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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
大会〜準決勝 後編〜
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みから解放してやるよ」
 勝たなければいけない戦いがある。

 ましてや――これは戦術シミュレーターであるのだから。

 + + + 

 小さなどよめきが、大講義室内に走った。
 筺体内にいる人間とは違い、この会場にはクラウディス星域全域の全てが見れるようになっている。
 即ち、アレスとテイスティアの艦隊が離脱したその瞬間も見ている。
 一瞬にして飲み込むワイドボーンの攻勢。
 それをいなして、奇襲地点まで誘い込むアッテンボローの妙技。

 それらは決勝大会にしても、あまりにも高レベルの戦いだった。
 誰もが固唾を飲む中で、スーンも小さく拳を握る。
 大切な友人には是が非でも買ってもらいたい。
 自分の財布的にもだが。
「大丈夫だ。アレスが負けることは想像できない」

 相変わらずの仏頂面で、隣の友人が声をかける。
 興味のなさそうな顔であったが、アレスと自分とは違うグループであったため、彼に似合わない事に、少し落ち込んでいたらしい。
 今回は全員が見学できるということで、嬉しそうに見に来ている。
 そのフェーガンは大講義室のプロジェクターに移される様子を、腕を組んで見ていた。
 落ち着いた口調であるが、腕を握る手にはよほど力が入っているらしい。

 太い腕に、指がめり込んでいた。
 その姿にスーンは小さく笑って、再び画面に目をやった。
 最初の一撃を入れた後で、アレス艦隊は少しずつ右へとそれた。
 同時にテイスティアがそれに続いて、ワイドボーン艦隊の左翼にいたコーネリアがワイドボーンと位置を入れ替わる。

 艦隊の位置を入れ換えるというのは相当に難しい。
 だが、それを苦もなく行うコーネリアの技量は相当のものだろう。
 同時に気づかせないように、ワイドボーン艦隊とローバイク艦隊が攻勢をかける。
 五百隻とはいえど、それが五つともなればアッテンボロー艦隊の艦艇数を超える。
 それを凌いだアッテンボローは褒めることはあれど、ワイドボーンとコーネリアの位置が入れ替わったことに気づかなくても不思議ではない。

 ましてや、アレス艦隊がその隙に離脱していることなど、気づくわけがない。
 こうして全体を見ていても、スーンでは気づかなかったほどだ。
 誰かが、マクワイルドが離脱するといわなければ、誰も気づかなかっただろう。
 と、スーンはその言葉を口にした上級生を目にした。

 黒髪の童顔の先輩だ。
 興味なさげにモニターを見る様子は、どこかの学者にも見えた。
 多少は整っているが、ワイドボーンのように印象的でもない。
 しかし――そのワイドボーンを破り、すでに決勝に駒を進めた有名な人物。

 ヤン・ウェンリー。
 この大会の勝者とあたる人物は、おさまりの悪い髪に手をやる。

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