話数その6 掴めない
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あの夜の事件……はっきり言えば、晋は運が良かった。
大爆発で吹き飛んだ服の代わりに、『神器』から取り出した服がフード付きだった事、半分になった顔の所為で人相がよく分からなかった事、声帯まで削られていた為声質が不明瞭だった事、その全てが重なったおかげで―――――
「……んが〜……」
あの赤髪の女達に問い詰められることも無く、屋上で寝ていられるのだから。
「……んご〜……」
というか、こうやって屋上で寝ているのを見る限りでは、彼は少し不気味な高校生にしか見えない。殺されかかっているのに関係ない質問をしたり、削られながら武器振り回したり、ましてや自爆を行うようには思えない。……まぁ、普段の言動がなければ、だが。
「……すか〜……ご〜……」
だが彼は知らない。
あの校則違反以来、支取に監視されている事を。そして赤髪の女達が動こうとしている事を。―――――すぐそこにまで“ダルい事”が迫っているのを。
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「本当に……何だったのかしら? あの男は…」
旧校舎にある“オカルト研究部”の部室で、赤髪の女、リアス・グレモリーは考え込んでいた。
オカルト研究部とは名ばかり……実際は“悪魔”の集まりであり、彼女もまた“悪魔”だった。昨晩彼女は自分の下僕を引き連れ、“はぐれ悪魔”を退治しに廃工場へと向かった。……そこで、とんでもない者に出会ったのだ。
その考え込ませる対象とは、突如として現れ、はぐれ悪魔を退治して去って言った男の事である。それだけならばあの男は“祓魔師”なんだと考えれば済む。
しかし、今回出会った“男”については、そうはいかない。
「上半身が半分削れても平然としているうえ……魔力を微塵も感じない人間だったのに、はぐれ悪魔をあそこまで怯えさせる……ほんと、何者なの……?」
たとえ悪魔であろうと、体が半分も削れてしまえば死ぬ。極端な事を言ってしまえば、“魔法が使える体が丈夫な人間”のような物なので、腕が?がれただけでも致命傷となりうるのだ。
しかし、昨日の男は“人間”である。本来ならば半分になった時点で、立ち上がるどころか話すことさえできない筈……しかし、まるで男はそれを―――“死”を無視しているかのように見えた。
「……何物かは分からないけれど……警戒するに越したことはないわね」
グレモリーは表情を険しくすると、早速オカルト研究部員を周する為に、魔法陣のような物を作り出した。
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死んだ筈なのに生きている―――そんな黒髪の少年・兵藤一誠を、晋は此処の所ずっと見ている。勿論彼にはそちら側
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