暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/EXTRA IN 衛宮士郎
戦う覚悟
[1/12]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
階段を下り、一階へ移ると普段は使われることのない、鎖が万遍無く巻きつかれた用具室の前に立ちふさがるように言峰がいた。言峰がこちらに気付き、視線を向けると、酷く愉快そうに微笑を浮かべ頬を歪ませる。
それに顔を歪ませ、俺は思わず拳を握りしめた。会った当初から変わらぬ神父の異常性を再認させる、全身を舐めるような視線に耐えつつ、意を決して言峰の前に立つ。

「ようこそ、決戦の地へ。扉は一つ、再び校舎に戻れるのも一組。覚悟を決めたのなら闘技場の扉を開こう」

どこか事務的に問いかける言峰は、同じセリフを話す村人Aようなもの。だが、それも今は些細な事。
端末を扉にかざすと、縛っていた鎖のデータが弾け飛び、一つのエレベーターが姿を現す。

「行くぞ。衛宮士郎」

「………………ああ」

アーチャーも実体化すると二人してエレベーターに乗り込む。扉の先は全てを呑みこんでしまうような黒一色で、中の様子が一切窺うことができない。
扉が閉まり、無骨な重苦しい音と共に浮遊感を感じる。エレベーターが動き出したのだ。随分下へ行くようで、脇にある回数表示は狂ったように1から9を行き来していた。回転率の速さから、下りる階層は100や200ではなさそうだ。そして視線を正面に戻すのとほぼ同時にエレベーター内の電気が点き、

「なんだ、逃げずにちゃんと来たんだ。あぁ、そういえば学校でも真面目さが取り柄だったっけ」

決戦の場へと続くエレベーターの中で俺と慎二は薄い壁を隔てて向かい合う。

「……………」

無言の俺に慎二は芝居がかった様に続ける。

「でもさ、学校でも思ってたけど、空気読めないよね、ホント。せっかく僕が忠告してやったのに。悪いけど、君じゃ僕には勝てないよ。どうせ負けるんだからさっさと棄権すればいいのに」

「……………それはできない」

そう。それだけは俺の選択肢の中にはなかった。逃げることは悪いことではないが、これは絶対に逃げてはいけない。

「負けると分かってるのに闘うなんて残酷だよ。僕はそういう不公平さは嫌いなんだよね」

慎二はエレベーターの外、ただひたすら続く闇を眺めながら言う。

「まぁ、相手が誰であれ関係ないか。僕には誰も勝てやしないんだから」

慎二は自分だけを見て、自分を最強と決め込んでいる。本当に聖杯戦争の時の慎二みたいだ。

「井の中の蛙大海を知らずということわざがよくわかるな」

後ろで、腕を組んで黙っていたアーチャーが感心するように頷く。

「おまえ、何が言いたいんだ!」

「なあに、自分の力を過信しているものをみると哀れで仕方ないと思っただけだ」

「ははは!あんたも随分というじゃないか、色男」

腹を抱えて笑うライダー。俺とは違い、どこか楽しんでいるようだ。

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