銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(旧版)

レビュー

  • 所謂、「時間遡行」ものの変異型といえる作品。
    主人公である「遡行者」が過去の自分に戻ったととるか、別の並行世界の自分になっていると解釈するかで意味合いが変わってくる。前者の場合は原作世界の「別解釈」で後者の場合は「再構築」といえる。その当たりは著者は明確にしていないので読者が解釈するしかない。
    ただし遡行者的の体感的には過去のやり直しを「別の形」で作品世界を追体験していることになり、どちらのケースであっても主人公は大局に関与できていない為にさして違いのあるものはない。

    作者の作風的に「別解釈」であれ、「再構築」であれ、ストーリーの本筋を大胆に改編するタイプの作品ではないため例えば、ラインハルトが途中退場するか、同盟が勝利する的なものを期待する読者にはお勧めできかねる作品であり、それを許容できるのであれば良作といえる作品である。

    その意味で読者を選ぶ作品である。