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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第五十六話 Power Plant

 
前書き
何とかダイナモを退けることに成功したルナ達。
 

 
ハンターベースにエックスとルインが戻ってきて、メンテナンスを受けている最中にダイナモがハンターベースに攻めてきたことが知らされた。

エックス「そんなことが…すまない。俺達のうちどちらかが残ってさえいれば…」

ルイン「ルナに感謝しないとね…そのルナはどこにいるの?」

ダグラス「あいつは、エニグマの調整をある程度終わったから“ダチに会いに行く”って言って自分のライドチェイサーでどっか行っちまったよ」

エックス「そうか…」




































ゼロは現在進行形でボルト・クラーケンの元に向かっていた。
研究所は電子回路が剥き出しとなった危険地帯。
鉄製の回路が時折突き出ていて、触れれば確実に感電死するだろう。
ゼロはアディオンを駆りながら、回路の道を疾走していた。

ゼロ「くそ…一体どこの馬鹿だ…こんな面倒な真似させやがって……」

苛立ちながら、更にアディオンを疾走させる。
しばらくすると、回路が剥き出しになっていない場所を発見し、そこにアディオンを停めた。
しばらく全身すると見慣れたカプセルを発見した。
カプセルが起動し、ライト博士のホログラムが現れた。

ライト『ゼロ…君だったか…』

ゼロ「Dr.ライト…また、あなたか…」

自然に、ゼロは口調を丁寧語へと直していた。
普段は上官相手でも絶対に敬語など使わないゼロが、このライト博士が相手だとこうなってしまう。
別に畏敬の念を抱いている訳ではないが、彼と話す際にはこれが1番好ましいとゼロは考慮してしまうのだ。

ライト『そんな、突き放すような言い方はしないでくれ…とは言っても、今回君をパワーアップさせる用意してはいないが…』

ゼロ「それでは、何のためにここに?」

ライト『尤もな質問じゃな…用件は、これじゃ』

そう言って、ライト博士はヘッドパーツの映像を出した。
それは、ゼロも何度か見覚えのある物だ。

ゼロ「エックスのパワーアップパーツ…?」

ライト『このカプセルではファルコンアーマーのヘッドパーツのプログラムを君に預ける。このヘッドパーツは敵から入手した特殊武器を使用する際に生じるエネルギー消費を通常、チャージ共に大幅に抑える事が出来る。この力で敵の特殊武器の使用制限の上限が飛躍的に増す事になる。』

ゼロ「(成る程な…)」

レプリフォース大戦で得たオリジナルフォースアーマーは通常の特殊武器の使用こそ無制限というメリットがあったが、チャージ攻撃を繰り出すと直ぐにエネルギー切れを起こすデメリットがあった。
通常、チャージの特殊武器のエネルギー消費の軽減するこのヘッドパーツは以前のヘッドパーツより使い勝手がいいかもしれない。

ライト『エイリアとアイリスという娘達にプログラムを解析してもらって開発して欲しい。ルインのオーバードライブのパーツファイルと共に』

ゼロ「…分かりました。パーツファイルを受け取りましょう。それと……」

ライト『?』

ゼロが何かを言いたそうに口をつぐむと、ライト博士は怪訝そうに表情を歪める。

ゼロ「俺から質問させてもらってもよろしいでしょうか…?」

ライト『別に構わないが…どうかしたのかね?』

ゼロ「…思い返せば、あのカウンターハンター事件の直後からでした。あの夢を見るようになったのは…」

ライト『夢?こう言うのは失礼かもしれないが、レプリロイドがそんなものを見るのかね?』

ゼロ「分からない…だが、あの日以来、スリープモードに入ると、毎回見るんです。全く覚えのないデータが呼び起こされ、その中に老人の博士らしき者が現れる。この博士は…あなたが知っている人ですか…?」

ライト『…老人?』

更にライト博士は眉間の皴を増やす。
思い当たる節があったのだろうか。

ゼロ「彼は俺に、何かその…過剰なまでの期待をもって接してくるんです。後は、断片的にしか覚えてないんですが…“最高傑作”“生きがい”“あいつを破壊しろ”などと言ったような…」

