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ランス END ~繰り返しの第二次魔人戦争~

作者:笠福京世
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第一部 GI歴末からLP歴の終わりまで
  第00話 光の神の気まぐれ

 
前書き
ランスⅩおよびランスシリーズ各作品のネタバレを含みます。
基本的にランスXをクリア済みの方に向けて書いています。

序章のラストシーンを00話として先頭に持ってきた。
前日譚に興味がなければ第00話だけ読んで、すぐに第一章の第01話から読んでも大丈夫です。 

 
LP8年1月後半 ヘルマン共和国東部 計画都市ゴーラク

 「リーザスとは話がついています。
  難民はログAの街から全てバラオ山脈経由で、スケールの街に逃がしてください」

 「大隊長、リーザスでは誰に指示を仰げば?」
 
 「……」

 ヘルマンにおける人類軍と魔軍の戦い。雌雄は既に決していた。
 第二軍、第三軍が壊滅。ボドゥ将軍の後を支えたトルストイ副将軍が戦死。
 首都ラング・バウは陥落。ヒューバート総司令官は戦死。シーラ大統領は魔軍に囚われた。

 第一軍のアミトス将軍が、ローゼスグラードを拠点に国民を逃がすため最後の抵抗を続けている。
 第五軍のロレックス将軍は、JAPANの上杉軍と共とに難民の撤退支援を行っていた。
 都市守備隊も同様だ。数多くの名も無き勇将たちが散った。
 今や大隊長の中でも新米に過ぎない若輩の僕が、生き残りでは最高位の士官だ。

 「白の軍エクス将軍の指示に従って下さい」

 「はっ、わかりました」

 開戦から約二ヶ月、11月後半に、まずはAL教の聖地である川中島が陥落。
 クルックー法王が声明を発表したが、全軍の士気に与えた影響は大きかった。

 世界総統の下で一つになった人類だが、開戦当初から劣勢を強いられてきた。
 魔剣カオスの使い手たる総統が、何体かの魔人を倒し、捕らえ、仲間にはした。

 しかし、それだけでは各国の戦況を覆すには至らなかった。
 12月前半にはヘルマン、ゼスの両国の総兵力が十万を割った。
 人類軍は危機的状況に陥っていた。 

 精鋭である魔人討伐隊の力を以てしても、ひと月に倒せる魔人は1体か2体が限度。
 ヘルマン、リーザス、ゼス、自由都市の全ての国を守るのは不可能に思えた。

 自由都市CITYにある人類軍の総司令部は、非常の決断を下したのだろう。
 その後はリーザス、自由都市に支援を注力するようになった。
 ヘルマンとゼスの国民は、大陸東部への避難勧告が発令された。

 「第一軍、第五軍がリーザスに撤退した後は、生き残った将軍の指揮下に……」

 途中で口をつぐむ。果たして生き残る将軍はいるのだろうか……。
 ヘルマンで魔軍が行っているのは、民間人の計画的な大虐殺だ。
 魔軍は村や街を包囲し、住民を逃げられなくした上で焼き払っている。
 だからこそアミトス将軍もロレックス将軍も最後まで残って抗っているのだ。
 一人でも、一人でも多くのヘルマンの民を逃がすために……。

 「いや、もうヘルマンという国はありません。
  戦うのであれば、それぞれの意志で人類軍の指揮下に入ってください」

 「大隊長……」

 その人類軍も総司令部をJAPANへと移している。

 最初に滅んだ大国は、100万もの魔軍に攻められたゼスだった。
 年明けに臨時首都が陥落し、国王代理のマジック王女は魔軍に捕まった。
 四天王、四将軍の生き残りはゼス軍をまとめ、CITYにある人類軍の総司令部に合流した。
 
 それにより人類軍の本部が、CITYにあることが魔軍にバレたのだろう。
 世界の中心となっていた世界総統の城に各地から集まった魔軍が押し寄せた。
 
 CITYで行われた防衛戦は、人類軍本隊3万と魔軍30万と戦いとなった。
 十倍の兵力差だ。人類軍本隊の精鋭とはいえ、勝てるはずもない。
 魔人レッドアイと戦い怪我を負った総統は、自由都市からJAPANへと逃れた。

