第一章 平凡な日常
15、クラスメイトの自殺を阻止せよ!
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並中の屋上で眠る、1つの影――――要である。
要は、自分の記憶を頼りに、ここである人物を待ち伏せていた。
そして、“彼”はあまり待つことなく、そこに現れた。
「……霜月」
「よう、山本」
思い扉の音と共に来たのは、山本だった。
右腕をギプスで固定し、三角巾で吊るすという、とても痛々しい姿でのご登場だ。
これを見ただけで、彼の身に何があったのかがわかった。
「骨折、か?」
「っ……ああ。昨日練習しすぎちまってな。だから」
「だから、自殺しに来たのか?」
その言葉に、山本は驚いた。
彼女の言う通り、ここには自殺するために来たのだ。
「野球の神さんに見捨てられたってか? くっだらねぇな」
要は起き上がると、フェンスに歩み寄った。
そして、背を預けるように寄りかかると、山本のことを見据えた。
「オレは偽善者じゃねえからよ、死ぬな、何て言わねぇぜ。けどよ、いくつか言わせてもらう」
「なんだよ」
「骨折? そんな軽い怪我で神さんに見捨てられただぁ? ばっかじゃねえの?」
ハッと鼻で笑う。
当然のことながら、そんな態度の要に山本は怒りを覚えた。
「お前に何がわかるんだよ」
「わかんねー。てめぇがオレのことを知らねぇようにアンタの気持ちなんてこれっぽっちも知ったこっちゃねぇよ。オレが言いたいのはこうだ。
神さんに見捨てられた時ってのはな、死んだ時……否、地獄に堕ちた時を言うんだよ。それに対して山本、お前は生きてる。生きている限り骨折は治ってまた練習して、野球をやり直せる。その可能性を持ってるんだよ。自殺ってのはな、自らを殺し生有る限りの可能性を全て放り出すんだ。いいか? お前は野球の神さんに見捨てられたんじゃねえ。
お前が神さんを捨ててるんだぜ?」
その一言が、山本の胸に深く突き刺さる。
要は、怒っているような、哀れんでいるような目で山本を見つめていた。
「神さんに見捨てられるか、自ら突き放すか。よく考えるこったな。よく考えて自分の道を切り開き、真っ直ぐ進め。自分にだけは嘘をつくな」
それだけ言ってしまうと、要は屋上から出ていってしまった。
残された山本は、一人考えていた。
自分はどれくらい野球が好きなのか。
自分は何のために、今まで頑張ってきたのか。
それは、自殺を聞き付けたツナたちが駆けつける頃には、決断が出ていた。
「山本!」
「悪ぃみんな。自殺はしねぇ、心配かけたな」
彼の出した決断、それは、何が起きても野球を続けることだった。
そして、そのために生き続けること。
それは、要の言葉と共に心に深くしまわれた。
「あとで霜月にお礼と謝罪に行かねー
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