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セビーリアの理髪師
27部分:第二幕その十一
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第二幕その十一

「さて、それじゃあ」
「ええ」
 二人は話を続ける。
「この幸福を二人で噛み締めて」
「そうして永遠に」
「さて、これでよしだね」
 フィガロは笑顔で言い合う二人を見て自分も笑う。にこやかな笑みであった。
「おいらのキューピットもいつもの冴えがあるっと」
「それでロジーナよ」
「ええ」
 二人はフィガロさえ目に入らず話を続ける。恍惚とした中で。
「これからは貴女をこう呼びたい」
「何て?」
「妻と」
 ストレートなプロポーズだった。
「貴女のことを妻と。それでいいかい?」
「ええいいわ」
 ロジーナもその言葉をこの上ない晴れやかな笑顔で受け止めた。
「是非共」
「それじゃあ御二人共」
 フィガロは恍惚となっている二人にまた声をかけた。
「決まりですね。楽しみは後で永遠にできますから」
「そうね」
「それじゃあ」
 二人は彼の言葉に頷く。そうしてバルコニーから出ようとするが嵐がとてつもない勢いになっていてとてもではないが出て行けない。ここは様子を見ることにした。
「困ったな」
「ええ」
 ロジーナは伯爵の言葉に頷く。流石に何時までもロジーナの部屋にいるわけにはいかない。
 その時だった。下からバルトロとバジリオの話し声が聞こえてきた。彼等の声を聞いて伯爵達はいよいよ切羽詰った顔になった。
「これは大変だ」
「どうしようかしら」
「いや、お待ち下さい」
 だがここでフィガロが言うのだった。
「待つって何が?」
「若しおじ様達がこの部屋に来たら」
「どうももう一人いるようですね」
 フィガロの耳はいい。彼等の話し声を聞き逃さなかったのだ。
「もう一人」
「それは一体」
「公証人です」
 フィガロは言う。
「結婚の」
「じゃあ大変じゃないか」
「そうよ。このままだと私は」
「ですから」
 フィガロはすました顔で二人に述べた。
「私の知っている公証人でございます」
「というと」
「まさか」
「ええ、そのまさかですよ」
 すました顔のまま述べる。
「私達ので。というわけでここは堂々としていればいいのです」
「堂々と」
「左様。では降りましょうか」
 二人はフィガロに言われてロジーナの部屋を後にする。そうして下にいるバルトロ達と会うのだった。見ればやはりバルトロとバジリオの他に公証人もいた。役人のような格好をして何やら二人と話をしていた。バルトロは伯爵とフィガロがいるのを見て血相を変えた。
「何故ここにっ」
「まあまあ」
「まあまあではないっ」
 そうフィガロに言い返す。
「君達、いい加減にしないと本当に警察を」
「公証人さん」
 フィガロは怒り狂う彼をよそに公証人に声をかける。
「私の頼んでいたお話の用意は出来ていますね」
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