まだまだ続くようだったが、その後の話を、ライト博士はまともに聞いてはいなかった。
何故ならライト博士は、彼自身が恐れていたものが今、現実になろうとしている瀬戸際でないかと推測しているからだった。

ライト『(まさか…ワイリーか!!?)』

確信した訳ではなかった。
だが、恐らく間違いないだろう。
旧世紀のマッドサイエンティストが、かつては互いに認め合った友が、今もなお過去を引きずって、着かないはずの決着に終止符を打とうとしているのだ。
彼はそのためなら、例え世界が滅んでも構わない。
ただ自ら創造した“兵器”である息子を対決させ、勝てればいいのだ。

ライト『(ワイリーよ。お前はとうとう自分が心から愛したロボットにまで…自分の息子にこのようなことを託すなど…)』

かつての友の所業に嘆くライト博士だが、そのことを目の前で悩んでいるゼロに話す気はなかった。
真実は、やはり彼の手で見つけさせるべきだろう。

ゼロ「…どうかしましたか?」

ようやくライト博士の動揺に気付いたゼロが声をあげる。
なるべく平常を装いながら、ライト博士は応対した。

ライト『いや、何でもない。とにかく残念ながら、私はその老人やらについては一切情報を持ち合わせていない。すまないな…恐らく、それは何かのエラーデータのはず……忘れた方がいい…。』

ゼロ「そう…ですか…」

ゼロは酷く傷ついた顔をした。自分の存在意義。
自分の存在そのものが崩れてしまうのではないかという不安が胸中を巣くう。

ゼロ「あなたに会った途端、聞かずにはいられなかった…。あなたは俺のことを知っているような気がして……」

ライト『すまない、何も役に立てなくて…』

ゼロ「いえ…望んでいないので気にしないで欲しい。パーツファイルをエイリアとアイリスに渡しておく。」

ゼロはパーツファイルを受け取ると、踵を返した。
ゼロの姿が見えなくなるとライト博士は重々しげに口を開いた。

ライト『…このままではエックスと彼の戦いが現実の物となるかもしれない……しかしわしではどうすることも出来ない…女神殿なら…どうにか出来るかもしれん』

悔しいが、ゼロの身体は自分にとってはブラックボックスの塊だ。
潜在能力を引き出すことは出来ても仕組みが分からない。
何とか息子と彼の戦いの運命を避けるためにライト博士のカプセルが消え、そしてライト博士の魂は女神の元へ。






































取り残された研究員を救助しながら、ゼロはガードシステムをバスターショットで狙い撃つ。
ガードシステムと連動していた扉が開かれ、奥へと向かう。
アディオンで強行突入してから、このような地獄絵図が絶え間なく続いていた。
もはやガードシステムは侵入者から内部の者を守るシステムではなく、目に付いたまだ者を破壊するだけのシステムと化していた。

ゼロ「(何処にいるクラーケン。まさかイレギュラー化したんじゃないだろうな…)」

そうして中央制御室の前に辿り着いたゼロは扉をZセイバーで破壊しながら内部に突入した。
男はこちらが突入してきたことに驚きの様子を隠せないようだった。

「…何故あなたがここにいるのよ?」

女のような言葉遣いで話す男…ボルト・クラーケンは怪訝そうな顔をしてこちらに問い掛ける。

ゼロ「…どうやら、無事だったようだな……」

自分の心配は取り越し苦労だったと、ゼロは溜め息を吐いた。
そしてクラーケンにこのエネルギー研究所に来た経緯を説明する。

ゼロ「今、スペースコロニー・ユーラシアが地球に向かっている。このままでは地上に激突し、人間もレプリロイドも死滅する。それを阻止するために100年前に建造されたギガ粒子砲・エニグマを稼動させるためのパーツを集めている。その内の一つが、このエネルギー研究所が所有している大容量のエネルギーカートリッジだ」

クラーケン「成る程ね…エネルギーカートリッジを使って、エニグマの出力を上げる気なのね」

ゼロ「分かっているなら話は早い。今すぐエネルギーカートリッジを渡してくれ」

クラーケン「あなた達はいつも強引ね…ハンター辞めてよかったわ。…ガサツになりたくないし。」

ゼロ「…頼む、その口調は苦手なんだ…黙って渡してほしい。状況は分かるだろう?」

クラーケン「そんなもん、いくらでもくれてやるわ…あなたもおめでたいわね。そんなの手に入れたところで…もう、おしまいよ!…レプリロイドは誰もウィルスに侵されて…イ、ィ、イレギュ、ギュギュ…」

