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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第八話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その2)
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間にはなりたくない。変な特権意識など持ちたくないんだよ、アントン」

思わず苦笑が漏れた。普通の奴なら喜ぶんだけどな。まあでも、こいつは普通じゃないか……。ブラウンシュバイク公爵家は妙な当主を持つことになったな。
「分かった、但し二人だけの時だけだ。俺も新当主の友人である事を故意にひけらかしている等とは周囲に思われたくない」

俺の言葉にエーリッヒは頷いた。
「仕方ないね、お互い窮屈になった。それでどうだった?」
「卿の睨んだ通りだ。グレーザーという宮廷医がベーネミュンデ侯爵夫人の下に時々出入りしていた。手紙を書いたのはグレーザーだ」
「彼と話は出来たのかな?」
「ああ、酷いもんだったよ、あれでは逃げ出したくなるのも良く分かる」

グレーザーの話ではベーネミュンデ侯爵夫人のグリューネワルト伯爵夫人、ミューゼル大将への敵意は尋常ではないのだと言う。ミューゼル大将へ何度か暗殺者を送った事もあるらしい。そして今度は伯爵夫人を身篭らせろと命じた、もちろん皇帝以外の人物とだ。そうすれば、ミューゼル大将も、伯爵夫人も一挙に始末できる。

「しかし、そんな事は不可能だろう?」
エーリッヒが呆れたような声を出した。
「もちろん宮中にいる限りそんな事は出来るわけが無い。だから……」
「だから?」

「伯爵夫人を宮中から追い出せと命じたらしい、それからなら出来るだろうと」
「やれやれだね」
エーリッヒがウンザリした様な口調で首を振った。俺も肩を竦める。

「常軌を逸しているよ、グレーザーは恐怖に駆られて手紙を出した。俺に話した後はホッとしていたよ」
「巻き添えは御免という事か」
「ああ、俺だって同じ事をしただろう」
「卿にそう言わせるとはよっぽどだな」
思わず二人で顔を見合わせ苦笑した。

「エーリッヒ、グレーザーがブラウンシュバイク公爵家の庇護を願っている」
「……」
「俺が思うにグレーザーは限界だな、こちらで保護した方が良いと思う」
エーリッヒは小首を傾げて俺を見ている。はてね、保護には反対か? こいつは弱者には結構甘いんだが……。

「それを決める前に確認したい事が有る。侯爵夫人を煽っている人間はいないかな、私の考えすぎかい、アントン」
なるほど、確かにまだ報告が途中だった。いかんな、これは友人への相談じゃない、主君への報告だ。気を引き締めろ、アントン・フェルナー!

「済まん、順序が逆になった。侯爵夫人を煽っている人間は確かに居る、流石だな」
俺の言葉にエーリッヒは顔を顰めた。
「おだてても何も出ない。……やはり居たか」
「ああ、煽っているのはコルプト子爵だ」
俺の言葉にエーリッヒの顔がますます渋くなった。

「……フレーゲル男爵が居なくなってコルプト子爵が後釜になったか……」
「卿
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