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少女1人>リリカルマジカル
第三十二話 少年期N
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「いやぁ、絶好の登校日和ですなー。あ、アリシア。そこのジャムとって」
「はい、お兄ちゃん。うん、今日は天気がよくてよかったねー」

 俺とアリシアは優雅に朝食を食べながら会話をする。今俺たちが着ている服は私服ではなく、白を基調としたデザインと水色がアクセントの制服である。藤紫色のズボンとスカートは落ち着いた色合いで、爽やかな感じだから俺は結構気に入っていたりする。

 アリシアにお礼を言って、母さん手作りのリンゴジャムをパンに塗っていく。次にアリシアも俺からジャムを受け取り、パンに塗ろうとして、その手が止まった。

 どうかしたのか、とパンを食べながら思っていると、妹は真剣な表情でジャムのスプーンを構える。すると突然ジャムアートを始めだした。ジャムの量をスプーンで調節しながら、ものすごく集中している。

「アリシアって器用だよな。何描くんだ?」
「今ならお兄ちゃん直伝の『かっこいいポーズ』が描ける気がするの」
「……そうか。確かに朝日には脳を活性化させる力があるって言われているしな。何かが降りてきてもおかしくないか」
「そこで納得するあたりがあなたらしいわ」

 着替え終わった母さんがリビングに顔を出し、俺とアリシアの様子に肩をすくめる。この家では、唐突に何か行動を起こすことぐらい、もはやおなじみの光景なのだ。今俺がいきなり踊り出しても、家族の誰一人としてそこまで気にしないだろう。積み重ねてきた歴史がこの家にはある。うん、なんか深い。

 リビングに飾ってある鏡を見ながら、髪と服装を整える母さん。淡い藤色のスーツを着込み、その上に白衣を羽織っている。その姿はまさに研究者って感じだった。

「開発チーム復活、かな」
「ふふ、そうね。今日は話し合いだけだから早く帰って来れると思うわ。2人は学校から帰ってきたらどうするの?」
「あ、今日はねメェーちゃんたちと遊ぶの!」

 声を弾ませながら話す妹に、俺もつられて笑みを浮かべる。少し前に入学式が終わり、本日3日目の学校登校日である。さすがに俺も最初は緊張してしまっていたが、それなりに要領がわかってくるものだ。環境が変わっても根本はなかなか変わらないものだろう。

「あら、いいわね。お友達がいっぱいできたみたいで安心したわ」
「いっぱいというか、……まぁ、もともと知り合いだったしな」

 近所で遊んでいるんだから、そりゃ住んでいる地域だって同じところだよな。学校では初対面の相手は確かに多かったが、公園で遊びまくっていた俺にとっては、見知った顔も多かったわけだ。

『……あの、お二人とも。ものすごくゆっくりしていますけど、始業時刻までそんなにないですよ』
「あ、本当だ」

 コーラルの声に時計を見ると、始業ベルが鳴る15分前。ここから学校まで約20分
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