第T章:剣の世界の魔法使い
朝露の少女
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アインクラッド第五十層主街区《アルゲード》。その裏路地に存在する一軒の雑貨屋に、シェリーナとドレイクは来ていた。むろん、エギルの経営する店だ。
ドレイクとエギルは、先日キリトとアスナの居場所を聞くためにエギルの元へと言った時、既に自己紹介を交わしていた。いかつい風貌からは想像ができないほど人当たりの良いエギルと、人付き合いをコントロールできるというか、そんな空気を纏うドレイクはすぐに打ち解けることができた。
先日、《エネマリア》からアインクラッドに出てきて以降、ドレイクはすっかり外の世界にはまってしまった。以来、シェリーナとドレイクは暇なときにはアインクラッドで過ごしている。
「しっかし……寂しいもんだな」
「何がですか?」
しみじみと呟いたエギルに、シェリーナは問うた。エギルはにやりと愛嬌のある笑いを浮かべると、
「いや、キリトとアスナが二階にいないことがよ」
「ああ……まぁ、たしかに、寂しくはありますよね……」
かつて、キリトがこの店の二階に寝泊まりしていた時の事を思い出す。あの時は、アスナとシェリーナが店の手伝いをしたおかげでキリトは追い出されずに済んだのだった。哀れにもエギルは一階で寒々しく寝起きをしていたが、何気にエギルの方でも楽しかったのだろうか。
「私も時々、キリトさんがいないとこに違和感を覚えますよ」
シェリーナも呟く。
キリト達が結婚したことは、最小限のプレイヤーにしか知られていない。彼らは二人とも超がつくほどの有名人であり、彼らが――――特にアスナが結婚したなどということが公になれば、どんな反応が返ってくるか分かったものではない。下手をすれば今度はエギルの店に逃げ込むほどでは対処できない可能性がある。
だから二人は、持っているレアアイテムの多くを売りさばき、アインクラッド全階層中もっとも平和とされる第二十二層に家を買い、そこに移り住んだのだった。もともとそこに住む計画は立てていたらしいが、この計画を実行に移す際に役に立ったのが、ドレイクだった。
ヒースクリフに匹敵する、膨大な知識で、『どのアイテムがどこでどのようにすれば最も効率的に売れるか』『どの階層のどの場所に有る家が最も二人に適しているか』などの様々な案や候補を上げて、キリトとアスナを驚かせた。キリトが「何でそんなこと知ってるんだ……?」と呟くほどに圧倒的な知識量だった。
それもそのはず。ドレイクは言ってみれば第二のGMのような存在なのだ。彼がヒースクリフと同等、あるいはそれ以上の知識を持っているのは当然のことと言えた。
「……会いに行ってみますか?」
ドレイクがシェリーナの隣で言った。
「お二人もそろそろ落ち着いてきた頃のはずです」
「そうですね
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