄さんは秘密にしててね。」

「えっ…なんで!」

「服はなんとか誤魔化せるし目立つ傷もないから心配かけたくないんだよ。」

「ダメだよ…兄さん…兄さんは怪我してるんだよ?」

「このくらい大丈夫だよ。僕はこれくらいの覚悟はできている。」

「……にい、…さん…。」



中性的な見た目の美少年で心優しいがポケモンをいい加減に扱う者は許さない、そして芯が強い。
何があってもくじけない強さをもっている。

それがツヴァイの兄、ドライである。


 
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