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道化師
第二幕その二
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から瓶を取り出してきた。当然実際は只の空瓶である。
「お酒があると尚いい」
「逢引にはお酒っていうこと?」
「ああ、その通りだ」
 アルレッキーノはその言葉に頷いた。
「他に使い道もあるしな」
「使い道って?」
「これさ」
 ここで懐から小さな瓶を取り出してきた。
「それは何?」
「眠り薬さ」
 アルレッキーノはニヤリと笑って答えた。
「これをパリアッチョに飲ませるんだ。酒に入れてな」
「酒に入れて」
「そう、そして二人で逃げよう」
 そのうえで提案してきた。
「二人で」
「そう、二人でさ」
 アルレッキーノはあくまで喜劇として演じていた。村人達はそれを見て笑っている。だがそうは受け取れない者もいた。他ならぬカニオがそうであった。
「何てことだ」
 カニオはその劇を舞台の出入り口から覗き見て陰惨な顔になっていた。
「同じだ、実際と」
 ネッダの逢引の後の言葉を思い出す。
「一緒だ、何もかも」
 彼が暗澹としているうちにも舞台は進む。タデオが騒ぎはじめた。
「あっ、旦那様」
「えっ」
「もう帰って来たの!?」
 タデオの言葉を聞いてアルレッキーノもコロンビーナも驚いて椅子から立ち上がった。
「これはまずい」
「とりあえずあんたは隠れて」
「あ、ああ」
 アルレッキーノはそれを受けて左の扉から出る。カニオはそれをみてまた呟いた。
「ここでも同じだ」
「早く、早く」
 コロンビーナがアルレッキーノを急かしていた。そろそろ出なければならない。
「行くか」
 カニオはそう呟いてパリアッチョになった。そのうえで舞台に出て来た。
「おい」
 パリアッチョになって部屋の中に入る。
「今ここに誰かいなかったか?」
「誰も」
「そう、今はな」
 カニオ、いやパリアッチョはコロンビーナの言葉に意地悪く返した。

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