宇宙の魔女

作者: 000777000
ページ下へ移動
 
宇宙の魔女 第一話 『魔女の胎動』 あの時、私はあの人に銃を向けた。 あの時、あの人は私を撃った。 そして・・・・私の視界は暗転した。 二人の少女がいる。暗い檻の中。 その少女達には理解できる言葉では無かったが、ここはある恒星間国家の強制収容所の存在する惑星である。 だが、彼女たちは理解せずとも実感していた。ここで自分達は慰み者にされて朽ちていくのだ、と。 そう、父や母、多くの同胞、ジレルの民たちが数多の民に忌避され、弾圧され、この世から消えて行った様に。 「お姉さま」 そう語りかけるのは最早半身と言っても良い、自分の同胞。 そして、最後の二人となった自分の妹のような存在。 「・・・・・・誰か来る」 言われてみれば確かに強固な意志を持った存在がこちらに向かってくる。 何やら罵り声や恐怖や媚び諂う者の不快な心が読める。 そして幼いながらも若干大人びている少女は全く別の何かを、波動と言うモノを感じ取った。 「何かしら・・・・こ・・・・れ?」 ズキン。 「!!」 強烈な頭痛がする。 思わず頭を押さえて古びた囚人用の、汚いベッドから立ち上がり、そのまましゃがみ込んだ。 「い、痛い」 ほんの僅かの間に何かが、思念の渦が自らの記憶を犯していく。 吐き気が、頭痛が、そして眩暈がする。 血の気が引くのが自分でも分かった。 「・・・・様!!・・・・・様!!!・・・・・お姉さま!!!・・・・しっかりして!!!」 傍らの自分より幼い少女が必死で私に縋りつく。 必死に声をかけて、自分の意識を呼び戻そうと、保とうとする年下の少女の声。 だが、更に、別の声が聞こえる。その声の主は少女では無くて大人の女性の声だった。 『・・・・よ・・・・大丈夫・・・・大丈夫なのよ・・・・今はまだ・・・・あの人が助けてくれる』 自分に問いかけられる声。 どこか懐かしい。いや、違う。どこかで聞いた事のある様な声だった。 (あ、あの人?) 幻影と幻聴。 確かに聞こえてきた。確かに見えた。 女の姿。長い自分と同じ色の髪を後ろで束ねた女の声。女の姿。 『あの人がいる・・・・・そして、貴女は私。私は貴女』 女は続ける。 ゆっくりと。 しっかりと。 (?) 必死に意識を保とうとする彼女に、少女に問いかける夢幻の如き女性。 『私は勘違いしていた・・・・あの人には私が必要だったのではないの。私にあの人が必要なのよ』 撫でられた。 確かに感じる温もり。 おかしな話であろう。ここには妹の彼女と自分以外いない存在しない。 ジレルの民自体が既にもう私たち二人だけでしかいないのに、その私に思念を送れる同胞が居たのだろうか? (貴女は誰なの!?) 思わず思念波をぶつけるが、誰にも反射してこない。 そんな中、彼女の意識は再び暗い闇の中に引きずり込まれていく。 『暗い闇の中、私たちは救われた。だから、貴女もあの人を救うの。私の代わりに』 (あの・・・・人? 救う?) それから数分だろう。 彼女は目を覚ました。そして飛び込んでくる妹。彼女を受けとめる。 (あれは・・・・一体・・・・私は・・・・いえ、テロンの戦艦で・・・・死んだはず・・・・違う・・・・私はミレーネルと一緒に・・・・何? この記憶は? ヤ・・・マ・・・ト?) 泣きじゃくる妹分を抱えながら、その長い髪を撫でながら。 思いを馳せる。 思いを描く。 一人の少女。 「お姉さま! お姉さま!! お姉さま!!!」 泣きじゃくる少女を慰める少女。 「ミレーネル・・・・大丈夫・・・・大丈夫よ」 頭を抱える幼い少女。私の唯一の話し相手にして、最後の同胞。 その間にも心に響く思念の波。 