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セビーリアの理髪師
19部分:第二幕その三
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 伯爵が化けた音楽教師の言葉をそのまま述べる。
「それで今日はだな」
「ええ」
「ドン=アロンソ先生が来られている」
「ドン=アロンソ!?」
 ロジーナも聞きなれない名に目をしばたかせる。
「どなたなの、それは」
「何だ、知らないのか」
 自分も知らないのは内緒である。
「ドン=バジリオの弟子でな」
「バジリオ先生の」
 ロジーナはそれを聞いて今度は首を傾げさせた。さらに聞かないことだったからだ。
「弟子なのですの?」
「うむ、若いが素晴らしい方だ」
 そう述べる。
「わかったら早く。さあ」
「わかりましたわ。では」
 階段を完全に下りて一階に来た。すると彼がいた。
「まあ」
「どうも」
 伯爵はあえて恭しく一礼する。
「ドン=アロンソです」
「はじめまして」
 ロジーナもスカートの裾を掴んで恭しく一礼する。上品に見えるがそこには上品よりもおどけたものがあった。だがそれはバルトロにはわからない。

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