第一話 赤い転校生その十五
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薊は笑ってだ、こう言うのだった。
「先輩も伸子ちゃんもさ」
「ううん、私彼氏いるけれど」
「私も」
二人はこう答える。
「けれどね。もてるかっていうとね」
「あまり」
「いや、彼氏いるなんてさ」
そのことはというのだ、薊にしては。
「いいじゃないか、あたしも欲しいって思ったりさ」
「やっぱり思うのね」
「そうなんですね」
「ああ、思うよ」
実際にそうだというのだ。
「孤児院にいた男連中とは兄弟みたいでさ」
「彼氏かっていうと違うのね」
「また別だったんですね」
「そうなんだよ、まあ孤児院の連中は皆いい奴等でさ」
「仲はよかったのね」
「そうだったんですね」
「そんな漫画にあるみたいな経営が苦しいとかブラックな奴がやってるとかじゃなかったよ」
そうした暗い場所ではなかったというのだ、薊がいた孤児院は。
「別にさ」
「そっちでも楽しかったの?」
朱美は真面目な顔で薊に横須賀での生活について尋ねた。
「皆と楽しく仲良くやれたみたいだけれど」
「食いものにも困らなかったさ、夏も冬も快適に過ごせたしさ」
「いい場所だったのね」
「ずっといてもいいって思ってたよ」
薊にしてもだというのだ、孤児院で一生いてもいいと思っていたというのだ。
「ただ。大学へのスポーツ推薦を考えたらさ」
「八条大学にスムーズに行けるからなのね」
「こっちの高校に転校されたんですね」
「そうなんだよ、院長先生の推薦でさ」
孤児院の院長の助けによってだというのだ。
「こっちに移ったんだよ、孤児院からでも大学に行けるけどさ」
「成程ね」
朱美はそこまで聞いてそのうえで頷いた、そして。
伸子もだ、薊の話をここまで聞いてから彼女に言った。
「孤児院って暗いイメージがありましたけれど」
「孤児院によってさ」
「天枢先輩も楽しく過ごせたんですね」
「あっ、名前でいいよ」
薊でいいというのだ。
「呼び方は」
「じゃあ薊先輩」
「ああ、関東の大学にも行けたけど八条大学のこと聞いてると凄い楽しそうだったからさ」
「色々な学部、学科があって設備も凄いですからね」
伸子もそのことを知っていて言う。
「動物園や植物園もあって」
「いいよな、そうした場所って」
「薊先輩動物園は」
「好きだよ」
一言ではっきりと答えた言葉だ。
「動物はさ、猫も犬もさ」
「あの動物園犬猫のコーナーもありますからね」
「野良犬や野良猫を引き取ってだよな」
「育ててるんです」
「いい場所だよ、時間があったら行ってみるか」
薊はその話を聞いて言った。
「植物園もさ」
「名前が名前だからね」
朱美はにこりと微笑んで薊の名前から指摘した。
「だからかしら」
「薊な、あの花好きだよ」
実際にだと
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