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【短編集】現実だってファンタジー
P.T.M
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ートへ容易に復帰することが出来る―――そう内心でほくそ笑んだ彼女のしたり顔がすぐさま凍りつく。

(なっ・・・)
(何っ!?)
((同じコース・・・ッ!?))

 ≪0,04秒経過≫

寸分狂わずに同じルート―――つまり外角に踏み出したその方向には、今まさに曲がり角を彼女と同じ方法で曲がろうとした少年の姿があったのだ。一瞬目が合うが、その双眸は驚愕に見開かれている。推測だが、恐らく向こうから見たこちらもそれと同じ顔をしているだろう。

これは不味い事になった。判断ミスだ。それは人間同士が咄嗟に起こすシンクロニズムであり、今という環境下でなければカバーすることも可能な現象だった。しかし、今この状況下においてこれは非常に危険な状況と言える。もしもこれが通常歩行時に起きた現象ならば、こちらが止まるか向こうが止まるのを待つことが当然として可能だ。だが既に避けるための方向転換まで行った彼女たちはかなり姿勢的、慣性的な余裕が殆ど存在しない。恐らく接触を避けるために行なえるアクションはあと―――たった一度しか行えないだろう。

その事実は、彼女の予想通り相手方、つまり彼も察していた。

だがここで大きな問題が生じる。もう一刻の猶予もないこの状況下で咄嗟に行なえるアクションは、ごく限られている。つまり両者の次に行うアクションの選択の幅は非常に狭い。これが何を意味するか、察しの良い彼は既に気付いていた。
すなわち、彼の彼女が次に行う行動がブッキングし、再度衝突の道筋に互いが飛び込んでしまう可能性が非常に高くなっている。もしもそうなれば、正面衝突は必至。彼も彼女も加速そのまま互いに互いの運動エネルギーをぶつけあい、無様にもコンクリートで舗装された道端に這いつくばることになるだろう。

そのような醜態を彼は晒したくないし、衝突によって相手方と口喧嘩になる可能性とてある。何より転んでズボンに穴でも空いたらクラスの笑いものだ。だが、もう既に考えなしの咄嗟の行動で失敗の許される選択肢を棒に振った。次にして最後の選択を誤れば、それが彼の敗北だ。運命の女神へ(こうべ)を垂れる行為だ。

だから次に取る行動を、絶対に彼女と同じものにしてはならない。可能性の分岐、未知なる選択肢の開拓、広漠たる大地に落とす一つの種子。今、それを生み出すのだ。

(どうする?向こうは何をする?)
(これ以上左には曲がるスペースがない)
(かといって右も既に曲がれる角度ではない)
(ガードレールを蹴って方向転換を・・・だめだ、角度が足りない)
(ステップで強引に方向転換を・・・無理だな、転換ロスの間に衝突する)
(すれ違いざまに相手を掴んでいなせば・・・いや、駄目だ)
(遠心力でどちらかがレールにぶつかる。最悪、バランスを崩して両方・・・)
(更に姿勢を落と
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