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呉志英雄伝
第二話〜王とは〜
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、味方には損害を被る原因にしかなり得ない。
だからといって出会った時のようになられるのもよろしくない。あのような状態ではいずれ味方に見放されてしまう。


(焔の報告を、そして成長した江を信じよう)


しかし出陣を伝えてしまった以上、もう後戻りは出来ない。それならばこのような思考も無意味である。
桃蓮に出来ることは、次代の大黒柱になるであろう江を信じ、手助けをすることだけだった。







――――――――――――――――――――――






江賊を討伐する当日、長江上の湿った空気が冬の朝の空気に冷やされて霧が立ち込めていた。
現在、江たちは長沙を真北に進んだ洞庭湖と長江の合流地点にいた。
さて、出陣の折に孫権とあいさつを交わしたのだがその時の対応は冷ややかなものだった。
孫権といい、その傍に控えている副官といい、いささか江を軽視していた。


「何故戦の経験のない文官風情が孫権様の補佐なのだ」


とはその副官の言である。
どうやらこの部隊の上層部は江の実力を知らない者がほとんどを占めているようだ。
しかし基本的に事を荒立てることを好まない江は一切の反論をせず、わずかな直属の部下に大剣を持たせて孫権の横にたたずんでいた。

そして現在に至るわけだが、江の意識はすでに敵へと注がれていた。
報告によれば、敵の数は800。率いる者の名前は甘寧。この辺りでは名の通っている猛者だ。
故にこちらも南から孫権率いる囮の部隊で敵の意識を集中させ、その間に長江下流に潜んでいる桃蓮率いる本隊が横撃を仕掛けるという手はずになっていた。
両方とも配置につき、あとは霧が晴れ、孫権部隊の始動を待つのみとなっている。しかしここで事態は思わぬ方向へと流れていく。












「この霧にまぎれて、敵に奇襲を仕掛けましょう!恐らく敵はこちらの存在に気付いておりません」


孫権のそばに控えていた副官は孫権にそんなことを進言した。
こんな馬鹿げた提案が通るわけがない。江はそう思い込んでいた。



「・・・確かに一理あるな。全軍に通達せよ」


しかし、そんな思い込みを孫権の一言が粉々に打ち砕く。
そのことに呆気にとられた江はすぐさま意識を引き戻し、孫権に進言する。








「奇襲には反対です。そもそも敵は長江を本拠地とする者たち。霧が出ることも承知していたでしょう。それに甘寧は名の通った賊。
兵法をわずかでも知るものであるならば霧にまぎれて奇襲に来ることなど容易に予測できましょう」



「戦を知らない文官殿がよくもまぁそこまで言い切れますな。戦とは机上の論理が通用しない。ましてや敵は賊。こちらの動きなど

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