第一章
[2]次話
GIVE ME FIVE
もうすぐ卒業だった、三年間の高校生活も長い様であっという間だった。
皆集まってだ、私達はカラオケボックスの中で卒業祝いで歌って食べて騒ぎながら話していた。ついでに言えば飲んでいた。
「終わりね、もうすぐ」
「そうよね」
「入学した時はどうなるかって思ったけれど」
「卒業ね」
「いよいよね」
こう皆で話した、カラオケボックスの中で。
それでだ、一人の娘がこんなことを言った。
「皆高校卒業したらね」
「もうこれでよね」
「お別れね」
「バラバラになるのよね」
私達も彼女の言葉に応えて言った。
「私は大学に進学するし」
「私短大よ」
「私は専門学校」
「私は実家の仕事手伝うわ」
「私大阪に出てアパートに住んでそこで働くのよ」
「私長野の旅館で住み込みよ」
「私地元の企業よ」
本当にそれぞれだった。
「皆バラバラになるね」
「三年間ずっと一緒だったのに」
「もうこれでね」
「お別れよね」
「寂しいわよね」
一人が遂にこの言葉を出した。
「もうこれでお別れかって思うと」
「そうよねえ」
「二度と会えないかもね」
「卒業したらね」
それまで賑やかだったがそれがだった。
急にしんみりとしてきた、皆そうなった。
それで何かどうにもいたたまれない気持ちになってきた、カラオケの歌はまだかかっているのに歌っている娘も歌うのを止めていた。
それでしんみりとした中でどう言っていいのか皆わからなくなってしまった。けれどここで私は今の空気が嫌になって。
思いつきでだ、こう言った。
「卒業記念に面白いことしよう」
「面白いこと?」
「っていうと?」
「うん、バンドとかしない?」
私は皆に言った。
「今ここにいる面子でね」
「ううんと、十二人いるわよ」
一人が今ここにいる面子の数を指で数えてから私に答えた。
「多いわよ」
「バンドをするには」
「そう、かなりね」
「チェッカーズでも七人だったわ」
別の娘が言ってきた。
「七人でもバンドだと多かったでしょ」
「確かに。言われてみると」
私もその娘の言葉にこう答えた。
「多いわね」
「そうでしょ、十二人になると」
「楽器とかどうするの?」
こんな言葉も出て来た。
「十二人だと」
「ギター、ベース、ドラム、キーボード」
ある娘がバンドの楽器をざっと挙げてきた。
「サックスとかもあるけれど」
「十二人って多いわよ」
またこの意見があがった。
「バンドにしては」
「殆ど合唱じゃない?」
ある娘もこんなことを言った。
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