第一話「日常 ~day~」
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問題ないです」
四糸乃の視線の先には、肩からギターをかけた『夜神十香』と、同じくベースギターをかけた『鳶一折紙』、ドラムに腰掛ける『園神凜弥』、そしてキーボードをいじる『マドカ・ウェストコット』の四人の姿があった。
それを確認し、今度は演奏している一夏達、特に狂三の背後を注視する。
「イチカ、やるではないか」
「しかし、勝つのは私達」
「その通り!負けないよ」
「ああ!兄様、今日もカッコイイです!濡れる!!」
意気込んでいる四人を無視して、いや、若干一名だけ後でシメようと決意して、四糸乃は再び無線機に向き合う。
「問題はないのですけど、……狂三さんの背後に軽音部の顧問の姿が見えるんですが」
「幻覚よ」
「え、でも」
「幻覚よ。四糸乃、貴女は何も見えていないわ。さわ子先生なんて見えない。そうよね、そうだって言いなさい」
「……エエ、ワタシハナニモミテマセン」
これ以上の追及はマズイと判断した四糸乃は、大人しく琴里の言葉に従う。
『そう言えば、何で亡国の連中が来てるのよ。まさか、今度こそお兄ちゃんを連れ去るために!?』
「……えと、違います。今日はオフだからそんなことしないそうです。むしろ、一夏さんに攫われたい、とは言ってましたが」
『ざっけんなぁぁあああ!!神無月ィイ!それに、令音も!そこをどけえ!!私はぁ!私はァア!!』
ブツッ
何やら無線の向こう側がうるさくなってきたので、四糸乃は一切の躊躇もなく無線を切った。
『ありがとうございます!謎の覆面バンド、〈サマーナイトテンペスト〉の皆さんに盛大な拍手を!!』
いつの間にか、演奏が終わっていたらしく、ステージから一夏達が降りてくるのと入れ違いに、十香達がステージに上がる。
すれ違う際に、少女達の間で火花が散り、一夏が顔をしかめて腹を押さえた。
その理由を思い当った四糸乃は、ご愁傷様です、と心の中で合掌しておく。助けはしない。火の粉が降りかかるのはゴメンだからだ。
『やあやあ、イッチーお疲れ〜。すごく良かったよ。特に最後のクルミンの歯ギターなんか、あれは鬼気迫るものがあったねえ』
「あらあら、お上手ですわね、よしのんさん」
このこの〜、と四糸乃の右手にはめたウサギのパペットである『よしのん』を、狂三は小突く。
傍から見たら、仲の良い姉妹のようで、その光景に癒されたのか一夏の顔に微笑みが戻る。
『続きましては、これまた謎の仮面バンド、〈ユートピアプリンセス〉の演奏です!』
そんなこんなで、《精霊王》と称される少年と、《精霊》と呼ばれる少女の日常は流れていく。
―――数週間後
世界は再び、驚嘆の渦が巻き起こった。
その発生の原因は、とある企業の発表であった。
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