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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二話 没落の始まり
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帝国暦 486年 10月18日    ハイネセン     ヨッフェン・フォン・レムシャイド



何時までもハトホルに仮住まいというわけにも行くまい、という事で新たに事務所兼住居が同盟政府から提供された。名称は大使館に決まった。弁務官府にならなかったのはフェザーンの弁務官府と区別するためと公式に言われているが他にも非公式な理由が有る。

弁務官府には宗主国が植民地に置いた施政の最高機関という意味合いが有るので同盟市民の中から反対する声が上がったのだ。同盟市民にとっては帝国と同盟は対等であり弁務官府では同盟を格下に見ている事になる、そう感じられるらしい。まあ帝国も彼らを反乱軍と呼んでいるのだ、過敏になるのも分からないでは無い。同盟政府はそういう同盟市民の感情を考慮したようだ。この国の主権者が同盟市民だという事がよく分かる。

目の前に四人の男性と一人の女性がいた。いずれも軍服を着ているがこの五人が同盟政府から私に対してスタッフとして提供された。
「小官はアラン・バセット大尉です。閣下の副官、いえ秘書官という事になります。宜しくお願いします」
バセット大尉は穏やかな表情と声の男性だった。三十歳には未だ間が有るだろう。

「他にクリス・ラフォード中尉、ビル・ボーンズ軍曹、ジョン・コート軍曹がスタッフとして閣下のサポートを致します」
三人の男性が軽く頭を下げた。ラフォード中尉は二十代前半、他の二人は三十台の前半から半ばといったところか。

「それとマリア・クランベルツ軍曹、彼女は閣下のお身の周りのお世話をします」
「身の回り?」
クランベルツ軍曹を見た。二十代後半? 三十代の前半だろうか? ふっくらとした頬が印象的な女性が微笑んでいる。美人とは言えないが好感のもてる女性だ、笑顔が良い。

「炊事、洗濯、掃除です、御不自由ではありませんか?」
「なるほど、それは助かる」
「それ以上の事は御二人で話し合ってください。この国は自由の国です、無理強いは許されませんが合意の上なら問題は有りません。ちなみに彼女は戦争未亡人です、子供はいません」
「なるほど」
もう一度彼女を見た、笑みを浮かべたままだ。こういう場合、誘うのが礼儀なのだろうか? 私も独身だから問題は無い筈だが……。

「卿らは軍人のようだが所属は何処かね?」
「我々は情報部防諜課に所属しております」
情報部防諜課? 名称からすればスパイ活動の防止、摘発が仕事だろう。私の監視役というところか……。まあ監視が付くのは当たり前だが帝国との連絡は遣り辛くなるな。

「御心配には及びません。我々は閣下の監視を命じられてはいません。上官からは誠意を以って閣下にお仕えするように、探るような事はするなと言われております」
「妙な事を言う、卿らの上官とは誰かな?」

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