| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十七話 Laser Lab

 
前書き
クラーケンを下したゼロ。
そしてハンターベースを離れたルナは…? 

 
ホタルニクスのレーザー研究所の前にハーネットカスタムを停めたルナは欧州の城のような外観を見つめた。
メカニロイドとプレスがあちこちに配備され、侵入者を頑なに拒んでいる。

ルナ「(ウィルスの影響を受けてんだろうけど、大して変わんねえな)」

寧ろホタルニクスの頑固さがセキュリティシステムに乗り移ったかのようだ。
すると、突如目の前に紫のウィルスがルナに迫る。

ルナ「成る程な」

ウィルスバスターを装備したバレットでウィルスを破壊する。
中から強烈な邪気のようなものが発生させられている。
恐らく、中はシグマウィルスが繁殖する温床となっているのだろう。

ルナ「待ってろよじいさん…」

バレットを連射して門を開けると研究所に入った。
メカニロイドの軍勢を潰し、プレスを回避しながら突き進む。


































レーザー研究所のホタルニクスの部屋では、薄れゆく意識の中で、ホタルニクスは何とか自制を保っていた。
2頭身の小柄なボディ。
短い手足。
あまり品のあるデザインとは言えないが、それは科学者としては関係のないことだ。
実際彼は世界的に有名なレーザー工学者なのだから。
だが、それが今ではどうだ。
少し前から得体の知れないウィルスに感染してからというもの、自分は当然のこと、研究所全体が混沌の渦に飲み込まれている。今頃セキュリティシステムは全て暴走し、動く物体を見境なく攻撃する物と化しているだろう。

ホタルニクス「渡さぬ…このレーザー装置をイレギュラーハンターに渡すわけには…」

ホタルニクスは死出の道連れにするつもりであった。
己の研究成果全てを。
イレギュラーハンターに渡さぬために。
最初のシグマの反乱において、レプリフォースの協力を、名誉回復のチャンスを損ねるといったつまらない目的で拒否してその活動を妨害し、更にはその事実を隠蔽し、挙句にレプリフォース大戦ではレプリフォースの怒りを無視して徹底的に独立国の設立を妨げた。
もはや一部の人間至上主義の人類達の飼い犬となってしまった彼等に、果たして自分がレーザー工学技術を提供することは正しいと言えるだろうか?
…答えは否だ。
彼らは例えるなら制御を失った兵器。
危惧すべき者達。
レプリロイドを影で脅かす、極めて悪質な組織。
彼等こそ世界で1番危険な存在である。
彼らにレーザー兵器を渡したら、鬼に金棒だ。
ホタルニクスはもう、彼等を信用することは出来ないのだ。
いずれ増長したイレギュラーハンターはその強大な力を持って、レプリロイド全体を“管理”し始めることだろう。
自分がそんな事態の引き金となってはいけない。
むしろレプリロイドの未来のために、あの組織は存在してはならないのだ。
ふと、モニターに目を遣ると、1人のレプリロイドがセキュリティシステムを無力化しながら突き進んでいた。
最初はイレギュラーハンターかと思っていたが、次の瞬間目を見開いた。

ホタルニクス「馬鹿な…あれは…」

本来ならここにいるはずのない。
いや、来る理由もない彼女がこの研究所にいる。

ホタルニクス「何故あの娘が…」

あの娘の扱う高性能のメカニロイドから得るジャンクパーツを求めて、客として訪れることが多々あり、今では自分の数少ない自分の苦悩を理解してくれる友人。
ホタルニクスはウィルスに蝕まれた身体を必死に動かし、何とか音声を彼女に伝えようとするが、ウィルスの影響で全く作動しない。
今のモニターもウィルスの影響で誤作動しているに過ぎないのだ。

