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心中天のヤング干渉縞

作者:ネアンデルタール家元


高くそびえる鉄塔、電波塔、展望タワー。あれが火を噴いて飛んでいけばいいのに。幼心に思ったことはないだろうか。人は太古から空にあこがれてきた。時に天は恵みであり頭上の脅威であった。避けようのない不幸は降ってくる。特に雷は荒ぶる神の怒りと罰であった。だから人は神のおわす天空に憧れ畏怖し死んだ人間は高所に昇ると考えた。実際に遺体を焼けば煙り夜は星座が故人を思い起こさせる。やがて文明が進歩し天は届く距離になった。そこに至る努力は万人に克服できるものではないが、まず天を征服するあがきの一歩として人や山に登り、一から人力で高度差を克服せんと建造物を建築した。有名なバベルの塔だ。その試みは神に打ち砕かれたが人は挑戦する生き物だ。懲りずに高度と戦い続けた。マルテンおでん大鉄塔は最新の挑戦状だ。ただし天を衝く能力はない。なぜなら飛ばす仕様になってない。マルテンおでん大鉄塔はおでんの具で世界シェアナンバーワンのマルテン食品が創立マルテン周年を記念した一大プロジェクトだ。標高は千おでんメートル。重さは千億おでんトン。その構造を支える為に新開発した硬化軽量のおでんプラスチックで出来ている。だからよく燃えても火を噴いて飛ぶ前に燃え尽きてしまう。「あーあのタワーを見ていると飛ばしたくなっちゃうのよね」登下校時にしつこく呟いているのは女子高生の開発芽衣子だ。彼女はマルテン食品の令嬢。十五歳にしてノーベル賞候補者である。その開発芽衣子をもってしてもマルテンおでんタワーにロケットエンジンを搭載する事は出来ないだろう。その時には彼女は人類滅亡の年になってしまう。「マルテンタワーの開発は困難な困難なことだったんだよ。だから私は考えに考えたわ」
その日の夜、芽衣子は自分の部屋のテレビの前で寝ていた。彼女が何か呟いたような気がしたが、誰が?
「私は、私は、人類滅亡を知っている。人類滅亡の年には人類は滅亡する。つまり人類は滅亡するしかない、それを知っている。だから人間は滅びる必要があるのよ」



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タイトル更新日時
開発芽衣子のロケット 2021年 08月 31日 19時 30分 

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