 「し、失礼します。第五軍から緊急の連絡がありました」

 「どうした?」

 開戦から誰もが悪い知らせには慣れていた。

 「ローゼスグラードの第三軍が消滅しました」

 「……消滅? 全滅ではなく?」

 「は、はい。詳しいことは分かりません。
  膨大な魔力反応を検知。また魔軍の爆撃隊を目撃しています。
  さらに遠くの街からもピカッと都市が光ったのが見えたそうです」

 「第三軍の守りが失われ、此処に魔軍が押し寄せてくるのは時間の問題か」

 最悪の知らせだ。死者に思いを馳せる暇もない。

 「同様の攻撃を受ける可能性もある……しかし原因を解明する間もないか」

 「けれど都市の放棄はありえません」

 全員が頷く。此処が失われれば、撤退支援を行っている第五軍と上杉軍も壊滅する。
 今やヘルマン軍に残っている者、皆が決死隊だ。何処に逃げても魔軍は追ってくるのだ。

 「最低限の残し、集めた物資は全てリーザスに送ります。
  サムソン警備隊長、中隊を指揮して物資の護衛を任せます」

 「大隊長! 私も残ります!」

 「残りたい気持ちも分かります。しかし、貴方の力は人類の為に使ってください」

 「しかし私は未熟者です!」

 開戦後に入隊したサムソン・マキシモフは、将軍級の実力の持ち主だ。
 修行に明け暮れていたためか、世間知らずで要領も悪い。
 本来であれば都市守備隊のトップを任せたかったが、組織の仕組みなど教える暇も無かった。
 人類軍の本部に、魔人討伐隊の一員として推薦したのだが……。

 「人類には僅かならが、希望はまだ残っています。
  僕は凡人です。生き残っても、さほど力にはなれない。けど貴方は違う」

 ヘルマンが明らかに切り捨てられたときは憤りを覚えた。
 しかし人類軍の総司令部に勤める参謀たちの気持ちが分かる。
 もはや人類は、取捨選択を誤れば、容易に滅びてしまう。

 「未熟だと思うなら、生き残って、その力を生かして下さい。これは命令です」

 「護衛中隊の編成は、生き残り将来性のある者を選びます。
  現在レベルが同じであれば、才能限界値が高いと思われる者を優先して下さい。
  技能についても今は未熟でもセンスのある者がいれば同じように」
 
 半月後――

 ローゼスグラードの第三軍を消滅させたのは、人間破壊爆弾というものらしい。
 ゼス王立博物館に封印されていたものが、魔軍に奪われヘルマンで使用された。
 偶然の産物で出来たものらしく、魔軍が複製できなかったのは幸いだ。

 お陰で連日の爆撃を浴びながらもゴーラクは半月ほど持った。
 その間に第五軍と上杉軍の将軍たちを撤退させることができた。十分な成果だ。
 今やゴーラクは魔軍に完全包囲されている。死の覚悟はできている。

 ただ、自分に少しでも才能があれば違ったのだろうか……。
 この期に及んで、そんなことを考えてしまった。

 「才能限界が、技能レベルがあれば、まだ戦えただろうか」

 「そーのーねーがーいー、かーなーえーよーう」

 他には誰もいないはず部屋に重々しい声が響く。
 突然、周囲がまぶしく光った。
 見ると、その光源を背にした、なんだか変なシルエットがある。

 「な、何者だ!」

 「我が名はG.O.D.なり。光の神である!」
 
 目がちかちかして、まともに見ることができない。

 「いきなり……神様が何用ですか?」

 この世界を運営する神の存在は疑いようがない。
 しかし神は人間という種を贔屓しているわけではないのだ。
 AL教の崇める女神ALICEでさえ、この惨事に奇跡の一つも起こしていない。

