第一話 赤い転校生その六
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「おい、届いたよ」
「ほらね、大丈夫だったろ」
「って一体どんだけ肩強いんだよ」
「肩にも自信あるんだよ」
にかりと笑って言う薊だった。
「この通りね」
「最盛期のイチローかよ」
そこまで肩が強いというのだ、イチローは肩も超一流だ。
「しかもコントロールもいいしよ」
「褒めなくていいよ、そこまでね」
「褒めてるんじゃなくて驚いてるんだよ」
薊のあまりもの強肩にだというのだ。
「本当に運動神経がいいんだな」
「そういうことでね」
薊は彼に笑顔で言う、そうしてだった。
女子の方に顔を向ける、皆このことにも驚いていた。
そしてその中でだった、クラスメイトの一人が呆然として周りに言った。
長い茶色がかった髪はふわりとしている、鳶色の目は大きくぱっちりとしている。あどけない顔立ちはまだ幼さが残る童顔だが唇はピンクで小さく鼻の形もいい。色も白く実に整っている。
背は一六〇程で胸が目立つ、青い半ズボンの腰から下のラインも実にいい。その彼女がだ、。
薊のところに来てだ、彼女に問うた。
「あの、天枢さん」
「薊でいいからさ」
最初に言ったことをだ、薊は笑顔で言った。見れば薊は脚は健康的でそこそこな長さで形も整っているが胸はあまり目立たない。その少女と比べると全然違う。
「それで」
「じゃあ薊さん」
「何だい、それで」
「肩強いのならね」
「ああ、それなら?」
「ソフトボール部に入る気ない?」
「ソフトに?」
薊は少女の言葉を聞いて目を少ししばたかせて言った。
「そっちにかい」
「うん、掛け持ちになるけれど」
「三つか、それはちょっとね」
「難しい?」
「拳法とモトクロスはもう決めてるからさ」
その二つはだ、既にだというのだ。
「どっちも真剣にやりたいしね」
「ソフトまではなの」
「余力がさ」
どうかというのだ。
「だからね」
「そうよね、じゃあ」
「悪い、そっちはな」
他をあたってくれというのだ。
「そうしてくれたらな」
「脚と肩が凄いからいいって思ったの」
やはりだそこを見ての言葉だった。
「けれどね」
「それでなんだな」
「私ソフト部なのよ」
「へえ、それでポジションは?」
「キャッチャー」
そこだというのだ。
「けれどキャッチャーって今は私一人なの」
「キャッチャーはいそうでいないんだよな」
そういうポジションである、チームに確かな正捕手がいれば心強いと言われているがそれはそれだけキャッチャーというポジションが得難いということだ。
それでだ、その少女はというのだ。
「もう一人ね」
「欲しいってか」
「私とね」
「つまりあんたが梨田であたしが有田って訳か」
薊は少女の言葉に笑ってこう返した。白い歯が眩しい。
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