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浮気女と首のない間男。

作者:ネアンデルタール家元


エルサレムの街を路面電車がひた走る。ユダヤとアラブ。異なる宗派や人種の街区を縫って文化の橋渡しをする。エルサレムは山あり谷あり。複雑な政治や起伏が激しい感情を象徴するようだ。そんな一角に人材バンクがあった。文字通り人間を預金するのだ。成人一人を預けるとだいたい年利で1%つく。雇用主は自動預け払い機に従業員を放り込んだり降ろす。たまに利子がついて吐き出される。指とか手足がチャリンチャリンと出て来る。人体パーツには使用期限があってすぐ腐ってしまう。だから早めに組み立てないといけない。こうして従業員は勤務先を辞めたり入ったりする。同じ企業を出入りするたびに経験値が溜まる。石油王のハッサンは今日も人材バンクのATMで召使を出金しようとした。すると店のシャッターがガラガラと閉じた。待ち行列の客たちも閉じ込められた。「しまった!これは八方塞がり雪隠詰めだ!」誰かが叫んでパニックになった。人材バンク銀行八方塞がり雪隠詰めとは暗証番号の入力も再発行も一切失敗する。パスワードリマインダーに記録した暗証番号も役に立たない。「システムエラーです」しか表示されない。もう何もやっても八方美人だった。しかし銀行頭取がやってきて試すと何ともないのだ。八方塞がり雪隠詰めとは面妖である。それがこともあろうかハッサンを巻き込んだ。「うわー。ここから出してくれ」八方塞がり雪隠詰めなので誰も店の外に出られない。「誰か助けてくれー」

八方塞がり雪隠詰めがやめない。「おい!」ハッサンはそこまで焦ってない。これでは店がダメになったと騒ぎになる。その時だ。ハッサンは思いっきり頭をぶつけたが、天井にまで大穴が開いてはびくともしなかった。「すいません!すいません!こんないい場所を知ってました」ハッサンは営業する側なので反省しない。誰も謝らない。謝るにも原因が知りたいので謝った。「すみません。すみません。こんな狭い部屋に住んでいいんですか?」「なんの事だよ?あんたが頭をぶつけたのが悪いんだよ」「すいません。すいません」はっきり言うハッサン。「なんの事だよ。そんな事分かってるよ。私はただこの店の金庫に鍵をさして閉じ込めただけだよ」「いいえ。すみません。すみません」「あんたの方が頭をぶつけているじゃん」「すいません。すいません」




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タイトル更新日時
八方塞がり雪隠詰め 2021年 08月 22日 07時 17分 

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