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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十四話 名剣か魔剣か 
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発注が激減した、その分を商船で補おうとしていた。ところがあの反乱でその計算が狂った、このままでは造船業界は二進も三進も行かなくなります。直ぐに倒産という事は無いでしょうが悲鳴を上げるのはそんな先の事じゃない。半年以内に鎮圧すると言ってますが造船業界にとっては我慢出来るギリギリの線でしょう」
バーバー委員の言葉に皆が顔を顰めました。

「造船業界だけじゃありませんよ。軍需産業は軒並み頭を痛めています。反乱が鎮圧されるまで要塞の建設は延期です。企業には現時点では建設は危険だからと国防委員会と軍は言っていますが内実は固定要塞にするか移動要塞にするかを決めかねているんです。結果が出るのは半年先です、それまでは何も出来ません。精々設計図を弄るくらいです。……全く、余計な事をしてくれました。絞め殺してやりたいですよ」
デロリアン委員がぼやきました。

「冗談抜きで委員長の現役復帰、有るんじゃないんですか?」
クライ委員が皆を見回しました。反乱が起きた直後から経済界からはヴァレンシュタイン委員長を現役復帰させてイゼルローン要塞を攻略させろという意見が出ました。理由はバーバー委員、デロリアン委員の言った通りです。最近では同盟議会からもそういう意見が出ています。こちらは反乱鎮圧によってイゼルローン要塞を同盟の物にしてしまおうという意図が有ります。

「しかしね、帝国軍が実施する作戦は委員長が考えたものだよ。それに攻略したって同盟の物には出来ないだろう。そんな事をしたら戦争になる。和平どころじゃない、意味が無いよ」
「要塞を攻略するためじゃありません。皆を落ち着かせるためですよ、リード委員。このまま何もしなければ無為に手をこまねいている、そう思われかねません。政府にとっては避けたい事態でしょう」
彼方此方から“なるほど”、“そうかもしれない”と同意する声が上がりました。確かに、政治家達が考えそうなことでは有ります。

「経済界からの突き上げは結構激しいらしいね」
「それだけ経済界は帝国との通商に関心を持っているんです。何と言っても二百億を超える市場ですよ、同盟よりも二倍近く大きい市場なんです。眼の色も変わりますよ」
「経済界の中にはもっと早く和平を結ぶべきだったと言っている人もいます。しかもそれが咎められる事も無い。つい先日までは皆が打倒帝国と叫んでいたんですけどね、変われば変わるものですよ」

ノエルベーカー委員の問い掛けにパール委員、バーバー委員が答えるとフーバー委員が“お金って怖いですね”と呟きました。同感です、お金が絡むと主義主張なんて何処かに吹っ飛んじゃうんですから。皆も同じ思いなのでしょう、神妙な表情です。

トントンとドアを叩く音が聞こえました。皆がドアに視線を向けます、私がドアに向かいました。最年少ですしドアに比較的近い場所
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