ホタルニクス「くっ…こうなったらわしが向かうしか…」

ウィルスに蝕まれ、満足に動けない身体でルナの元まで迎える可能性はゼロに等しい。
下手をしたらイレギュラー化してしまうかもしれない。
だが…。

ホタルニクス「数少ない友人を…若者を死なせるわけにはいかん……」

モニターを見遣るとルナがいる場所はシグマウィルスが大量に繁殖している場所だ。
そこに彼女は戸惑うことなく入っていく。

ホタルニクス「なっ!!?」

自殺行為だとホタルニクスが驚愕するが、シグマウィルスを浴びても全く彼女に変化はない。
寧ろ、驚愕しているのは実体化したシグマウィルスの方だ。



































「馬鹿な…?我がウィルスを受けて…」

ルナ「残念でした…くたばれ屑野郎」

実体化したウィルスにレーザーを当てるとウィルスは霧散し、消滅した。

「き、貴様…何者だ!!?」

自身のウィルスが全く効かないレプリロイドにさしものシグマ(厳密にはシグマの人格を持ったウィルス)も驚愕するしかない。

ルナ「俺かい?俺はただの通りすがりのジャンク屋さ。」

凄みのある笑みを浮かべながら高く跳躍すると二丁のバレットを回転させる。

ルナ「ギガクラッシュ!!」

全方位に向けて凄まじい勢いで乱射されるレーザー弾。
繁殖していたシグマウィルスは尽く消滅した。

































モニターで見ていたホタルニクスは安堵の溜め息を吐いた。
思い返してみれば、彼女はとある能力のおかげでウィルスが効かない身体なのだ。
ウィルスの効かない身体に興味を覚えたホタルニクスも彼女に調べさせてくれと頼んだが拒否された。
それに関してはホタルニクスも分かっている。
もし万が一、外部に漏れたりしたら悪用される危険性がある。
ホタルニクスも自身の研究の悪用を恐れているために彼女の気持ちは理解出来た。
とにかく何とか音声を出そうとウィルスに蝕まれた身体を叱咤し、機器の操作を再開した。






































しばらく走ると、機械の駆動音が聞こえた。

ルナ「じいさんか?」

ホタルニクスがいるのかと思い、壁を蹴りながら上に移動すると見慣れないカプセルがあった。

ルナ「何だこりゃあ?じいさんの新開発か?」

首を傾げながら、カプセルに近づくとカプセルが起動し、ライト博士のホログラムが現れた。

ルナ「あ、あんた…まさかトーマス・ライト博士?」

科学史を僅かでも齧った事のある者ならばその名を知らぬ者はまずいない。
世界に名を馳せたロボット工学の父にして伝説の英雄ロックマンの製作者。
ライト博士は穏やかな笑みを浮かべながら口を開いた。

ライト『君がルナ君かね?噂は聞いているよ。優秀な技術者だそうだね』

ルナ「ロボット工学の父とさえ言われたあんたにそう言われるとは光栄だな。それで、どうしてあんたがじいさんの研究所に?」

ライト『至極尤もな質問じゃな。1つ聞きたいのだが、君は簡易転送装置は持っているかね?』

ルナ「?ああ、一応な」

ライト『ならば、安心して渡すことが出来る。』

ルナにこのカプセルのパーツファイルに記録されたデータプログラムへの説明を始める。

ライト『このパーツファイルに記録されておるのはエックスの強化アーマーであるファルコンアーマーのアームパーツじゃ』

ルナ「エックスの強化アーマー?ああ、あのいつもエックスが纏うアーマーのことか?」

最初の大戦のファーストアーマー。

カウンターハンター事件のセカンドアーマー。

ドップラーの反乱のサードアーマー。

そして今回の大戦でも使っているレプリフォース大戦で得たフォースアーマー。

ルナ「エックスのアームパーツ…つまりエックスのバスターをパワーアップさせる代物だな。こいつにはあのレプリカフォースアーマーのプラズマチャージショットを上回る出力を誇るってのか?」

ライト『いや…そうではない』

ルナの問い掛けにライト博士は頭を振る。

ルナ「へ?」

ライト『実の所、エックスに与えたアーマーの中でも安定した力をバランス良く引き出し、発揮すると言う点では、フォースアーマーは1つの到達点に至っておる。』

ルナ「じゃあそいつは?」

ライト『ファルコンアーマーは局地戦向けに機動力に特化したアーマーじゃから、バスターの出力に関してはプラズマチャージショットには及ばんのじゃ。じゃがバスターに工夫を施し、エネルギーをより高い密度で一点集中させたスピアチャージショットの貫通力は、使いようによってはプラズマチャージショットを上回る威力を発揮する。そしてエックスが所有するXブレードを解析し、バスターから高出力のビームスピアを発現させることが出来る。ブレードとスピアを連携させることで強力なソニックブームを繰り出すことが可能じゃ。しかし、ソニックブームは一定距離まで行くと消滅するから近~中距離の敵にしか使えん。どちらもプラズマチャージショットのように広範囲の敵を一気に殲滅することは出来ぬが、そこは用途に応じてフォースアーマーとファルコンアーマーを使い分けるようエックスには伝えて欲しい』

