第1部:学祭前
第4話『波紋』
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登校の足取りは重かった。
誠は改めて、唯の誘いに乗ってしまったのを後悔した。
二人っきりの登下校、二人っきりの喫茶店。
それに腕を組みながらの移動。
ついつい唯の笑顔が見たくて、拒めなくて、受け入れてしまったが。
それが世界に誤解を招くような行為だったとわかっていながら。
誠にしてみれば、知り合ってから日も浅いし、単なる友達のようにしか認識していないつもりだった。
山県や加藤のように、中学時代からの女友達もそれなりにいたわけで、そういうのと同じだと思っていたんだ。
とはいえ、それをどう説明するか。
頭の中がぐるぐるし、混乱が収まらなかった。
教室に入ると、クラスの話が急ににぎやかになる。
世界は自分の席で眉間にしわを寄せ、手を組んで座っていた。
誠と世界の席は隣り合わせ。
世界の周りに七海、刹那、それに同じく世界の友達の光が立っている。
3人からの冷たい視線から眼をそむけながら、誠は世界の隣に座った。
少し離れたところで、泰介が興味深げに見つめていた。
「誠…………」
低い声で世界が声をかける。
「最近私が忙しいことをいいことに、桜ヶ丘の女の子と付き合ってるって、本当?」
「付き合っているというわけじゃ、ないんだ……。」
「でも、二人っきりでくっついたり、そこでキスしたりしたんでしょ?
七海から聞いているんだから。」
「キスって」誠は顔を真っ赤にして、「し、してるわけないじゃないか!!知り合ってからそんなにたってないんだぞ!! どんだけあらぬ尾ひれがついてんだ!?」
「嘘くさい……光も、七海も、誠の腕にその子が抱きついているのを見たって……絶対スゴイ関係になってるって、みんな言ってる……」
「だから生々しいこと言わないでくれよ!! 違うってば!」
「いっつもいっつも、くっつかれてただろ? あの平沢って奴に。」七海が口を挟んできた。「なのに伊藤、一度も拒まなかったよな?」
確かにそうだ。
人の腕にスキンシップ。
恋人同士のお約束なのに、自分は誤解されるということをわかっていながら、それを拒めなかった。
誠は、黙ってしまった。
「まあまあ、待て待て」泰介が話に入ってきた。「西園寺もこいつの彼女ならわかるだろ? こいつ優しすぎて、なかなか嫌と言えないところがあるからさあ」
「だからと言って、限度というものがあるでしょ、澤永」
世界はそっけない。
「俺もその子と誠が、一緒に下校しているのを見たけど」
「泰介、いつの間に見たのか!?」
誠の顔が、さらに赤くなった。
「いっつも向こうのほうからくっついていたぜ。 誠は逆に迷惑そうだった」
迷惑、というほどではないが、恥ずかしかったのはたしか。
ただ……。
同時に
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