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ホフマン物語
第二幕その二
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姿を黙って見送っていた。そして上にいるオランピアを見上げていると隣からすうっと出て来る者がいた。
 怪しげな男であった。長身で鞭の様な身体を白い科学者の服で包んでいる。だがその下にある服はどれも黒であった。
 ネクタイもカッターも靴も全て黒であった。黒々とした髪を後ろに撫でつけ、吊り上がった黒い目を持っていた。とかく黒い男であった。その彼が突如としてホフマンの横に現われたのである。
 そしてホフマンに気付かれないように彼に近付いてきた。それから声をかけてきた。
「もし」
 地の底から聞える様な低い声であった。
「ホフマンさんですか」
「おや、貴方は」
 ホフマンは彼に声をかけられて顔を向けてきた。そしてその名を呼んだ。
「コッペリウスさんじゃないですか。どうしたんですか?」
「いえ、ちょっとね」
 彼はその手に持っている黒い鞄を弄びながら笑っていた。
「スパランツェーニに用事がありまして」
「先生に」
「ええ」
 コッペリウスはそれに答えて頷いた。丁度そこにニクラウスも帰って来た。
「赤を二本買ってきたよ」
「ああ、有り難う」
「あれっ、コッペリウスさんもいらしてたのですか」
「はい」
 彼はにこやかな笑みを作ってニクラウスにも挨拶をした。
「スパランツェーニに用事がありましてな」
 そしてまた言った。
「一体何の用事ですか?」
「いや、大したことはありません」
 笑みを作りながら言う。
「売りたいものがありまして」
「売りたいもの」
「気圧計や温度計、湿度計ですよ。いいものを作りまして」
「けれど先生はもうそういったものは全て持っておられますよ」
 ホフマンが答える。

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