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まむしマンの時間

作者:ネアンデルタール家元


まむしマンを裏で操っていたのはお前か!」
「人助けの何が悪い?」

彼岸花の咲く山道で男が口論している。喧嘩を売ったのは泥っぽいジャージ姿の老人だ。手に鍬を持っており虫刺され痕が発疹している。
買った側は中年でダイヤモンド付きのネクタイピンを着けている。

「中川忠兵衛が迷惑がってたぞ!」
老人が睨みつけた。
「80を超えて運転なんかさせちゃ駄目だろ。墓石を蹴り倒したりしたら大変だ」
「だったらせめて納骨が済むまでやめて欲しかったな!」
「聞いた話だが息子の忠吉が寺の尼僧と不倫してたってよ」
「それでまむしマンをけしかけたのか?」
「だから世のため人のためだと言ってる」
「まむしマンは子供たちのヒーローだぞ!」

穏やかでない話だ。まむしマン本人でなくやらかした責任を上司にねじ込むとは相応の実力者なのだろう。
中川忠兵衛という男は高齢ドライバーであるらしく来るまで泣く補助具で歩んでいる、しかし蹴り倒すというフレーズが出てくるので自動車ではない。
息子も息子で大概な人物みたいで、ヒーローの上司も看過できない模様。
それでも大人の色恋沙汰に引っ張り出されるなんてまむしマンも不憫だ。

そんな風に悩んでいると、「うるさいわね!うるさいわ!それでも仕事なの?あなたなんて大した出世もできないわ!ここの連中はみんなそうと思ってるのよ!」と怒鳴り散らされた。

そして最近は仕事の手を休めず、山の中を徘徊している。
子供たちと遊んでいるのか?と勘違いする者もいる。
「お母さんって偉いの?」「お母さんの前でいつも偉そうなんだよね」
「お母さんが偉い?お父さんはそんなふうにいつもいる?」
「いつもいるよ。お父さんは仕事だから遅れるのが遅くなるんだよ」
「そっかあ、お母さんには早く帰ってきて欲しいな。お父さんはお父さんだから遅くなる心配もないし。早く帰りてー」
それから、「お父さんの仕事ってすごい?」「お父さんは何て言う仕事?」
「いつも朝が早いよ。何もしていないようで何もやっていない」
こんな風に親とは思えない態度を取る。
「でも、お父さんもお母さんも優しいから、そんなのいつものことでしょ?」と返した。

そんな会話を耳にした時、自分がどれだけひどい父親なのかがよく理解できた。
お前はもっと優しい父親だった、そう思わずにはいられない。
そういう父親として接することができるのが幸せである。



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タイトル更新日時
まむしマンの時間 2021年 09月 07日 08時 26分 

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