ルナ「OK、伝えておいてやるよ」

そう言って頷くルナに向かい微笑するとライト博士のホログラムは消えていく。

ルナ「さてと、じゃあ早くじいさんの元へ向かうとするかね」

そしてルナも踵を返すと目当てのレーザー装置を求め、研究所の中枢へ向けて走り出したのであった。



































しばらく進むと螺旋階段に出たルナは天井からレーザー砲台、プリズムガーディアンが現れた。
赤の砲台が2体。
黒の砲台が1体。
高出力のレーザーがルナに向けて放たれるが、それをたやすく回避し、黒い砲台にバレットを向ける。

ルナ「弱点があからさま過ぎるっつーの!!」

リフレクトレーザーが黒い砲台に炸裂する。
黒い砲台に狙いを定めてレーザーを連射した。
他にも黒い砲台を見つけ、レーザーを叩き込むと破壊し、ホタルニクスの元に向かう。

ルナ「やべえな、もう時間がねえ!!」

プリズムガーディアンを沈黙させたルナは、その遅れを僅かでも取り戻そうと全力で走り出す。

































ホタルニクスのいる部屋の前まで来たルナは扉を強引にこじ開けた。

ルナ「じいさん!!」

ホタルニクス「ルナか…何をしに此処に来たのじゃ?」

ルナ「あのなあ!!今、地球にユーラシアが落ちようとしてんだ!!あんたを助けに来たんだよ!!」

ホタルニクス「もう遅い…わしはウィルスに侵されてしまった。ありったけのワクチンプログラムを使ったことで今は鎮静化しておるが…。」

ルナ「じ、じいさん…」

ホタルニクス「早く逃げるんじゃ…このままではわしは君を襲ってしまう……」

ルナ「駄目だ…エニグマの強化にあんたの造ったレーザー装置が必要なんだ…じいさん、あんたにこんなこと頼むなんて酷だってのは分かってる。レーザー装置をイレギュラーハンターに渡してくれないか?」

ホタルニクス「君の頼みでもそれは出来ん。わしは彼らのやり方に常々疑問を感じていた。故に協力は出来ない」

ルナ「じいさん…頼むよ。この通りだ」

頭を下げる彼女にホタルニクスは問い掛ける。

ホタルニクス「何故そこまでイレギュラーハンターを助けようとする?武力でイレギュラーを討ち、最早一部の人間至上主義の飼い犬と化した彼らに」

ルナ「確かに今のイレギュラーハンターはそうだな…でも全てのイレギュラーハンターがそうって訳じゃない。エックスやルインのように…力で押さえ付けるようなやり方に疑問を持ってる奴だっている…。俺はそんな奴らがいることに希望を見出だした。あいつらならきっとハンターのやり方を変えてくれるって…」

ホタルニクス「…………」

ルナとホタルニクスの間に長い沈黙が続く。
2人の間の空気はリュートの弦の如くピンと張り詰め…どれだけの時が過ぎただろう。

ホタルニクス「…のう、ルナ……」

ルナ「?」

ホタルニクス「イレギュラーハンターの存在意義とは、何かね?いや…それ以前に、イレギュラー化するという危険性を残したレプリロイドの存在が何故ここまで世界に広がったと思うかね?」

ルナ「え?」

ホタルニクス「私はこれまで、人類の大半はレプリロイドを利用するために生存させてきたのだと思っていた。イレギュラーハンターはそのために同胞を排除する悪質な組織だとそう思ってきた。しかし、どうやらそうではないらしい。少なくとも…彼くらいは…」

