第四章
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第四章
「あの、今」
「だからいいよ」
俺はまた言った。
「付き合うかどうかだよね。俺今フリーだし」
「いいんですか」
「俺と付き合いたいから手紙くれたんだよね」
「はい」
顔を真っ赤にして答える。
「そうですけれど」
「じゃあさ、それでいいよ」
俺はまた言った。
「俺もさ、まさかあんな手紙自分が貰えるとは思えなかったし」
「はあ」
「俺でいいよね、本当に」
「はい」
その言葉にこくりと頷いてくれた。そのことは俺は今でもはっきりと覚えている。
「お願いします」
「うん、俺もお願いするよ」
俺はまた優しい声で言った。
「宜しくね、これから」
「私も」
こうして俺達の交際がはじまった。バンドの方は高校を卒業してからもやっていてこっちはトントン拍子な感じだった。あっという間に東京でのデビューが決まった。
「それ本当!?」
「ああ、本当さ」
はじめて会ったその喫茶店で俺は彼女に話した。
「東京行きが決まったよ」
「そうなの、遂に」
「三曲だな」
俺は強い声で言った。
「三曲売って駄目だったらこっちに変えるつもりだ」
「勝負なのね」
「ああ、絶対にやるぜ」
俺はその三曲で絶対にメジャーになる自信があった。なけりゃ今までやってきやしない。
「だからな。待っててくれよ」
俺は彼女に囁いた。
「武道館でのコンサートは御前も呼ぶからさ」
「絶対よ」
彼女は嬉しさのせいか泣いていた。俺の幸せに泣いてくれていた。
「絶対に呼んでね」
それだけじゃなかったかも知れない。俺のコンサートを東京で見られることを心から喜んでくれていたのかも。今はそう思えたりもする。
「ああ、絶対にだ」
俺は約束した。
「何があってもな」
「うん」
こう約束して俺は東京に旅立った。仲間達と一緒に。最後に俺を送ってくれた彼女の口笛は汽笛みたいだったのを覚えている。その汽笛を聴きながら東京に旅立った。
東京に出て暫くは苦労した。けれどここでも凄い調子で有名になってその武道館でコンサートを開くことになった。それが決まってすぐに彼女に電話した。
「えっ、もうなの」
電話の向こうから俺の歌が聴こえてくる。レコードで聴いてるのがわかる。
「ああ、決まったよ」
俺は明るい声で答えた。
「武道館な」
「凄いじゃない」
「ああ、それでな」
俺はここで言った。
「約束、覚えてるよな」
「ええ」
彼女の返事も明るかった。
「呼んでくれるのよね」
「ああ。それでな」
俺はまた話を出した。
「東京に来るだろ」
「うん」
俺のこの言葉にこくりと頷いてくれた。あの時は本当に嬉しかった。
「そうか。じゃあさ」
俺はさらに言った。
「俺さ、マンション借りたんだ
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