暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第1章 『ネコの手も』
第13話 『バンソウコウとキィ』
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 1人の子どもの泣き声が上りのエスカレータの方から聞こえた。幼いからか泣き声から男の子か女の子か分からない。
 幸い、2人は上りのエスカレータの近くにいたため、お互い目を見合わせ、そちらのほうへ向かう。


「あの子だ」
「……迷子、だよね」


 姿を見ると男の子なのは一目瞭然で両手で両目を押さえて泣いていた。
 2人は近づこうとするが、


「あの、どうしましたか?」


 男性が先に少年にしゃべりかけるのが目に入る。
 一瞬その少年は彼の声に反応するがまた大きく泣き出した。


「えと、大丈夫かな?」


 ぴたりと2人は足を止めて様子と見ていると、今度は彼はしゃがみこみお菓子を取り出し、少年にあげようとしている。


「でも、あいつ怪しくない?」


 その男性は背後で顔は見えないが、生まれつきなのか寝癖なのか分からない髪形に緑白色(びゃくろくしょく)の作業つなぎを着て、黒いブーツを履き、だらりとした左手にだけ軍手をつけ、皮製のベルトをしている左腰には鳶色(とびいろ)の『傘』を差している大分異様な格好だ。


「確かに」


 すずかは思い切り深く頷く。


「最近物騒って言うし」
「そう、だね」


 ぎゅっと2人は拳を握って、再度目を見合わせた後、そのしゃがんでいる男性に近づこうとする。その間に彼は少年に対し自己紹介をしていたが、脇から聞こえた通行人の会話によって聞こえず、鍵を少年に見せ、


「――キィのことですね」
「きー?」


 と、説明してるのが伺えた。
 どうも彼は『キィ』という特殊な名前で少年の心を開かせることに成功したらしく、相手から南ケンタという名前を聞きだし、お菓子も受け取らせていた。


「あの、君の――」
「アンタ、なにしてんの?」


  アリサは腕を組み、すずかは両手を握って身構え見下ろすと、髪型によらず綺麗な黒髪をもち、その髪の隙間からまるで起きたばかりのような寝ぼけ目の『キィ』と名乗る、額に『バンソウコウ』を付けた男性がこちらを見上げた。





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