ルナ「彼…あんたの友人のDr.ケインか?」

ホタルニクス「うむ…ケイン氏は多分…自分が愛情をこめて造り上げた“子供達”を失敗作のまま終わらせたくはなかったのだろう。それはそうだ…自分の子供達を失敗作扱いされるのは自分が負う痛みより辛い。ケイン氏は子供達を救うために仕方なく、彼はイレギュラーハンターを組織したのだろう。それはレプリロイドにとっては迷惑以外の何ものでもないのかもしれない。だがそうするより他に、レプリロイドが生き残る手段などなかったのかもしれん。しかしそれは親が子に向ける、彼なりの精一杯の愛情だった。それを否定する権利は誰にもないのかもしれん。少なくとも私はそう思う。そう信じたい」

ルナ「じいさん……」

ホタルニクス「わしも少しだけ信じてみようと思う。わしのDNAデータを使いなさい。それを使えばそこの扉を開けることが出来る。その奥にあるレーザー装置…持って行きなさい。」

ルナ「サンキューじいさん…あんたはどうするんだ?」

ホタルニクス「わしは、この研究所を自爆させる。満足に動かせぬ身体だが、研究所の動力炉を破壊することくらいは出来るじゃろう」

ルナ「だ、駄目だじいさん!!あんたも一緒に…」

ホタルニクス「駄目じゃ、このままではわしは完全にイレギュラー化してしまう。そうなれば人々に危害を加えるじゃろう。それにここはシグマウィルスの温床と化しておる。完全に破壊しなければならん。」

ルナ「じいさん…」

ホタルニクス「さあ、行け…わしがわしのままでいられるうちに…」

ルナ「ありがとう…じいさん……忘れないよあんたのこと…」

ホタルニクス「うむ…そのハンター達に世界の平和を任せたと伝えて欲しい」

そう言って、ルナはレーザー装置を回収すると即座に研究所を脱出した。




































ホタルニクスは研究所の動力室に入り、動力炉の前で佇んでいた。

ホタルニクス「わしは幸せだったかもしれん……最期にあの娘に会えたことを…平和の夢を託すことが出来る…。戦いを恐れ…研究に引きこもりがちだったわしが最期にこの世の役に立てた…ありがとう…ルナ…」

自身の動力炉にエネルギーを集中させる。
エネルギーが臨界点に到達し、ホタルニクスは自爆した。
彼は最期の瞬間、本当に幸せそうに笑いながら生を終えた。



































~何度倒しても蘇るあいつ~

時間軸は今から一ヶ月前。

ルイン「そういえばシグマが蘇るのあの時点(X4)で6回目だよね?」

エックス「ああ、何度倒しても蘇るからな、最早レプリロイドの範疇を越えている。」

ルナ「流石にこうまで蘇ると笑えてくるな、最早天丼だよ天丼。」

アイリス「天丼?あの天ぷらを乗せた料理?」

ルナ「いやそうじゃない。俺が言う天丼てのは…」

天丼=どんぶりに盛った飯の上に天ぷらをのせ,濃いつゆ(天つゆ)をかけ回したもの。

この場合の天丼=同じようなシチュエーションで使い笑いを取る方法。

アイリス「ああ、成る程。OK、理解したわ」

ルイン「毎回毎回どうやって蘇るんだろうね?」

ゼロ「シグマが1人いたら周りに30人はいると思え」

ルナ「何の警告だよ!!?ていうか元がつくとはいえ上司をゴキブリ扱いかよ!!俺は嫌だぞ!!あんな禿が大量にいるのを見るなんて!!」

因みにゼロのこの発言は今から1ヶ月後の騒動と今から十数年後の新世代騒動でウィルスとコピーの違いがあるとはいえ、かなり変則的ながら実現することになる。 
 

 
後書き
戦わずして、パーツ入手。

特殊武器・必殺技入手。

エックス特殊武器

ウイルレーザー

性能は原作に準ずる。

ゼロ必殺技

滅閃光

ギガアタック
性能は原作に準ずる。

ルイン特殊武器

ウイルレーザー

性能はエックスと同じ。
チャージ不可。

ルイン必殺技

無し。

ファルコンアーマー完成。

アームパーツの変更点。

ビームスピア。
バスターから発現する槍。
見た目はロクゼロ4のペガソルタ・エクレールの電撃槍。
原作よりも格闘能力が向上。
ライト博士の説明通り、エックスはピュンパ斬りが使用可能になった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