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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
22.Jury・Night:『Howler in the Dark』U
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きてくれる。
 天にアルクトゥルスが瞬いても、起きるのは至難であろう。

「――――先輩、嚆矢先輩」
「んあ〜、寝かせてくれよ……飾利ちゃん……」
「もう、先輩! 今、出てきたばっかりじゃないですか!」

 ゆさゆさと揺られ、仕方無く頭を上げる。目の前には、飾利の顔。少し怒ったような、いつもと変わらない表情。

「夜更かしなんてするからですよ、何をしてたのかは知りませんけど……風紀委員の活動に支障を来すような事は、慎んでくださいね」

 真顔で、本当に、『何も知らない』顔で。苦言を呈した彼女。

――『忘却』は、上手く機能してるみたいだな。ああ、そう。少し、空しいけれども。彼女の心の平穏の為だ。

「うぐぅ……ぐうの音も出ない」

 おどけながら、胸を押さえる。微かに感じた痛み、それを紛らわせる為に。
 『忘れられた』痛み、その空虚。最早、取り戻しようもないモノを。

「それじゃあ、昨日はデスクワークだったから、今日は外回りですね」
「うい、行きますか」

 言われるより早く支度を整え、扉に向かう。勿論、扉を開けて待つ為に。レディーファーストは嚆矢の基本概念。今更、違える事はない。

「ありがとうございます、先輩」
「なんの、これしき。しかし、暑いな。今日も」
「そうですね。何だか――――」

 日盛りに歩き出し、振り返って笑う彼女。朗らかに、何も知らない笑顔で。彼の見たかった、笑顔のままで。

「――――何だか、駅前のベニーズのパフェでも食べたくなっちゃいますね」

 今日も今日で、最高気温更新。茹だるように暑く、辟易する程に蒸した、降水なし、夜まで真夏日のその日。

「ハハ……御安い、御用さ」

 予定調和のように、一日が過ぎるのか――――…………
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