突然のクラーケンの豹変をゼロは悔しげに見遣る。

ゼロ「…ウィルスに侵されていたか…今、楽にしてやる。…さらばクラーケン」

エネルギーチャージを終えたバスターショットを構えて、クラーケンにフルチャージショットを放つ。
しかしエネルギー弾は目標に接触する前に消し飛んだ。
クラーケンは全く動いてはいないが、身体中から電撃の膜を纏っていた。

ゼロ「電磁フィールドか…」

これではバスターが効かない。
Zセイバーで攻撃しようにも電磁フィールドの電磁波でダメージを受けてしまう。
トリプルロッドでも結果は同じだろう。

ゼロ「なら…これしかないだろう…Zセイバー、チェーンロッド。」

Zセイバーから鎖状の槍が発現する。
中~遠距離の攻撃に特化した武器、チェーンロッド。

ゼロ「フンッ!!」

勢いよくロッドを振るうと、チェーンが凄まじい勢いで伸びていき、クラーケンの触手を1本切り裂いた。

ゼロ「(奴の攻撃の要はあの触手だ。ならば奴の触手さえ無効果してしまえば…)」

クラーケンが床に下りて、床に電撃を当てようとしているのを見て、チェーンを天井に突き刺し、咄嗟に上に移動する。
床は電気を通しやすい金属であることに気付いていなければまともに電撃を受けていた。

ゼロ「だが、これで電撃を喰らうことは決してない!!」

チェーンロッドを振るいながらトリプルロッドを投擲し、クラーケンの触手を全て無力化した。

ゼロ「これで終わりだ!!」

Zセイバーをバスターショットに嵌め込み、エネルギーチャージ。

ゼロ「ダブルチャージショット!!」

バスターショットから巨大な蒼い砲撃を2発同時に放ち、クラーケンに直撃させる。
クラーケンはしばらくダブルチャージショットに耐えていたが、耐え切れずに吹き飛ばされた。

ゼロ「許せ、クラーケン…真空刃!!」

Zセイバーを抜き、刃を発現させると、勢いよく振るい、風属性の衝撃波をクラーケンに向けて繰り出す。
衝撃波はクラーケンに直撃し、クラーケンの身体を両断した。
真っ二つとなったクラーケンは爆散し、ただの残骸と化した。

ゼロ「…こちら、ゼロ。エネルギーカートリッジの入手に成功した。ただちに帰還する。」

エネルギーカートリッジを入手したゼロはアディオンを停めた場所に戻る。



































そしてライト博士は、不思議な空間にて女神と対面していた。
ここは女神が世界を見守るために作った空間。
ライト博士がこの空間に来れるのは、彼に女神がルインのサポートを頼んだことと、彼が人間という存在を超越した存在だからである。
ライト博士はエックスとゼロの戦いを避けるために女神に頼って来たのだ。
そして女神はと言うと…。

「成る程ね…確かにゼロ君は君の友達だったアルバート・W・ワイリーの造ったレプリロイド…いや、ロボットと言った方が正しいかな…?」

ライト「女神殿…どうにか、あの子達が戦わずに済む方法は無いのでしょうか?」

「…難しいところだろうね……元々、今のゼロ君の人格はシグマウィルスの原型とも言えるロボット破壊プログラムにゼロ君本人が感染して生まれた言わば擬似人格。擬似人格と本来の人格…どっちが優位なのか…頭のいい君なら分かるんじゃない?」

ライト「し、しかし…エックスにとって彼は親友なのです…。わしは…これからも彼等にはよき関係を築いて貰いたい…」

親である自分達には出来なかったことをせめて子である彼等には…。

「まあ、ルインちゃんの先輩だし、あの子のお得意様だから助けない訳にはいかないよね」

ライト「あの子…とは?」

「ルインちゃんと同じ。転生者だよ。あの子も本来なら死ぬはずの命じゃなかった。生まれつき体がとても弱くて、生きるために心臓にペースメーカーを埋められて、何度も大きな手術をしないといけないような身体だったけど…」

