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皇帝ティートの慈悲
第一幕その七
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第一幕その七

「私が后ですか!?皇帝陛下の」
「その通りです。貴女様こそ」
 今にも死にそうな顔でセルヴィリアに語っていた。
「あの方に。そしてローマに相応しい方だということなのです」
「一体何が何なのか」
「お別れです」
 ここまで話すといたたまれなくなったのか姿を消そうとするアンニオだった。
「もうこれで。お別れです」
「そんな、そんなことが」
「お別れです」
「駄目です」
 やっと事情を飲み込めた。だからといってそれを受け入れることができず必死に彼を止めるのだった。セルヴィリアにとっても受け入れられないことだったから。
「私は。そんなことは」
「僕が最初に愛して」
 セルヴィリアの方を振り向きその沈痛な顔で語るのだった。
「最後に愛した人」
「それは私も同じです」
 セルヴィリアは今にも泣きそうな顔でアンニオに語る。
「貴方が最初で最後でした」
「僕はその言葉だけでも」
「貴方だけが」
 向かい合って言葉を交あわせていた。辛い、苦しい顔で。
「愛しているのに」
「どうしてこの様な運命が」
「想いは消せないのに」
 アンニオの言葉だ。
「それなのにどうして」
「貴方の心と私の心が重なり合わない」
 セルヴィリアも言う。
「この様な苦しみが私達を襲うなんて」
「惨い運命よ」
「呪わしい世よ」
 二人は同時に声をあげた。嘆きの声を。
「どうしてこの様なことが」
「私達を襲うのでしょうか」
 二人の嘆きが神殿の前で交あわされる。だがそれも終わらざるを得ずアンニオは去りセルヴィリアは皇帝の宮殿のティートの部屋にいた。ローマの皇帝のものにしては質素でこれといった装飾もなくただ執務の為の机や椅子があるだけの場所でセルヴィリアはティートと会っていたのであった。
 まず口を開いたのはセルヴィリアであった。
「陛下」
「何か」
「私はあることをお話する為にここに参りました」
 思い詰めた顔でティートに述べるのだった。
「今まさにここに」
「一体何の話を」
「私を陛下のお后にと考えておられるのですね」
「そうだ」
 セルヴィリアの問いに対してすぐに答えた。
「君を私の后に迎えたいのだ。それは駄目か」
「ではお話しましょう」
 意を決した顔になった。そこには死への覚悟すらあった。ローマ皇帝に対して今から自分が言うことを考えればそれは当然のことであったからだ。
「私にはその資格はありません」
「それはどういうことなのだ」
「私は陛下を愛しています」
 まずはこう述べた。慎重に言葉を選んでいた。
「それは事実です」
「ではどうして」
「その愛は皇帝陛下に捧げる愛です」
 これが彼女の答えであった。
「私は既に。ある方を愛しています」
「ある方を!?」

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