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王道を走れば:幻想にて
第二章、その2:雨雨、合掌
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 時は昼過ぎ。現代でいう所の時計でいうなれば、分針が一つか二つ回った頃合。午前には青々としていた空は薄らと曇り始め、御面をつけるように表情を隠していく。
 がつがつと鳴り響く軍靴のマーチを耳にしながら、慧卓はぶらりと後方の空を見上げた。どんよりと黒染んだ積乱雲が彼方に泳いでいる。それは夏の微温風に押されて、徐々に慧卓の方へと追い縋るようであった。行軍開始から数日、快晴続きの空は一転、漸くにして悪天候らしい悪天候に見舞われそうである。

「あーあ。ありゃ降るかなあぁ...」
 
 大きな背中を見せていた熊美が、頸だけで振り返る。今は一つの馬に慧卓と熊美、二人で騎乗している形だ。馬は部隊一の大馬を使っているために潰れる心配はない。
 慧卓が軽く雲を指差して続ける。

「あれですよ、あれ!しかも大降りの雲ですよ、真っ黒ですし。あーやだやだ、洗濯物の天敵です」
「天敵?今のご時勢、貴方の家に乾燥機とかあるんじゃないの?」
「そんな金なんかある訳ないでしょ!!バイト掛け持ちでも結構キツキツなんですよ!?」
「あ...御免なさい」

 真剣み溢れる言葉に熊美は気圧され、思わず謝罪の言葉を漏らした。慧卓は表情を一転、晴れやかな太陽を仰ぎ見るように小さく笑顔を浮かべた。

「それに、天日干しの方が良いんです。太陽の匂いが気持ち良いっていうか...ぽかぽかしてて気持ち良いんです」
「分かるぞ!分かるぞその気持ち!」
「アリッサ?」

 隣に馬を合わせたアリッサは瞳をきらきらとさせている。そして僅かに息を荒げるている姿は、まるで興奮しているかのよう。

「カンソウキとかなんとか分からんが、日の下で洗濯物を干したり取り込んだりするというのは、慣れて来ると愉しくなる!」
「アリッサさん...そうですよね、気持ちいですよね!」
「纏まった洗濯物を片付けた時の達成感といったら、好きな奴には分かるものだよな!」
「ですよね!他人の服の趣味とか垣間見れるから、それもそれで愉しいですよね!」
「そうだとも!コーデリア様の下着の匂いとか、色模様とか、本当に素晴らしいんだ!」
(うっわ...)

 ドン引きである。慧卓は露骨に表情を顰めて隣り合わせの変態から顔を離す。アリッサは而してそんな反応などいざ知らず、夢想の中の可憐な乙女の下着模様に心躍らせているようだ。だらしのない口の緩みはほとんど変質者と変わりない。
 熊美はそれ程に驚いていないようだが、それでも口を引き攣らせていた。熊美は話を無理矢理に逸らす。

「ま、まぁ何にせよ、慧卓君。此方でも向こうでも、洗濯事情には些細な差しか無いのよ。まとまって干すのがとても大変とか、種族によって着るものが違うとかね」
「...種族って何です?」
「あら?言ってなかったかしら?この世界の人と
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