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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第一節 前兆 第三話
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のデスクではないことに、ほっと胸を撫で下ろす。慌ててデスクまで走りより、データをセーブ、IDカードを抜き取ってクライアントに残っているデータがないか調べる。ゴミ箱を空にして、履歴を消去。これで問題はない筈と、席を立った。
 大慌てで、荷物をまとめ、図書館を後にする。
 図書館を出ると真っすぐに家に帰った。
 早く終わればメイリンに連絡して一緒にクレープでも食べようなどと思っていたことは、全く頭から消えていた。どこかに寄ろうなどという気持ちは一切起きなくなっていた。そんなことも思い出さなくなるほど、慌てていたのだ。パニック――とまではいかないまでも、 落ち着きを失っていたのは事実だった。

 家に帰ると、母親が暢気な笑顔を覗かせて、少しだけユィリイの心を和ませてくれた。
「あら、おかえり。メイリンたちと出かけたんじゃなかったの?」
 変わらない日常がそこにはあった。
 つまり、あのティターンズは自分とは関わりのないところの話だったんだ。そう自分で結論付けた。
 そうでなければ、不安ではちきれそうだった。
「ううん、図書館に行ってた」
 怪訝そうな母親に手を振って二階の自室に上がる。無理に作った笑顔を見破られていたのかも知れないが、余計な心配を掛けたくなかった。
 ユィリイの部屋には、二つのコンピュータがある。
 カミーユが作ってくれたスタンドアローンクライアントとワイヤードクライアントだ。普段はワイヤードクライアントを使うユィリイも、今は繋げる気にならなかった。
 スタンドアローンのクライアントにIDカードを差し込み、先ほどのテキストファイルを開く。
「大丈夫……よね?」
 やはり自分で大丈夫だと結論付けてみても、不安は残る。あのティターンズの軍人とこの論文を結びつけるものは何もない。だが、普段現れないティターンズの軍人が図書館に来たこと自体が普通ではなかった。
 市立グリーンノア国際大学は公立大学だからか、あまりリベラル派ともいえず、ユィリイが師事する教授はアースノイドで、有名な歴史学者でもあり、そのゼミの研究生である自分が公安にマークされているとは思えなかった。
 じっと画面を見ていたユィリイは、心の中に溜まったものを吐き出すように、キーボートを叩き始めた。
 それは、不安を忘れるために、一心不乱に書き綴るというのとも違うが、不安がユィリイを突き動かしているのだけは間違いなかった。

「武力を背景に統一をした地球連邦政府とはいえ、宇宙移民が最初からスムーズに進んだ訳ではありませんでした。武力によって押さえつけられた不満は、記念すべき宇宙世紀元年を血で汚す結果になったのです。地球連邦政府官庁専用の島一号型スペースコロニー〈ラプラス〉の惨劇。いわゆる〈ラプラス〉爆破事件です。

 これは分離主義テロ組織によるものと
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