 「貴様のその願いを叶えよう。我の像を守った褒美だ」

 あ、思い出した。変なシルエットに見覚えがある。
 魔物に殺されようしていた神官が盾にした黄金像だ。

 「あの神官は、我を模した像を盾にしたが、貴様は我を守った」

 いや、咄嗟に飛び出したのは神官を守るためだったのだが……それは言わないでおこう。

 「それなら魔軍を、魔人を、魔王を滅ぼして下さい!」

 「それはできん」

 「光の神は、魔王より弱いんですか?」

 「我は一級神ぞ。魔王なんぞよりも強いし、偉いのだ」

 「だったら!」

 「駄目だ。怒られる」

 「誰にですか!?」

 「ごほっん、世界には理がある。それを運営たる神が乱すわけにはいかん」

 「けど、今さら力を貰っても、どうしようもない!」

 「分かっておる。ならばこそ何時に再び人生をやり直すチャンスを与えよう」

 「どういうことですか?」

 「才能と加護を与える。もう一度、歴史に抗うが良い。忘れるな道を無数にあることを」

 そして僕は大きな光に包まれて意識を失った。


*ゲームデータ*

時系列 ランスⅩ Trun8 ゼス陥落によりJAPANルート Trun9時点でヘルマン、自由都市が滅亡
プレイヤー ランスX初プレイ(ヘルマン、ゼス放棄で焦土作戦とか無理なのか……)

Lv53 サムソン・マキシモフ(雷属性/装甲粉砕攻撃)―魔人討伐軍に推薦したが「男はいらん」とランスが拒否
Lv22 若輩の大隊長(光属性/アナライズ/護身の心得)―オリキャラ(主人公)

●1週目の主人公プロフィール●
 
身長体重 168/61 年齢 19歳(LP07年時点)
レベル / 才能限界 18/23
スキル 剣技0、護身術0、情報0

職業 ヘルマン警備隊員→東部ヘルマン都市守備隊の大隊長(最終)

年が12歳離れた女戦士の姉がいた。
形見である片刃の曲刀(シミター)を大切にしている。
幼少時は姉に似ており、見た目が女みたいだと揶揄われていた。

経歴

GI1003(0歳) ヘルマン共和国、東部の村で生まれる(ランスの五つ下) 
GI1005(2歳) ステッセル・ロマノフがヘルマン国宰相に就任(同年にシーラ誕生)
GI1006(3歳) 15歳の姉が冒険者となり村を出る
GI1009(6歳) 実母が病死。叔母の家に身を寄せる。二つ下の幼馴染と出会う
GI1011(8歳) 姉に連れられてリーザスにある離れ宮島で、鑑定を受け才能の限界を知る
GI1014(11歳) 姉が冒険中に死亡したことを風の便りで知る
GI1015(12歳) 基礎学校卒業。パラパラ砦の攻防で父親(ヘルマン第一軍)が戦死する。同年末に叔母も病死
LP0001(13歳) 幼馴染は姉を頼りに王都ラング・バウに旅立つ。ゴーラク警備隊の見習いとなる
LP0002(14歳) 第7次HZ戦争(ランス3)。国名がへルマン共和国からヘルマン帝国に改められる
LP0004(16歳) 大規模な黒死病が発生。正式に警備隊の下士官(小隊長)として採用される
LP0006(18歳) パットン率いる革命軍が蜂起、ラボリを占拠する(ランス9) 
          双子砦で第一軍の宿将レリューコフが敗れた後に混乱する東部ヘルマンの治安維持に励む
          主計長として後方支援の中隊を任される
LP0007(19歳) ヘルマン共和国軍の都市守備隊に配属、大隊長(士官候補)に任命される
LP0008(20歳) ヘルマン崩壊後には都市守備隊を最後まで指揮し、難民と友軍をリーザスに逃した
          ゴーラクは魔軍に包囲され焼失し、地図から消えた。記録では戦死 
 

 
後書き
これって神様転生ものなのか?

序章の残りは00話までに至る過去話です。
開戦前から人類滅亡エンドまでの鬱展開なので、嫌いな人は飛ばして第一章から呼んでもOK。
たぶんランスⅩが駄目って人は一週目で、色々と詰んで止めちゃってる気がする。
 
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