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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第四話 暗闇に響く咆哮
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皇紀五百六十八年 二月十日
午前二刻半 伏撃予定地点
独立捜索剣虎兵第十一大隊 集成中隊 中隊長 馬堂豊久大尉


「冷えるな…」
伏撃予定地点への布陣は迅速な物であった。
 馬堂豊久大尉の率いる集成中隊も既に本部の前方で配置を終わらせている。
 騎兵砲と鋭兵で第一中隊の突撃を支援を行い、その後は第二中隊の後方へ回り込み、大隊主力の撤退まで退路を確保を行う。
 この戦力不足の作戦ではどの部隊も同じが、この寄せ集め中隊も大隊の生命線を担っている。
――時間との勝負だ、敵が統制を取り戻すまでに制圧しなければ包囲されてしまう。
 馬堂豊久中隊長は既に幾度も行っている現状確認で緊張を紛らわしていた。
 彼は元来、砲兵大尉である。この作戦に置いては砲の運用を一任されているのも異例とはいえでたらめな人事ではない。
 だがすべての方が彼の指揮下に入っているわけではない。大隊が保有している騎兵砲は四門。その全てが彼の指揮下に入っているが、例外的に運良く手に入れたは良いが扱いに困った擲射砲は、退路に近い第二中隊の後方に配置されている。
 だがこれも退路を確保し次第、第二中隊から指揮権を引き継ぐ事になっているが一門だけでは満足に着弾観測もできない夜襲に不向きなので致し方ないだろう。
  そして、後方から戦況を探るために連れてきた導術分隊は艝で休ませている。夜間だけあって凄まじく冷え込み、これで休ませても体温が下がるだけで効果があるのか怪しいものだった。
「この調子だと待っている間に兵が倒れそうだ、導術兵が倒れたら取り返しがつかないぞ」
 忙しなく兵達の様子を見て回っていた馬堂中隊長がうなる。
「中隊長殿。風が吹かないだけマシですよ。砲弾も流されませんからね。」
 騎兵砲第二小隊長の冬野曹長が答える。
 五十路間近であるが経験豊かな下士官であり、天狼からの敗走時に行方不明になった将校の代わりに小隊の面倒を見ている。
「――まあな、だがこのままだとこちらまで弱りかねないぞ」

「なんとまぁ、敵に早く来てほしいと?」 
 にんまりと笑った歴戦の曹長を観て若い大尉も苦笑する
 ――参ったな、これじゃあ俺まで新兵扱いか。
 小規模な反乱程度であるが実戦を経験している事を内心自慢に思っていた豊久であったがこの有様ではなんの意味もなかった。
「むしろ帰ってほしいな。腹下したりして。」
 馬鹿を言って二人で失笑を交わす。
 ようやく豊久は集成中隊長の面を着け直す事ができた。
「フン、臆してはいないようだな。」
 伊藤少佐が歩いてきた、中隊の面々に答礼する仕草は活力に満ちており、どこか上機嫌そうである。
 ――騎兵将校なのだな、この人は。
 馬堂中隊長はこの上司に自分に欠けていると自覚しているものを初めて見出した。
「分
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