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この夏君と・・・・・・
核心へ 1st
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 ――――結局梢は帰ってこなかった。
 俺が夕飯を食べ終わっても、風呂に入っても、まだ帰ってこなかった。
 心配した俺はなんとなく健太に電話をした。健太と話すことで気を紛らわせたかったのだ。
 電話に出た健太は俺の口調に覇気を感じられなかったらしくどうしたのか聞いてきた。

「梢が学校に用があると言っていなくなってから帰ってこないんだ」
「あのお兄ちゃん大好きな梢ちゃんがねえ。よっぽどのことがあったんだね?」
「いや、梢がいなくなる前にしていた話だって夜に夏目と会ったっていうことくらいだし」
「――もしかして学校で?」
「え? あ、ああ。よくわかったな」
「なあカナタ、お前なんかあっただろそこで」

 まさか魔術のことなんて言えるわけないしここはあしらうしかないか。

「別に、特に何も無く少し喋っただけだぞ」

 すると健太は、はあ、とため息をついた。

「そんな嘘すぐわかるぞ」
「な、なんでだよ」
「だってカナタ、嘘を吐くとき必ず声が半音高いんだから」
「…………」
「なーんて冗談。――でも今の沈黙でカナタが嘘を吐いてるってことが分かった」

 ――くそっ。
 昔から健太はこの手の引っ掛けが得意だった。本当に油断ならない奴だ。

「ああカナタ、俺はね、お前がどんなことに遭遇したのか大体分かってるから。それにね、梢ちゃんも気づいてると思うよ」

 絶句した。まさか、梢が魔術を――?

「おい……お前、なんなんだよ。いや、梢もだ! お前らはなんなんだよ!?」
「だから言ったろ。風紀委員なんだよ」
「――――っ!」

 そういうことか、そういうことだったのか。
 風紀委員が守るのは学校の風紀だ。つまり、生徒の風紀を取り締まる委員会ではないということだ。あのよくわかんない人間離れした連中から学校を守ってるということは必然的に守る側も力が無くてはならない。夏目が風紀委員ということは……梢も――



 梢も魔術師、なんだ。



「イカレてやがる。どこに校舎を守る風紀委員なんてあるんだよ――」

 そして梢がそんな委員会の委員長をやっているなんて――。
 馬鹿だ俺。兄貴失格だ。妹のことも全然知らなかったなんて。
 俺の心を見透かしたかのように健太が話しかけてきた。

「お前が梢ちゃんのことを知らなかったのは仕方ないよ、カナタ。梢ちゃんは俺ら風紀委員に緘口令を敷いたんだ。絶対にカナタには秘密にしろってね」
「なんで俺に隠してたんだよあいつ。いつもいつも俺にくっついてくるような奴がなんで俺に隠し事なんてするんだよっ!」
「心配かけたくなかったんだろ、察してやれよ。大好きなお兄ちゃんに自分が魔術師だなんて知られたくなかったんだよ」

 クソッ――いつもへにゃへにゃ笑
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