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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第十三話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その7)
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残酷な現実だろう。だが現実を見せない限り彼女は自分が危険だという事に気付かない。
「陛下がグリューネワルト伯爵夫人を愛するのは彼女にはアスカン子爵家のような親族がいないからです。それでも陛下は彼女との間に子供を作ろうとはしない。侯爵夫人、貴女のように傷付く姿を見たくないからです……」

侯爵夫人が呻きながら蹲った。リヒテンラーデ侯がそれを見て口を開いた。
「ここで静かに過ごされよ。ここなら安全に過ごすことが出来る。それこそが陛下の御意志です。……では我らはこれにて……」

屋敷を出ると自然と深呼吸していた。リヒテンラーデ侯も同じように深呼吸している。顔を見合わせて苦笑した。
「これで終わったかの」
「そう思いたいところです」
「良くやってくれた、卿に同行を頼んだのは正解だった」
「もうたくさんです。うんざりですよ、帰りましょう」
地上車に乗るとシートに奥深く腰掛けた。疲れた体に柔らかなシートが心地よかった……。



帝国暦486年 8月18日  オーディン  エーリッヒ・フォン・ブラウンシュバイク



ベーネミュンデ侯爵夫人が死んだ。死んだのは二日前、八月十六日だった。昼を過ぎても侯爵夫人は起きてこなかった。そのことに不審を感じた使用人が寝室に入ると侯爵夫人がベッドで眠っていた。但し、ドレスアップをして呼吸をしていなかった。死因は遅行性の毒を使用した服毒自殺だった。

遺書が有った。フリードリヒ四世に宛てた遺書だった。遺書には愛しているという事、そして春の陽だまりのように忘れ去られるなら、厳しい冬のように覚えていてもらいたいと書いてあった。

リヒテンラーデ侯が皇帝にその事を報告するとフリードリヒ四世は“そうか”と言っただけだった。一体何を思ったのか……、俺には侯爵夫人の気持ちも分からないし、皇帝の想いも分からない。厄介な話だ。

葬儀はごく簡素に行われた。彼女が政府の監視下に置かれていたことは皆が知っている。参列者は少なかった。アスカン子爵、そしてブラウンシュバイク大公一家、リッテンハイム侯一家、リヒテンラーデ侯、ラインハルト……。

妙な話だ、アスカン子爵を除けば皇帝にもっとも近しい人間達が集まった。大公夫人もリッテンハイム侯爵夫人も彼女には悪い感情は持っていなかったらしい。むしろ彼女に罪悪感を感じていたようだ。ルードヴィヒ皇太子が彼女の子を殺さなければ彼女もこんな事にはならなかった、そう思っているのかもしれない。

葬儀が終わるとアスカン子爵はそそくさと立ち去った。関わり合いになりたくない、そんな気持ちがありありと出ていた。彼にとって侯爵夫人は重荷でしかなかったのだろう。噂では侯爵夫人の自殺を知った時、子爵は“これで呪縛から解放される”そう呟いて祝杯を上げたそうだ。気持ちは分かるが侯爵夫人が
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