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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十五話  弔悼
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宇宙歴 796年 10月 10日  ハイネセン  マリア・クランベルツ



「随分と顔を見なかったな」
「そうですね、不思議と懐かしいです」
「不思議と? 相変らず口の悪い男だ。少し遅かったのではないか?」
「途中、ウルヴァシーに寄って来ましたので」
「なるほど、ウルヴァシーか」

ヴァレンシュタイン委員長とレムシャイド伯が話している、使用しているのは帝国語だ。二人とも緊張感は無い、和やかに話ながらゆったりとソファーに座っている。部屋には他に私とバセット大尉がいる。人払いをされるかと思ったがされなかった。こちらから遠慮しようとしたが無用だと止められた。帰国後の表敬訪問、そういう事なのだろう。私達は自分のデスクで作業をしている。

「フェザーンは如何であったかな?」
「独立を喜んでいますね、それと現状を喜んでいます」
「まあそうであろうな」
レムシャイド伯が面白くなさそうな表情をした。ヴァレンシュタイン委員長がクスッと笑った。伯爵が更に面白くなさそうな表情をする。

「反乱の鎮圧は可能かとペイワード主席が訊いて来ました。半年も有れば鎮圧するだろうと答えたのですが面白くなさそうな表情をしましたよ。今の伯爵と同じような反応でしたね」
「……」
委員長が揶揄するとレムシャイド伯が苦笑を浮かべた。

「帝国軍の準備は如何なのです? 順調なのですか?」
「要塞の改修は順調のようだ、もうすぐ終わるだろう。シャフト技術大将も必死の様だな。失敗すれば出世どころか命を失いかねん」
チラッと隣に座るバセット大尉を見た。大尉は表情を変える事無く作業をしている。

「では後は運用試験ですか」
「そういう事になる。しかし本当に上手く行くのか、あれが。未だに半信半疑なのだが……」
レムシャイド伯が首を傾げるとヴァレンシュタイン委員長が頷いた。
「上手く行って欲しいですね。幸い帝国の宇宙艦隊にはミューゼル大将を始め準備に手を抜く人物はいません。上手く行く事を信じましょう」
「そうであって欲しいものだ」
レムシャイド伯が自分を納得させるかのように頷いた。

少しの間会話が途切れた。二人とも飲み物を黙って飲んでいる。レムシャイド伯は紅茶、諮問委員長はココア、部屋にはココアの甘い香りが漂っている。
「先日、グリーンヒル外交委員長が訪ねてきた」
「……」
「反乱鎮圧時には同盟からも艦隊を出したいという事であった」
またバセット大尉を見た。表情を変えてはいないが驚いているだろう、あの時は人払いされたため私達は会談の内容を知らなかった。まさか反乱の鎮圧に協力とは……。

「国内対策という面が有るようですね。帝国側が反乱鎮圧のために動いている様子が見えないという事も有りますが結構煩く騒ぐ人間がいるようです」
「そ
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