第一話 赤い転校生その九
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「そんな気がするよ」
「そうですか、何かですか」
「燃やしている様な」
「そうした感じがですか」
「しますか」
「気かな」
首を傾げさせつつだ、部長は言うのだった。
「彼女の」
「元気はいいですけれど」
「それですか」
「ただ強いだけじゃないね」
薊から感じられるもの、それはというのだ。
「あの娘はね」
「ううん、どういう奴なんでしょうか」
「何かありますか」
「何でも横須賀の孤児院にいてね」
このことはもう話が伝わっている、彼等の間にも。薊も自分から言っていることなので特に問題なく話すのだった。
「それで進学のこととかもあって」
「それでこっちに転校してきてですか」
「寮に入ってるんですね」
「じゃあ親御さんもおられなくて」
「天涯孤独なんですね」
「暗いものは感じないけれどね」
薊にそれはない、太陽の様に明るい。
「それでもね、何か感じるね」
「部長は気を感じられますからね」
二年の女子部員の一人がこう言ってきた。
「だからですね」
「うん、人間には誰も気があるんだよ」
「気功ですか」
女子部員はここでこれを話に出した、格闘でも大きく関わってくるものであり中国拳法においても達人が使うものだ。
「それですか」
「僕はまだ感じるだけだよ」
部長はこのことは少し残念そうに言った。
「使うまでには至っていないよ」
「それでもですね」
「うん、あの娘の気はね」
それはというと。
「何か違うね。特別なものを感じるよ」
「あいつは確かに強い」
先程手合わせをした副部長も言う。
「その動きが少し違う」
「獣めいているとか?」
「それとはまた違う」
副部長と部長は同学年だ、それでこう言ったのである。
「特別な、あえて何かが入れられたかの様な」
「そうしたものを感じるんだね」
「そこが違う」
こう部長に言うのだった、無論他の部員達にも聞こえる様に。
「そもそもあの七節棍なぞはな」
「あれを使うことは難しいなんてものじゃないよ」
副部長は薊が今まるで蛇の様に、そして己の身体の一部の様に使うその七節棍を見つつ言う。
「三節棍でも尋常じゃないのに」
「少なくとも十代ではな」
「そこまでの技を身に着けることは難しいよ」
到底だというのだ。
「本当にどういう娘だろうね」
「それがわからない」
「いい娘だけれど何かありそうだね」
「うむ」
副部長は自分より幾分背の低い部長の言葉に頷きつつ薊を見ていた。薊は演舞を終えてから額に汗が流れている爽やかな顔で部長に言って来た。
「これでいいですか?」
「あっ、お疲れ様」
「いや、いい汗かかせてもらいました」
「ランニングでもかいているけれどね」
「そうですね、それじゃあ」
「うん、これか
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