暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
銀の戦騎vs青き槍兵 ─解放されし宝具─
[1/9]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 粛とした静寂が夜を支配する。
 月明かりのみが照らし出す世界は、昼とは違った顔を見せる。

 喧騒はなく、人々の営みの音も聞こえない。
 温かみを失った冷たい夜は、独特の空気を醸し出す。

 今この時間帯のみ、街は死んでいると言っていい。



 生命の息吹が消えた街。

 その街外れで独り────銀の少女が佇んでいた。



「さて、このあたりでいいかしら。出ていらっしゃい、追跡者(ストーカー)さん」

 闇に向かってフェンサーが問う。

 人影は彼女のもの一つ。
 されど存在する気配は二つ。

 夜闇の中に浮かび上がる青影。
 霊体から実体化し、一人の男が姿を現した。

「人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇよ。せめて偵察とか斥候って言ってくれや、お嬢ちゃん」

 肩を竦めて嘆息する。
 気づかれていたことに驚くこともなく、男は悠然と構えている。

 敵意は放っているものの、今すぐ殺し合おうという戦意は感じない。

「さっきから私の後ろを追いかけてきて、一体どういうつもり?」
「なに、マスターの命令でね。第八(イレギュラー)がどの程度のもんか見てこいってよ。
 マスターは居ないみてぇだが、アンタがフェンサー……ってことで、間違いないか?」

 今夜、この場にいるのはフェンサーのみ。

 黎慈は今頃、家で待機している。
 もしかしたら普通に眠っているかもしれない。

 それは休養が必要だからとか、怠慢だからというわけではない。
 己の相棒が事を仕損じる筈がないという、主としての信頼によるもの。

 その信頼に応えるべく、彼女は一人で街を巡察していたのだ。
 そんな折り、サーヴァントの気配を感じたフェンサーは、わざと人気のない街外れへとやってきた。

「もしそうだとしたらどうすると仰るのかしら、ランサー?」
「なに、ちょいと手合わせ願おうと思ってね。少しばかり付き合ってもらおうか」
「私、夜のデートとダンスは、素敵な殿方とだけって決めているのだけれど」
「連れねぇこと言うなよ。退屈はさせないぜ?」

 和やかなやり取り。
 言葉だけを見れば若い男女の逢瀬の一時とも取れる。



 彼らが互いに不可視の剣と朱き槍を、その手に携えてさえいなければ。



 ぶつかり合う敵意は戦意を孕み、次第に殺意として練磨される。
 双方、間合いを計りながらジリジリと距離を詰めていく。

「──────」
「──────」

 半歩、さらに半歩。
 確実に武器が届く範囲内まで詰め寄ろうとして────

 青き槍兵の瞬速の踏み込みが、フェンサーの間合いの計りを無意味にした。

「シッ────!」

 繰り出される刺突。

 
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