第四十二話 決戦(その一)
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帝国暦 490年 4月 29日 ガンダルヴァ星系 ブリュンヒルト コンラート・フォン・モーデル
眼の前のスクリーンに反乱軍が映っていた。戦術コンピュータがモニターに擬似戦場モデルを映し出している。幼年学校でも戦術コンピュータが映し出す擬似戦場モデルは見たことが有るけど戦場で見ると全然迫力が違う。少しずつ、少しずつ両軍が近づいていく。
指揮官席の後ろに用意された席で見ているけど艦橋の空気は痛いくらいピリピリしている。この席はローエングラム公の許可を貰って臨時に用意したそうだ。マーナガルムと同じだ。
黒姫の頭領からは危険だからマーナガルムに残るようにと言われたけど隠れて付いて来てしまった。頭領は僕がこっちに来たのを知ると困ったような表情をした。“なんでこっちに付いて来たのか……、向こうに居れば安全なのに”、そう言って溜息を吐いてた。
でも僕はどうしても黒姫の頭領と一緒に戦いたかったんだ。頭領の戦っているところで頭領の役に立ちたかった。僕に出来る事なんて大したことじゃ無い、飲み物を用意するくらいだけどそれでも一緒に居て頭領の役に立ちたかったんだ……。
ゾンバルト准将、エンメルマン大佐、クリンスマン少佐、ヘルフリッヒ中佐、ライゼンシュタイン少佐、クレッフェル少佐、シェーンフェルト大尉、リンザー大尉、皆顔面が強張っているよ。さっき冷たい水を皆に用意したけど半数はもう飲み干しちゃってる。普段と様子が変わらないのは黒姫の頭領とメルカッツ参謀長だけだ。
頭領が席を回して僕達を見た。穏やかな笑みを浮かべている。凄いや、こんな時に笑えるなんて。僕だけじゃない、皆驚いている。
「どうしました」
「あ、いえ、頭領が余りにも落ち着いていらっしゃるので……」
ゾンバルト准将がちょっとつっかえつっかえ言うと黒姫の頭領がクスクス笑った。
「それが指揮官の仕事ですからね。どんなに緊張しても、どんなに驚いてもそれを表には出さない。そうじゃないと周囲が不安になります。そうでは有りませんか?」
「……」
うーん、それは分かるけどそんなに簡単な事じゃないよ。皆も困ったような表情をしている。
「指揮官というのはちょっと鈍感な方が良いようです。私には向かないな、演技するのも容易じゃない」
「そんな事は有りません、なかなかの指揮官振りです。参謀長としては心強い限りですな」
頭領とメルカッツ参謀長が話している。へー、演技なんだ。じゃあ本当は頭領も緊張してたの? 皆も興味深そうに頭領を見ている。頭領がこちらに視線を向けるとクスッと笑った。
「少しは落ち着きましたか?」
皆に話しかけてきた。皆顔を見合わせている。
「これから最短でも十日間は我々だけで戦うことになります。今からそんなに緊張していては身体が持ちません
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