『私はあの人の隣に立てなかった・・・・でも、それは決して私があの女に劣った訳では無い筈。 だから私は私の全てを託す。貴女に。私に。ミーゼラ、貴女に私の全てを』 思考の残滓が消えていく中で、ガミラス帝国高級官僚の服を着た女性は思う。 そして彼女は再び出会った。 明らかに軍靴の音。それも複数であり、一直線に迷いなく向かってくる思念と兵士らの行軍する音に怯えるミレーネル。 そんな彼女を安堵させる様に抱きかかえていた姉の様な少女はふと、音が止まったのを確認した。 そしてゆったりと、彼女は扉の前に立つ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・数瞬の時が経過した後、自分達と外の世界を区切っていた扉が開いた。 金髪の青い肌をした、灰色の軍服を着用した男の姿が、恒星の光の逆光と共に、現れた。 知らず知らずのうちに笑みが浮かんだ。 (そうだ・・・・・この人が・・・・・私の・・・・・) 少女は徐に切り出す。 それが、それこそが最も正しく、正鵠なる答えであると信じて。 「・・・・・・お待ちしておりました。総統閣下」 少女に似つかわしくない冷徹の様な声であり、名乗っていない男に対して断定的な口調。 男が一瞬だが訝しげな顔をして、そして不敵に笑った。 幾人かの兵士らが銃口を向けようとしていたが、それを制して男は問う。 「ほう・・・・・待っていた、総統閣下、か。中々洒落た事を言うお嬢さんだね? 私が誰だか知っているのかな?」 選抜した自立思考型AIの兵士数名に囲まれた自分達とは異なる青い肌に金色の髪をした男性は聞く。 この年端もいかぬ少女に対して。 『私は誰だ?』 と。 少女は答える。 「存じております」 断言して。 答えてみたまえ、と、無言で彼女に話を振った。 彼女たちの耳にも散発的な銃声が聞こえていたが、目の前の少女は頭痛と何故か流れる涙を堪えながら言った。 「貴方はデスラー。アベルト・デスラー。大ガミラス永世総統にして・・・・私の・・・・」 そこで彼女はミレーネルから離れて、彼の前に歩み寄ると片膝をついて、右手を胸に当てて跪いた。 束ねていない青紫に近い髪がゆらゆらと重力に惹かれる。 その様を興味気に、面白がって見るアベルト・デスラーと呼ばれた男。 「私の・・・・何かな?」 警戒する事も忘れて唖然としている妹同然のミレーネル・リンケを背中に、彼女、ミーゼラ・セレステラは言う。 「私の全て・・・・そう、貴方は私の全てです、イルン・フュゼロン。ガーレ・アベルト・デスラー」 地球人が西暦と呼ぶ2160年代、彼女らを制しているデスラー暦にしても70年代、こうして一人の女性は今再び機会を得た。 彼女が、欲してやまず、そして終に手にすることが出来なかったモノ。 それを手に入れられるかどうかは、誰にもわからない。 ミーゼラ・セレステレはアベルト・デスラーに『再会』した。 次回予告。 アベルト・デスラーの叔父は死ぬ。彼の残した国家を引き継いだアベルトは大規模な政治改革を行い、守旧派を弾圧して新国家体制創設に乗り出す。 その傍らには心を読めるというジレルの民の生き残りがいると、噂されている。それから幾年。 『君の言う新設される宣伝省とこの間の愚か者がいた情報省を任せようと思うがどうだろう?』 デスラーが彼女に命じる中で。セレステラは手を打つ。 かつてのテロン人との戦いにて失った、否、初めから存在しなかった『愛』を手に入れる為に。 「要件? 総統閣下の信頼厚いお嬢さんがこんな時間に私に何の用かね?」 それは意外な選択肢。 第二話 『魔女の策謀』
 
シリーズ情報が追加されていません。
このシリーズは現在準備中の可能性があります。
ページ上へ戻る