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カメレオンの解凍

作者:ネアンデルタール家元


世を騒がせた怪盗が行方をくらまして歳月が過ぎた。そいつは大泥棒という程のスケールでもなくどちらかというと小悪だ。パッチワーク怪盗という仇名がマスコミによってつけられている通り名画や美術品の一部を切り取る。そんな手口だから損害が計り知れない。所蔵者にしてみれば丸ごと盗まれた方が幸いだ。警察は大捜査線を敷いて犯人を追い詰めたが取り逃がした。忽然と消えてしまったのだ。当局は威信をかけて一帯のローラー作戦を展開したが虱潰しに探しても見つからなかった。海外に逃亡した形跡もなく匿っていると思われる関係者を次から次へと摘発してみたが全員がシロだった。足取りや遺留品も途絶えており警察犬の追跡も途中で失敗した。そのうち死んでいるのではないかという噂が流れはじめネットで見かけたという証言が相次いで警察が捜査してみたがガセネタや見間違いだった。やがて怪盗の死亡が定説になりこんどは死因について第三者による横取りから政府の関与あげくは宇宙人の仕業まで諸説紛々になった。ところが犯人は意外なところから姿を現す。まだ誰も気づいてないのであるが捜査範囲に病院があった。抗ガン剤やワクチンなどの治験を担う広域病院で犯人も治験者として病床に伏していた。それはカメレオン病の予防薬だった。この病気は体の部分が色々な有名物に似るという奇病で重篤化すると模倣しなければ自我を確立できず死んでしまう。その治験が終わって犯人は動き出した。慢性症状を利用して次から次へと姿を変え街に潜伏している。怪盗は虎視眈々と狙っている。その先に自分にとって都合の良い男を追え。自分は絶対に勝たないと。その男はマスゴミの悪質なコピペだとわかっていても信じ切れないところがあった。彼の前に出ると「お前の考え方は異常だから止めてくれ」とうるさく言った。彼はそれに答えると「そうか」とつぶやき、次の瞬間、彼女は怪盗のそばにいるのかと錯覚した。そこへ「あのぉ」と声をかける男の姿があった。「あなたは」
「私のことは怪盗と呼んでくれ」と言った。何の話かと彼女は首をひねった。「そんなに恐れる必要はない。俺は何とかしてお前を取り戻したいんじゃないか」と言われた。そういえばもう忘れていた。「あなたには教えてないからこれだけどね」と言い、自分の頭から消えていたことを思い出した。それからどうなったのか彼女もよくわからない。それからは何もかもが謎のままだった。
「俺は、悪い癖が消えないんだ。俺に教えるべきじゃないんだろうし」
「そんなことないと思うけどな」
彼は少し意地悪げに言った。彼からもマスコミに対する疑心が出ているわけじゃなく、世間に対しての不信感が募っているのか少し強めに言ったつもりだったが、それを受けて彼の心に火がくべたのは確かだった。どうせ何をやってもダメだ、と。
「いや。だから悪い癖が残ってて。どうしても治らない時は見えない穴に入ってしまうんだ」
「わかった。もうそれでいい」
それからもうすぐ日がたって事件は解決するのだ。



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タイトル更新日時
カメレオンの解凍 2021年 09月 01日 11時 15分 

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