暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第1章 『ネコの手も』
第19話 『今日という日この時からは』
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うと、外はたくさんのメディアが(ひしめ)きあっていたが、彼等が通る通路は別に用意されていて、とくに掻き分けて行く必要はなかった。
 係員が案内されるなか、聞こえてくるのはカツカツと歩く音以外に、嫌でも人の(むせ)び泣く声が耳に入る。兄の手を握るティアナの手はだんだんと握る力を強め、一定しない震えを兄に伝えた。
 少女は両親が『高い所に行った』という意味を深くまで知りはしないものの、この雰囲気で何かを感じ取ったようだ。離れまいとまた一段と力を込める。
 そして、最後の扉を開いたとき、彼女は彼の背後に回りこみ足に抱きついた。
 どこかの施設を借りているため、安置されている場所は広く、そこに規則正しく棺が整列していた。
 本当ならば遺体の搬送先は近くの病院に運ばれるはずであるが、既に入院している患者の配慮から、それは航空会社、病院の合意のもと、取りやめになり現在に至る。
 ティーダは入り口近くで簡易的な手続き――全乗客が書かれているリストにマルをつけること――を済ませ、棺の場所を教わると、妹を優しく(さと)し、促した。
 案内する係員は1人から2人に増え、兄妹を案内する。
 安置所は大きく2つに区画され、1つは『容姿・証明書等から断定』、もう1つは『判断付かず』といった、認識できるモノとできないモノに分けられていた。
 家で確認したところでは既にランスター夫婦の名前が挙げられていたことから、前者のほうへ案内されることは分かっていたのにもかかわらず、ティーダは棺の上におかれた遺留品には目がいかないで、両親の名前をみて愕然(がくぜん)とした。


「…………」


 その間にも案内人の2人は棺の短辺にそれぞれ付き、棺に礼儀正しくお辞儀をする。
 棺の上にぽつんと置かれた銘板(ネームプレート)は『シルフィオ・ランスター ローラ・ランスター』と書かれ、棺が1つ(・・)しかなかった。
 一瞬、また足元でしがみついている妹を忘れた。
 1人の案内人は遺留品をティーダに一度預け、棺はそのような力では決して壊れることなどないのに、ゆっくり、ゆっくり棺の(ふた)を持ち上げる。
 その両親の息子はその間、顎を引いて目を閉じながら妹の髪を指の腹でなで、案内人が「どうぞ」といってから、やおらに目を開いた。


(……ぁぁ)


 間違いなく、自分たちの両親だと彼は確信する。
 顔は配慮がなされ布が被せていあり、ティーダは遺留品を胸に抱えながらこれもまたゆっくりと布を持ち上げて再確認した。


「現在も尽力していますが……」


 1人の体をもう1人の体が守るように抱きかかえており、守るほうは四肢のうち二肢しかなく、肩から上は何もなかったが、守られているほうは五体満足そろっていた。


「いえ、結構
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