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ボリス=ゴドゥノフ
第二幕その四
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すよ。気をつけなさい」
「はい」
 見ればその役人達は宿屋の方にやって来て馬を止めた。
「待て」
 酔って騒いでいるワルラアームとミサイールを呼び止めた。
「御前等は何者だ?物乞いか?」
 馬の上から彼等を見下ろして問う。
「申してみよ」
「旅の僧でございます」
 彼等はそれに対してわざと憐れっぽく、そして慎み深く答えた。
「村々を回って寄付を集めております」
「そうか。ではそちらの者は」
「ここで知り合った若い僧侶です」
 ワルアラームが答えた。
「若い僧侶か。見たところその方等と大して変わらんな」
「同業者ですから。苦労も同じなのです」
「服はボロボロ、けれど心は清らかです」
「ふん」
 役人はミサイールのわざとらしい言葉は半分以上聞いてはいなかった。まずは馬を下りた。
「修道僧には用はない」
 彼は呟いた。
「どうせ何も持ってはおらん。まあ一応聞いてみるか」
 袖の下を欲していたのだ。見るからに何も持っていなさそうであるがそれでも、と期待したのである。
「ところで坊さん方」
「はい」
 二人が応えた。
「どうかね。寄付は集まりますかな」
「いやいや、苦しいものです」
 ワルアラームがそれに答えた。

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