暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
最終話『君とともに』
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と思った途端、全てが泡に消え去って。
 あくまでもおおざっぱな事情しかしらないハントでもナミが何に慌てているかがわかる。
 この暴挙をココヤシ村の皆が許すはずがない。ナミを逃がすため、アーロンを潰すために自分たちの死を厭うことなく彼らは絶対に立ち上がる。

「私、行かないと! みんなを説得に行かないと!」

 慌てて駆け出そうとするナミの体をさらに強く抱きしめて、ハントがそっと首を横に振る。

「もう、いいんだ」
「……え」
「今まで辛かったろ? もう苦しまなくていい。一人で抱え込まなくていい。あとは俺がそれを引き継ぐから」
「っ」

 ナミの目が見開かれた。何かに耐えるかのようにハントをまたぎゅっと強く抱きしめる。

「でも、でもそうしないと村の皆が――」
「――俺が守るよ」

 そっとナミの体を離して、両肩に手を置く。

「俺が全部終わらせる。だからナミ……もう泣くな、笑ってくれ」
「で、でも相手は化け物のアーロンで――」
「――あんなバカ魚、俺の敵じゃない!」
「ぅ」

 言い切ったハントに、ナミがまた目に涙を浮かべる。

「俺はもう死なないし、ナミも泣かない。村の皆も無事に解放される。少しだけ、待っててくれよ?」

 ――8年も頑張ったんだ、あと少しだけなら簡単だろ?

 付け加えられたハントの言葉が、なぜかナミの心に染み渡り、すとんと胸に落ちた。
 もう助けは期待しないと決めたはずなのに。
 それがきっとハントの言葉だから。他の誰でもないハントの言葉だから、ナミはそっと頷いた。

「……ん、腰ぬけただろ」
「……うん」

 ど直球な言葉。本来のナミなら鋭いつっこみが暴力に添えられて返ってきそうなものだが、今回ばかりは素直に小さく頷いた。

 ――まだ現実感、ないんだろうな。

 その大半が自分のせいだということを自覚しつつ、腰を大地に下ろして動けないでいるナミの頭に手を軽く置いてから歩き出した。

「いなくならないんだよね?」

 どこか震えたその言葉に、既に背中を向けてアーロンパークの中に入ろうとしていたハントはそっと手をあげて、返事をする。
 声で返事しなかったのはただただ単純なこと。
 アーロンが目に入って、その瞬間に怒りが沸騰しそうになっていたから。

「おいおい、お前この辺じゃ見ねえ顔だが……ロロノアの仲間か?」

 一人の魚人がハントへと歩み寄る。
 その無造作な歩みに、ハントは一切の笑みもなく、ましてや言葉すらもなく、その魚人の腹へと己が拳をつき立てていた。
 崩れ落ちる魚人を踏み越えて、ハントは立ち止まる。周囲を値踏みするかのように見回すハントに、アーロンが実に不快げに顔を歪ませる。

「てめぇ、さっき俺のことをバカ魚って
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