空間に映像を映す。
それはハーネットカスタムを駆るルナの姿。

ライト「どうなされた?女神殿?」

「運が悪かったんだろうね…手術の最中に起こった主治医のミス…それだけであの子は死んでしまった。たった11歳の女の子がだよ?外を動き回ることも出来ず、友達もいない。話し相手は家族くらい。あの子だってもっともっと生きたかったはずなんだ。友達と遊んで、勉強したりして…」

ルナを見つめる女神の表情は悲しげであった。

「神の私が思い入れをしてはいけないんだって分かってるんだけどね…」

ライト「女神殿…」

「まあ、とにかく…ゼロ君に関してはロボット破壊プログラムとワイリーがゼロ君に仕込んだデータを封印しちゃえばOKだよ。最終的にはワイリーを何とかしないといけないけど」

ライト「そうですか…」

その言葉はワイリーの存在をこの世から消すということになるのだろう。
ライト博士女神に一礼するとかつての友を思い浮かべるのだった。


































~おまけ~

「実はルナちゃんをレプリロイドとして転生はさせたけど、あの子中身は11歳だから、私が一時期、ジャンク屋のおじいさんとしてあの子を育てたんだけど…」

ライト「それで…?」

「ジャンク屋稼業のためか、荒くれ者とばっか会って、イレギュラーハンターの男性型レプリロイド顔負けの戦闘力を身につけて、性格はそこらの男なんか目じゃない。女の子?何それ美味しいの?レベルの男勝りになっちゃって。最終的には俺っ娘街道まっしぐらーーーーーっ!!!!!!」

ライト「め、女神殿…」

頭を抱えて嘆く女神にどうフォローするか悩むライト博士。

「あんなに純真無垢で可愛かったのに……ああ…自分の育児能力の無さに腹が立つ……」

ライト「(いくら女神でも育児能力の有無は関係ないんじゃな……)」

そこでふとライト博士は1つの可能性が頭に浮かぶ。
自分の最後の息子であるエックスは誰に似たのか真面目で実直なレプリロイドである。
しかしそれはケイン博士のような良識人に保護されていたからではないだろうか?
もし、エックスが変人な人物に保護されていたら…女神に見せてもらった何処ぞの並行世界の息子の模造品のようになっていたのだろうか…?
そこまで考えて戦慄を覚えた。
ライト博士はエックスを見つけてくれたのがケイン博士でよかったと胸を撫で下ろした。


































更におまけ

~同族嫌悪~

ホーネック「隊長はどうしてサイバー・クジャッカーやボルト・クラーケンが苦手なんですか?」

ゼロ「は?」

ルイン「そうだよねえ、クジャッカーはともかく、クラーケンは優しいよ?」

ゼロ「あいつが優しいのはお前とオクトパルドくらいだ…そうだな…見た目と中身のギャップがな…認識と食い違うのがな……」

エックス「確かに2人共、見た目と中身にギャップがあるよな…」

ホーネック「はあ、つまり…同族嫌悪ですか」

エックス、ルイン「「(言っちゃったーーーーーっ!!!!)」」

ゼロ「アースクラーーーーッシュッッッ!!!!!!」

ホーネック「がはあああああ!!!!?」

アイリス「ホーネックさーーーん!!?」

ケイン「しっかりせんかホーネック!!傷は浅いぞおおお!!」

てめえええっ!!言ってはならねぇことををををっ!!!!


































ルナ「…じゃあ女なのに男口調の俺は?」

ゼロ「違和感がないから平気だ。」

ルナ「少し複雑だぜ…」

エイリア「ライフセーバー、怪我人1人お願い」

ライフセーバー「りょ、了解しました…(よく平然としていられるな…)」 
 

 
後書き
エネルギーカートリッジ入手。
特殊武器・必殺技入手。

ゼロ必殺技

電刃

原作に準ずる。

エックス特殊武器

トライサンダー

原作に準ずる。

ルイン特殊武器

トライサンダー

性能はエックスに準ずる。
チャージ不可。

ルイン必殺技

電刃

性能はゼロに準ずる。 
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